人気ラーメン店、のれん分け対立 中華そば一力

中日新聞Web2020年05月27日05時00分

人気ラーメン店、のれん分け対立 中華そば一力

 県内屈指の老舗人気ラーメン店「中華そば一力」(敦賀市中央町一)と、のれん分けした「中華そば一力福井店」(福井市高木中央三)が対立している。本店側が「福井店は味が落ちたというクレームが私のところにも届いている。一力の名称はもう使わせない」と怒り心頭なのに対し、福井店側は「契約書通り、仕入れも調理工程も変えず味を守っている」と反発。本店側が今月、フェイスブック上で「破門」宣告を公表する事態に発展している。

 中華そば一力は、一九六〇年代初頭に初代店主が敦賀駅周辺で屋台ラーメンとして開業し、一九七七(昭和五十二)年に店舗を構えた。二〇〇九年からは菅井宏治代表が二代目として店を守っている。豚骨と鶏がらを九〇度の高温で煮出し、一見脂っこそうだがさっぱりとした味わいが特徴。「新横浜ラーメン博物館」(横浜市)に出店するなど県外でも知名度は高い。

 中華そば一力福井店は、菅井代表によると、若狭町の食肉卸業の仲介で、福井市の千新一さんがオーナーに、本店で約十カ月修業した石川拓史さんが店長に就く形で一八年十一月に開店した。ロイヤルティーは受け取っていない。福井店の壁には「中華そば一力を名乗ることを許可する 以降は師弟では無く宿敵とみなす」と、菅井代表が石川店長に屋号使用を認めた「免許皆伝証」が掲げられている。

 「跡継ぎがいないので、一力ののれんを残せるならと思って分けた」と菅井代表。しかし、すぐに関係はこじれた。「開店当初から一力の味ではなかった。本店は調味料の入れ方にこだわり、材料は日々、変えている。だが、本店と同じようにやってほしいと福井店に指導しても、聞き入れてもらえなかった。今思えば一力のブランドで金もうけがしたかったのだろう」と語気を強める。

 一方、福井店の石川店長は「手を抜いたことは一切ない。本店で教わったことを実践して、味が落ちないよう工夫してきた」と訴える。オーナーを息子に譲っている千さんは「信用を落とすとか、著しく味を変えたら看板を下ろすという契約になっているが、違反はない」と断言する。

 味を守ることの意味合いや契約内容だけでなく、さまざまな言い分が食い違っている。菅井代表は「福井店のスタッフが『本店のラーメンなど大したことない』と言っていると聞き、昨年二月に破門した」と言うが、石川店長は発言を否定し「向こうに負けないようにという意思はあるが、軽んじることはない」とし、破門の話は「(フェイスブックで知るまで)聞いたことがなかった」と説明する。本店側は、看板を下ろすよう求める法的措置も示唆しており、事態の収拾は見通せていない。

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