急速に拡大する日銀の中小企業資金繰り支援。鍵となる「本当のマイナス金利政策」とは (写真はイメージです) Photo:PIXTA

新型コロナ対応で急速に拡大する
日銀の中小企業資金繰り支援

 日本銀行は、新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動の停滞に対応するため、中小企業などの資金繰り支援を拡充している。

 まず日銀は、3月16日に予定を前倒しして開催した金融政策決定会合で、企業金融支援特別オペの導入を決定。次いで、4月27日の定例の決定会合では、特別オペの対象担保範囲を企業債務から家計債務を含めた民間債務全般に拡大し、規模を8兆円から25兆円(4月末現在)に拡大した。

 さらに、5月22日に開催した臨時の金融政策決定会合では、4月の会合以降に検討してきた中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」を30兆円規模で導入することを決めた。こちらは、政府の緊急経済対策に掲げられた金融機関による無利子・無担保融資に日銀が利率ゼロ%で資金供給するもので、新型コロナ対応における政府と日銀の連携を象徴する施策となっている。

デフレ脱却から新型コロナ対応へ
骨抜きになるマイナス金利政策

 日銀は、これらの金融支援特別オペにCP・社債等の買入れ(20兆円)を加え、「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム(総枠約75兆円)」として金融緩和の強化をアピールするが、その一方で、金融緩和の目的をデフレ対応から新型コロナ対応に置き換えているようだ。

 また、資金繰り支援特別プログラムのうち、CP・社債等の買入れ以外の施策では、利用残高の2倍の金額を金利ゼロ%の「マクロ加算残高」に加算すると同時に、利用残高に相当する日銀当座預金に+0.1%の付利をすることになった。これは、これまで続けてきたマイナス金利政策を一段と形骸化するものだ。

 まず、マクロ加算残高が拡大することによって、金融機関はマイナス金利が付く政策金利残高を減らすことができる。また、プラス金利が付与される残高が拡大することは、明らかにマイナス金利政策と相反する政策だ。