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(環)あなたは 何を伝えたいの?
どこまで役を理解している?
(音)そうか 分かった!
本を読むより 実践で学ばんと。
「椿姫」のヴィオレッタも社交場の華だった。
初めまして 新人の音江です。
(希穂子)ここは夢を売る場所だからね。
勉強になります。
(裕一)あっ 音! 音… えっ えっ えっ えっ?
ただいま。うん…。
臭っ。
♪~
♪「泣いて 生まれて 響く命」
♪「きっと嬉しくて 笑っているんだ」
♪「僕らはきっと 出逢うでしょう」
♪「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を 超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで 響くはエール」
(潔子)女給さん!?(和子)カフェーで働いてるの? 音さんが?
うん。 一週間の臨時雇いだけどね。
(あくび)
眠い。 先生来たら 起こして。
(廿日市)う~ん… 駄目だね~。
いや…。せっかくチャンスあげたのに これじゃあね…。
いや… すいません えっと…。まあ いいよ うん。
これは ほかの作曲家にも頼んでたのよ。そっちで なんとかなりそうだから。
いや… 廿日市さん…。
(木枯)チャンスなんかじゃねえよ。あいつ 本当に適当だな…。
えっ? な な… 何? それ。
いや あれ 作詞した磯貝ってやつ重役の息子だってさ。えっ?
親の七光りで作詞家になろうとしてるボンクラだよ。
廿日市も ババ引かされたってぼやいてたらしい。
えっ… そのババ僕に あてがったってこと?
うん まあ…。へえ~ そうか… なんだ。
君の才能をあんなとこで無駄遣いする必要ないよ。
まあ… どっちみち あの歌詞には乗れなかったんだけどね 全然。
切り替えてこう 次 次。
次 あんのかな~?
泣き言 言うなよ。 嫁さんだってカフェーで頑張ってんだろ?
が… 頑張ってんのかな…どうなのか…。
昨日 ちょっと様子見てきた。えっ!?
彼女 なかなかやるね~。なっ… やる やる やる?
何… 何をやるの!? 何を? 何…?
男を喜ばせるコツを よ~く知ってる。
お… 男を喜ばせる~!?
あれは天性の素質だな。お~…。
そんな弱気になって どうするの?
上司でも何でもビシッと言ってやればいいでしょう。
ほら 自信持って。 はい どうぞ。
ありがとう。 元気出てきた!おっ!
音江ちゃん!
俺の話も聞いてよ~。どうしたの? フクさんは。
そのまま?そのまま。割らなくて…?
音江ちゃ~ん。 こっちも来て 音江ちゃん。
ちょっと フクちゃん 終わってからね。あっ フクちゃんって言っちゃった…。
指名も ひっきりなしだった。うわ~ 指名も ひっきりなし…。
え~?
頑張れ。え~?じゃあね。
木枯君! 悪いんだけどさ今日も 様子見に行ってきてよ。
やだよ 自分で行けよ。何で… お願いだ。 友達だろう?
自分の嫁だろ?何で… お願いだから…。
お願い…。自分で行ってこい。友達でしょ…。
木枯君! お~い 木枯正人~!
はあ…。
おい 何 もたもたしてんだ。早くしろよ。
すいません お待たせしました。 どうぞ。
何だ この酒は。こんな薄い酒が飲めるか!
あっ!
何するんですか?ガタガタ言うんじゃない 女給の分際で。
お前…。(どよめき)
ああ… ああ…。
(ママ)全く とんでもない跳ねっ返りだわ! 何 考えてるの!?
すいませんでした。 でも あの人私たちのこと バカにして…。
流せばいいの そんなもの。大体 あなたはね…。
あの… あんまり音江さんを責めないであげて下さい。
えっ?私たちも悪かったんです。
機嫌の悪いお客様をまだ不慣れな彼女一人に任せてしまって。
ごめんね 音江さん。いえ 私こそ… すみませんでした。
すみませんでした!すみませんでした。
2人とも 顔を上げなさい。
(時報)
・(戸が開く音)
音? あっ… 音? 音…?
