コロナで注目だけど今さら聞けない…補助金・助成金・給付金の違いって何?
新型コロナウイルスの感染拡大防止の一環としてさまざまな経済対策が打ち出されました。特に脚光を浴びるようになったのが補助金・給付金・助成金です。いずれも融資と違い、「返さなくてもよいお金」として認識されていますが、具体的な内容や違いについてはあまり知られていません。
今回は、補助金・給付金・助成金の特徴や注意点についてご紹介します。
■補助金とは何か
補助金とは、国の政策目標を実現すべく、その政策目標に沿った事業を行う事業主に対して交付するお金です。財源が税金であるため、使途はかなり制限されます。
- ●基本的に「狭き門」
補助金は予算や交付件数が決まっています。そのため、申請しても交付されないことが珍しくありません。また、予算決定後、1か月程度の期間で公募が行われるため、一度見逃すとなかなかチャンスが巡ってきません。
- ●申請時だけでなく交付通知後も確認される
補助金の使途は厳しく制限されています。事業内容や経費が補助金の目的に沿っているか否かを申請時に審査される他、交付決定後、計画書通りに事業を行っているかどうかや経費の内容を報告しなくてはなりません。
- ●交付は後払い
交付は後払いになります。交付決定後、すぐにもらえるわけではありません。補助対象となる事業を行い、自分で経費を支払ったことを領収書で証明した後、補助額が決定し支給されることになります。交付額は費用の全額ではなく一部です。
- ●認定支援機関のサポート対象
補助金は経済産業省が中心となって交付するものが多いため、経営革新等支援機関(認定支援機関)のサポートを受けると補助金審査に通りやすいと言われています。認定支援機関は金融機関や司法書士・税理士などの士業で一定レベルの知識・経験があると国の認定を受けたところを言います。
- ●よく知られている補助金3つ
ではここで、よく知られている補助金を3つご紹介します。なお、いずれも今年4月に成立した補正予算案により、コロナ特別枠が設けられています。
①持続化補助金(小規模事業者持続化補助金)
従業員数が少ない企業や個人事業主が働き方改革などの制度変更に対応すべく、ホームページの作成や店舗の改装など、販路の開拓のための費用を一部補助するための制度です。通常、補助率は経費の2/3、上限額は50万円となっています。ただし現在、コロナ対応型枠が設けられ、そちらは上限額が100万円となっています。
②IT導入補助金
IT補助金とは、中小企業や小規模事業者がバックオフィス業務の効率化やマーケティングのためにITツールを導入する際の費用を一部補助する制度です。通常、補助率は経費の1/2、上限額は最大450万円です。しかしコロナ特別枠C類型では、テレワーク環境整備促進のため、補助率2/3に引き上げられた他、PCやタブレットなどのハードウェアのレンタル費用も対象となりました。
③ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
新商品や新サービスの開発、生産プロセス開発など、生産性の向上につながる事業に対して交付される補助金です。通常の補助率は1/2、上限額は最大1億円ですが、コロナ特別枠では補助率が2/3に引き上げられました。
■助成金とは
助成金も補助金と同様、国や地方自治体が事業者の支援のために交付するお金です。ただ、厚生労働省によるものが多く、雇用の増加や人材育成、労働環境の改善を行う事業者への支援金が一般的です。このほか、研究開発事業に対するものもあります。
- ●補助金よりもハードルは低い
使途の幅が狭く、公募期間の短い補助金よりもハードルが低いのが特徴です。助成金には厳しい審査はなく、条件を満たしていれば原則申請すれば受給できます。また、年間を通して募集していることが多いのが特徴です。ただ、厚生労働省による助成金は原則社会保険に加入していないと申請できません。
- ●後払い
助成金も補助金と同じく、後払いが原則です。なお、補助金と同じく、費用の一部が支給されるのが一般的です。
- ●社会保険労務士のサポート対象
厚生労働省によるものが多いこと、労働者に関するものが多いことから、社会保険労務士が支援を行うのが一般的です。
- ●よく知られている助成金2つ
よく知られている助成金には、次のようなものがあります。
①雇用調整助成金
事業主が景気悪化などにより事業の縮小を余儀なくされても、従業員の雇用を維持した場合の費用に対して支給される助成金です。休業手当の支給、従業員の出向、教育訓練の実施に伴う費用に対し、通常1/2か2/3の割合で補助されますが、コロナ枠では全額補助されることもあります。
②働き方改革推進支援助成金
在宅勤務やサテライトオフィスでの就業環境の整備に取り組む事業主向けの助成金です。テレワーク用の機器の導入や就業規則の変更などの費用につき、最大3/4が助成されます。
■給付金など
給付金も国や自治体から支給されるお金です。提示される条件を満たしていれば誰でも申請できます。給付金には「持続化給付金」のように事業主対象のものの他、「失業給付金」「すまい給付金」「教育訓練給付金」といった一般の国民向けのものがあります。
■共通点
3つの国からのお金にはそれぞれ特徴がありますが、次のような共通点があります。
- ●不正受給には厳しい
いずれも不正受給には厳罰が待っています。補助金だと受給額だけでなく年10.95%の加算金というペナルティを払う他、官公庁のホームページに事業主名が掲載されたり、詐欺罪として起訴されたりします。
- ●事業主への支給は原則課税
事業主が交付を受けた補助金・助成金・給付金は収益計上し、課税対象となります。法人ならば「雑収入」あるいは「国庫補助金受贈益(収入)」として、個人ならば事業所得の「雑収入」として会計処理するのが一般的です。なお、補助対象となる固定資産については、圧縮記帳で課税を繰り延べることができます。
一個人として受け取ったお金は、その支給の目的によって課税・非課税が変わります。詳しくはこちらのサイトを参考にしてください。
【参考】
新型コロナの助成金・給付金に課税なんて……課税・非課税の基本的な所得税法の考え方
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新型コロナの助成金・給付金に課税なんて……課税・非課税の基本的な所得税法の考え方
著者: 鈴木まゆ子
税理士・税務ライター
中央大学法学部法律学科卒業後、ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、納税通信、朝日新聞『相続会議』などメディアで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)