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 私が医療現場でも使う高機能のマスクを買い増したのは、1月半ばだった。オーストラリアでは「P2マスク」と呼ばれ、日本のN95マスクと同じ規格だ。

拡大する写真・図版森林火災の煙が及び、大気汚染が深刻に。シドニー中心部のシンボル、ハーバーブリッジ(後方)もかすんだ=2019年12月10日、小暮哲夫撮影

 新型コロナウイルスのためではない。昨年後半から国内で猛威を振るっていた森林火災の取材のためだ。新型コロナはまだ、「対岸の火事」だった。

 煙と炎で上空がどす黒い赤に染まり、数キロ離れた燃える森から火の粉が降ってきた――。そんな異常な体験を被災地の人から聞き、圧倒された。全土で、日本の国土の6割に当たる2300万ヘクタールが燃え、3千棟以上が焼失した火災は、100年に1度か2度あるかというくらいの危機だった。

 被害が直接及ばなかったシドニー市内でも、煙が運ばれてきて大気がかすみ、汚染指数がインドや中国よりもひどい「健康に危険」の日もあった。個人的には、週末の朝に欠かさないランニングの前に、大気汚染の情報を確認する時期が続いた。

拡大する写真・図版森林火災で焼失した家屋では、暖炉の煙突(左)だけが残っていた=2020年1月9日、豪南東部ウィンジェロ、小暮哲夫撮影

 そんななかで、政府の新型コロナへの対応は早かった。2月1日に中国全土からの入国を制限。その効果で感染は広がらなかった。2月半ばには森林火災がほぼ収まり、安堵(あんど)感が広がった。

 だが、2月末から3月にかけて、イランやイタリア、米国などから帰った人から感染が次々と見つかると、じわじわと違う緊張感が漂い始めた。

 シドニーのスーパーではトイレットペーパーを巡って、取っ組み合いのけんかをした女性2人が「乱闘罪」で起訴される事件まで起きた。ハンドソープやパスタに冷凍食品、米、牛肉、ジャガイモやタマネギまでが店頭から消えた。

 政府も3月半ばから、再び手を…

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