緊急事態宣言 命守る医療を支えねば
2020年5月22日 02時00分
緊急事態宣言が関西圏で解除され、首都圏の四都県では解除が見送られた。新型コロナウイルスの感染者は全国的に減少しているものの、再流行に備え今のうちに医療の態勢を整える必要がある。
解除された大阪、京都府と兵庫県は感染者の減少が顕著だが、人出が増えた連休後の状況はこれから判明する。警戒は怠れない。
東京都と神奈川、埼玉、千葉の三県、北海道は宣言を継続する。政府には、自粛継続の根拠を重ねて説明する責任がある。
宣言解除の基準は感染者の状況だけでなく医療態勢の窮迫度も含まれる。重症者を受け入れる病床数は全国で余力が出てきており、首都圏の四都県も同様だ。
感染者の治療に懸命に取り組む医療従事者には重ねて謝意を表しつつ、課題を指摘しておきたい。
まず、医療態勢の立て直しを進めたい。厚生労働省によると、重症者用に確保した病床は現在、全国で約二千四百床ある。政府は今後、約四千二百床へ増やす方針だが、確実に確保すべきだ。
その際、カギになるのは都道府県の調整能力である。医療機関同士の役割分担を進め、受け入れ状況の情報共有などの仕組みづくりが不可欠だ。首都圏の四都県の知事は一体となった対応を続けると表明した。医療態勢も都県域を越えた連携を検討してほしい。
重要なのは医療機関への支援である。感染者対応をした医療機関では必要な設備に費用がかさんだり、一般病床を閉鎖するなどしたため経営に影響が出ている。診療報酬の増額や前払い、交付金などで経営を下支えすべきだ。
日本看護協会が離職している看護師の現場復帰を進めている。加速させたい。
医療従事者への支援も要る。マスクなどの防護具は依然、不足している。危険手当の支給を求める声も上がっている。政府には安全と処遇の双方で改善に努める責任がある。
検査態勢は、医師が必要と判断した人の検査は迅速に実施できるよう強化すべきだ。院内感染防止のため医療従事者への検査拡充も必要である。
保健所の態勢強化は課題だ。IT活用の遅れも露呈した。
都では感染者数の把握に漏れが出た。保健所からの報告をファクスで行っていたため送信ミスなどが原因だった。データベースの仕組みを導入したが、人員増などと合わせ業務の効率化も人の命を守ると考えたい。
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