夏の甲子園中止 苦渋の決断受け入れて
2020年5月21日 02時00分
高校野球の全国選手権大会が新型コロナウイルスの影響で戦後初の中止となった。春の選抜大会に続いて憧れの甲子園球場でのプレーがかなわなくなった球児たちの心に寄り添いたい。
高校球児の皆さんへ
甲子園は素晴らしい球場だ。一九二四年に完成してから変わらぬ凜(りん)とした佇(たたず)まいは、それを仰ぎ見るだけで体は興奮に包まれる。グラウンドに一歩足を踏み入れれば、この土の上で数々の野球人が流した汗と涙に思いをはせて心は昂(たかぶ)り、野球を続けてきたことへの喜びが湧き上がる。
そんな甲子園球場を目指し、あらゆることを犠牲にして情熱を注いできたあなたたちは、自分自身に誇りを持っていい。
夢だった舞台が奪われた悔しさは、全力を尽くした末に敗れた試合の時より大きいかもしれない。もしかしたら、自分たちの気持ちを踏みにじったと、無力のおとなたちを恨むかもしれない。
でも、分かってほしい。おとなたちは、あの素晴らしい球場にあなたたちを行かせてあげたい、あの土の上で思い切りプレーをさせてあげたいと、思い続けてきた。開催の可能性を探り続けてきた。
しかし、移動や宿泊のリスクも考えれば、あなたたちや関係者、その家族らを見えない敵から守る保証ができない。さらには休校が続く学習の遅れを取り戻すため、夏休みを短縮して授業を行う高校も出てくるだろう。そうなれば予選の地方大会を開催できたとしても日程消化が困難になる。暑熱対策や投手の肩の保護も考慮すれば、夏の甲子園の開幕日だった八月十日に間に合わない地域も出るかもしれない。
苦渋の決断は、先に中止が決まった夏の高校総体(インターハイ)も同じだ。この大会を目標にしてきた他のアスリートたちも、つらい日々を送っている。
三年生にとっては最後の夏だった。どんなにか無念で、悲しく、情けない気持ちだろう。「これまでの努力を今後の人生の糧に」などという言葉は、目の前の道が暗闇で閉ざされてしまった今は慰めにしかならないだろう。ただ、この現実を受け入れ、次の目標を見つけて新たな一歩を踏み出してほしいと心から望むだけだ。
そんなあなたたちのために、できることなら、いつの日か何らかの形で、甲子園球場の土を踏むことができる機会をつくってあげたい。それがおとなたちの、せめてもの願いだ。
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