新型コロナショックで自殺者激増。過去最悪の自殺者の可能性も

(写真:アフロ)

失業が増えれば自殺者が増えるのはよく知られています(図1)。

図1 自殺者数と失業率の推移(出典)警察庁「自殺統計」、総務省統計局「労働力調査」により筆者作成
図1 自殺者数と失業率の推移(出典)警察庁「自殺統計」、総務省統計局「労働力調査」により筆者作成

今般の新型コロナショックでは、インバウンドの激減、中国を中心としたグローバルサプライチェーンの途絶、政府による人為的な経済活動の抑制が実施された結果、経済活動が大きく落ち込むことが予想されています。しかも、2018年秋頃からの景気後退、消費税引き上げも相まって相当厳しい状況を覚悟しなければなりません。

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その結果、雇用も大きく減少し、失業が激増する可能性が高いといえます。

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だとすれば、自殺者の急増も懸念されます。

実際、自殺と経済情勢との関係については、これまで多くの研究が蓄積されていて、所得、借金、離婚、失業、健康状態等が自殺を増加させることが指摘され、2019年の自殺者のうち、原因・動機が判明したケースでは、家庭問題、健康問題、経済・生活問題が上位3つの要因となっています。

そこで、本記事では、経済活動の激変が自殺者をどの程度増やすのかについて、かなり大胆な仮定の下、離婚件数(家庭問題の代理変数)、高齢化(健康問題の代理変数)、所得・失業(経済・生活問題の代理変数)を説明変数として推計してみました。

実績値と推計値については、図2をご覧ください。

図2 自殺率の実績値と推計値の比較(筆者推計)
図2 自殺率の実績値と推計値の比較(筆者推計)

この推計結果を用いて、自殺者数を推計したところ、図3の通り、新型コロナショックで2020年の自殺者数は2019年から1万人以上急増し、30351~36962人となる結果が得られました。

図3 自殺者数の推計結果(筆者推計)
図3 自殺者数の推計結果(筆者推計)

これまでは、2003年の34,427人が過去最悪の自殺者数でしたから、最悪の事態となってしまうことになります(図4)。

図4 自殺者数の推移(出典)警察庁「自殺統計」により筆者作成
図4 自殺者数の推移(出典)警察庁「自殺統計」により筆者作成

こうした最悪の事態を避けるには、経済の実質的なロックダウンを要請した政府が責任をもって景気を回復させ失業者の急増を回避するか、失業しても安心して暮らしていける社会を実現するかのどちらかだろうと思います。

しかし、政府や自治体としては、新型コロナが来る度に経済のストップアンドゴーを繰り返すつもりみたいですが、これでは一時的に解除されても、安心して経済活動を元の水準に戻す訳にはいかないでしょう。

となれば、景気の回復は一層遠のくだけで、失業も増加の一途を辿ることになります。

安心して、経済活動を行える環境を整えるため、政府は、新しい生活様式を国民に押し付けるより、何よりワクチンの開発を急ぐべきでしょう。