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 世界が同時に混迷期に入った今、国際機関の重要さは増すばかりだ。大戦後の協調を進めてきた枠組みを逆に損ねるならば、「コロナ後」の国際社会に深い禍根を残すだろう。

 ジュネーブであった世界保健機関(WHO)の年次総会は、残念ながら、協調よりも対立を強く印象づける結果になった。2大国である米国と中国の諍(いさか)いが止まらないからだ。

 WHOを「中国の操り人形」と呼ぶトランプ大統領は、ついに脱退の可能性まで示唆した。中国での感染発生時の初動を誤ったと非難するが、実際は自らの米国での対応の失敗を隠したい思惑が見て取れる。

 中国は対照的にWHOへの追加出資を約束しつつ、米国の不当さを訴える。だが、各国が望むような情報開示に後ろ向きだったのは事実だ。総会で決議された初動対応の外部検証に全面的に協力しなければ、中国も責任逃れのそしりを免れまい。

 米中とも古い大国意識から脱せず、感染症対策には勝者も敗者もない現実を見失っているようだ。WHOを弱体化すれば混乱は広がり、米国の威信低下は避けられない。中国にも、米国の役割を肩代わりできるほどの指導力も信頼もない。

 両国の覇権争いがコロナ禍を機に悪化した例としては、国連安全保障理事会も同じだ。

 世界の紛争当事者に対し国連事務総長が「コロナ停戦」を求めて2カ月近くになる。だが、安保理はそのための停戦決議を今も採択できていない。WHOを想起させる文言に米国が反対しているため、とされる。

 新型コロナは人類共通の脅威だ。その渦中に、世界の平和と安全に主要な責任を持つはずの安保理が存在感すら示せないようでは、今後の「無極化」の世界を案じざるをえない。

 防疫のために各国が国境を閉じて往来を制限する間、グローバル化の流れはブレーキがかかる。財政難ものしかかる今後、各国の政治潮流がますます内向きのポピュリズムに陥る恐れは否定できないだろう。

 しかし、コロナ以降を国際協調主義の冬の時代にしてはならない。

 その意味で、ドイツフランスが今週、欧州の復興をめざす多額の基金創設で合意したことは評価したい。欧州連合の加盟国の中にはなお異論もあるようだが、少なくとも統合の理念を再確認する意義はある。

 日本も主要国として重責を抱えている。米中間の橋渡し役を果たす道を探るとともに、欧州や各国と連携して、保健衛生や貧困、環境など、地球規模の課題解決へ向け、多国間協力を強める外交をめざすべきだ。

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