全人代開幕へ 「成果誇示」なら危険だ

2020年5月21日 02時00分
 中国は「経済や社会が正常な状態に戻った」として、延期していた全国人民代表大会(全人代=国会)を二十二日に開幕させる。しかし、感染「第二波」の兆候があり、開催強行には危険も伴う。
 中国の習近平国家主席は、先月末の党重要会議で「全国の新型ウイルス阻止戦は重大な戦略的成果を得た」と述べた。
 開催を決める全人代常務委員会が条件が整ったと判断したのは、習主席の発言を「勝利宣言」と受け止めたからであろう。
 中国は、他国より早い新型コロナウイルスの感染抑止について、共産党支配の「制度的優位性を示した」と胸を張ってきた。
 かりに一定の抑止ができたとしても、世界はまだコロナ禍に苦しんでいる。米国などから「感染源」との批判も受けている、その中国が、わずか二カ月半の延期で全人代を開催しようとするのは、抑止成功の成果誇示にも映る。
 中国国内でさえ感染は完全終息しておらず、足元が揺らいでいることに敏感であるべきだろう。
 国家衛生健康委員会の報道官は今月中旬に会見し「過去二週間、七地区で(入国者以外の)新規感染が報告され、集団感染が増えている」と率直に認めた。
 特に、最初に感染が広がった武漢市では十日に一人、十一日には五人の集団感染が確認された。中国当局は四月八日に武漢の都市封鎖解除を宣言したが、その後、初の新たな感染確認だった。
 感染確認された六人は当初、無症状感染者に分類されていた。東北部の吉林省舒蘭市でも十六人の集団感染が新たに確認され、同省は十日に舒蘭市の感染リスクを「中」から「高」に引き上げた。
 中国政府は、全人代が開かれる首都北京以外にも気を配り、無症状感染者の発症や、集団感染再燃の恐れにもっと神経をとがらせるべきではないのか。
 共産党支配が中国の実態だが、全人代は「最高の国権機関」とされる。「コロナ後」の経済復興や貧困対策などの課題が山積しており、開催はむろん中国が判断することである。会期を例年の半分の一週間に短縮し、全人代代表や報道陣のPCR検査など、徹底した感染防止策を講じるともいう。
 しかし、代表やスタッフら数万人が地方から北京に集まれば、感染第二波の引き金にもなりかねない。早期開催の政治的メンツよりも自国民や世界の安全へのリスクを重視すべきではないか。

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