2次補正予算案 支援は届いているか

2020年5月28日 08時11分
 コロナ禍に対応する二〇二〇年度第二次補正予算案が閣議決定された。三十二兆円近い巨額歳出だが、これまでの支援が届いていないという声が噴出。国は支援のスピードを一層加速すべきだ。
 今回の二次補正と、すでに成立した一次を合わせると歳出額は五十七兆円を超え、国内総生産(GDP)の一割に相当する。安倍晋三首相が「空前絶後の規模だ」と述べたように見かけの金額は確かに大きい。
 内容も中小企業や個人事業主への家賃補助、休業手当をもらえない人への給付制度の新設などが盛り込まれ、評価はできる。財源は国債でまかなうため一層の財政悪化は必至だが、経済の現状を考慮すればやむを得ない措置だろう。
 指摘したいのは支援のメニューではなく速度だ。一次に盛り込まれた一律十万円の現金給付、中小企業や個人事業主向けの持続化給付金、失業を防ぐための雇用調整助成金が依然、届いていないケースが多発している。
 原因はオンライン申請の不備と手続きの複雑さに尽きる。
 オンラインをめぐっては雇用調整助成金の申請受け付け開始直後に不具合が発生。現金給付でも申請に手間取る例が続発している。一部の自治体ではオンライン申請自体を休止するありさまだ。
 オンライン申請に手間取った人たちが窓口に行き、そこに行列ができて「三密」となる事態も起きている。素早い支援のためのオンライン活用が、逆に遅れと危険を招いているのが現状だ。
 現金給付の場合、申請書に「給付を希望しない」という理解しがたい欄もある。持続化給付金や雇用調整助成金の申請も複雑で、費用を出して税理士など専門家に依頼する事業者さえいる。
 暮らしは日々厳しさを増しており、支援が来ないまま倒産や閉店に追い込まれる事態が激増する恐れがある。自治体側の受け付け業務も早晩限界がくるはずだ。
 オンライン申請は制度的な欠陥を露呈しており、現状では緊急事態には不適当と断じていいだろう。今後は手続きをより簡素化した上で郵送を優先させるべきである。
 一方、自民党内には現金給付を急ぐため、マイナンバーと銀行口座とを「ひも付け」して管理する法案を提出する動きがある。この制度には個人情報保護への懸念などから多くの国民が疑問を持っている。法案提出は混乱に拍車をかけるだけだと指摘したい。

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