た… 大将。(鉄男)おう。
私 感情がすぐ 表に出てしまうんですよね。
もっと大人の対応をしなくちゃって思うんですけど。
でも それが音江さんのチャームポイントかもね。
希穂子さんは すごいな。
私にないもん 全部持ってる。 フフフ。
欠点だらけよ 私なんて。
私が男だったら 希穂子さんみたいな人を好きになりますね。 フフッ。
光栄。 はい。ありがとうございます。
実は 私 恋愛の機微が勉強したくて入店したんです。
恋愛の機微?はい。
希穂子さんは お客さんを好きになったこと ありますか?
う~ん… ここではないかな。
ほかでは あるんですか?さあ? どうだったかしら。
(ドアが開く音)
音江ちゃん。はい。指名。
はい。希穂子ちゃんも ついてあげて。
はい。
今度は ちゃんとやってよ。はい。
ありがとうございます。
お待たせしました~。
鉄男さん!お~ 本当に女給さんになってる。
どうして? いつから東京に?さっき 着いたとこ。
休暇の間 泊めてもらおうと思って裕一のとこ行ったら音さんのことあんまりにも心配してるもんだから代わりに様子見に来た。
なら 一緒に来ればいいのに。そうもいかねえだろ 男としては。
フフフ…。ありがとう。
いらっしゃいませ。
希穂子…。
どして ここに?
ずっと捜してたんだ。何で 急にいなくなった?
希穂子… ちゃんと説明してくれ。
お話しすることはありません。
お… おい… ちょっと待てよ。
やめて下さい!出よう… ここじゃ 話できねえ。 なっ?
やめて!鉄男さん 乱暴はやめて。(ボーイ)おい 何やってんだ!
大丈夫だから…いや あの 少し 話しするだけですから。
離して!
♪~
ねえ 何が どうなってんの?私にも よく分からんくて。
どして 急に 姿 消したんだ?
田舎にいるのが嫌になったからです。
うそだ。 君は福島が好きだと言ってた。
村野さん ご結婚されるそうですね。
け… 結婚?おめでとうございます。
結婚なんかしねえ!あれは向こうが勝手に…。
ご挨拶もなしに上京してしまったことはおわびします。
でも… 私からお話しすることはありませんので。
こっちの話は まだ終わってねえ!ちょ… 大将 大将…。
お騒がせして申し訳ありません。失礼します。
希穂子 希穂子!ちょちょ… 大将 大将 大将…。
大将… 一回 一回 落ち着いて。はあ…。
希穂子さん!
コーヒー 飲みませんか?
おいしい。
ここのコーヒーは東京で一番だから。
といっても ほかの店では飲んだことないんですけどね。 フフフフ。
村野さんとは 少しだけおつきあいをしてたの。
福島で?
私が仲居をしてた料亭で知り合って…。
あっ…。
何か?あっ いえ…。
お魚 すごくきれいに召し上がると思って。
あっ… 失礼しました。
いや… 何でも 褒められんのはうれしいもんですね。
俺… 家が魚屋だったんです。子どもの時は ずっと貧乏で。
私の家も貧乏です。 一緒ですね。
♪~
希穂子。うん?
(希穂子)でも… 彼が会社の社長さんと店にいらした時…。
・(堂林)村野君君は仁美をどう思ってんのかね?
・(鉄男)それは…。
(仁美)やめて お父様。村野さん 困ってらっしゃるじゃない。
(堂林)ハハハハ…。 僕はね 村野君うちの会社を ゆくゆくは君に任せたいと思ってんだよ。 ほら。
縁談が進んどったってこと?
ええ。
縁談なんてもんじゃねえ一方的な話なんだ。
折を見て 断るつもりだった。そうだったんだ。
(ため息)
東京さ 行ったらしいと聞いてずっと捜してた。
優しい女なんだ。貧しい家に育って今も 病気の親 抱えて苦労してんのにけなげで 明るくて。彼女といっと ねじくれた気持ちがす~っと消えて 素直になれる。
こんなこと初めてだ。
福島に連れて帰りてえ…。希穂子と一緒になりてえんだ。
結局 ご縁がなかったのよ。
今は ただの知り合い。本当に? それだけですか?
ええ。 それだけよ。
・(物音)・(鉄男)ああ~! うわ~!
た… 大将…。最低だ!
俺が グズグズしてっから希穂子に見限られたんだ!
大将…。俺は どうしようもねえバカだ! ああ~!
大将 水飲もう。 水飲もう。
ああ~ 希穂子~!