マスク着用めぐる空の上の攻防 拒む乗客に悩む航空会社
AFPのカメラマン、ヨハネス・アイズリー(Johannes Eisele)氏は、実際にこの問題を体験した。
アイズリー氏は最近、アメリカン航空(American Airlines)を利用し、新型コロナウイルス感染拡大の中心となっていた米ニューヨークにあるラガーディア空港(LaGuardia Airport)からノースカロライナ州のシャーロット・ダグラス国際空港(Charlotte/Douglas International Airport)までの便に乗った。座席は、乗客2人に挟まれた真ん中で、その片側の1人だけがマスクをしていた。
アイズリー氏は次のように説明した。「マスクを持っていないのですかと隣の男性に尋ねると、『持っています』との答えだった。そこで『マスクを着けてもらえませんか』と頼んだ」
するとその男性は、「マスクをしない方がほっとするので着けないと答えた」。アイズリー氏が男性に、「あなたが着けてくれた方が、私はほっとするのですが」と言うと、「自分の不安をわざわざ他人に言う必要はない」と返してきたという。
その便は満員だったので、アイズリー氏は他の席に変わることもできなかった。
この出来事が起きたのは今月初めのことだ。この直後、米航空各社は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を抑制するため、マスク着用の規則を導入した。免除されるのは一般的に、医療上または宗教上の理由がある人々、あるいはかなり幼少の子どもだけだ。
アメリカン航空やユナイテッド航空(United Airlines)によれば、搭乗時の規則は明快だ。マスクを着けていないと、搭乗できない。だが、問題が起きるのは離陸後だ。航空会社は、対立を避ける必要があれば、飛行中にマスクを外すことを大抵は許可するだろう。もちろん飲食時にはマスクを外すことが許される。
■対決より懐柔路線を取る各社
ユナイテッド航空の広報担当者はAFPに、乗客がマスクの着用を拒否して混乱が引き起こされている場合は、「緊張を緩和させるスキルを使うよう乗務員に助言している」と語った。
さらに「乗客を別の席に移動させるという柔軟な対応策がある」と付け加えた。ただし、満席の場合は不可能だ。
サウスウエスト航空(Southwest Airlines)の広報担当者は、「私たちは、乗客の個人的な行為を管理する立場にはない」と述べた。同社は空港や機内でマスクを提供してはいるが、「乗客がマスクをしていないという理由だけで搭乗を拒否する」ことはない。
要するに、航空会社は、マスク着用を頼まれてもかたくなに拒み、時に怒る乗客に対しては、対決路線ではなく懐柔路線を取っているようだ。たとえそれが、近くの席の乗客に対する多大な健康リスクを意味するとしてもだ。
研究者らが感染リスクが最大に近づく状況として挙げているのは、閉鎖された空間で長時間過ごす場合、そう、例えば飛行機だ。
【翻訳編集】AFPBB News
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