コラム
2020.05.26 15:00 マネーポストWEB
コロナで家計がピンチ…3つの「保険活用法」をFPがアドバイス
コロナ禍で保険をどう活用するべきか(イメージ)
消費の落ち込みなどにより経済が大きな打撃を受けている今、家計の見直しを考えている人も少なくないだろう。もちろん日々の節約も大切だが、ファイナンシャル・プランナーの清水斐氏は「保険」について知ることが家計の助けにつながると指摘する。
【図解】「夫に先立たれた」「妻に先立たれた」それぞれの遺族年金
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新型コロナウイルスの影響で仕事や収入が減少してしまった人や、コロナ禍の長期化に備えるために支出を減らしたいという人は多いのではないでしょうか。そういう場合、「食費」や「光熱費」といった“毎日の努力で減らせそうな支出”ばかりに目が行きがちですが、いま民間の生命保険を契約している人は、ぜひその見直しや活用を検討していただきたいと思います。以下、そのやり方と効果を3つのポイントに分けて紹介します。
◆【1】死亡保険の見直しで固定費削減
死亡保険は、“過剰に備えている”ために保険料が家計の負担になっているケースが多いと言えます。それを見直すだけで、家計の中の固定費が大きく削減されることもあります。保険は「もしもの時に経済的に困る誰かに対してのサポート」であることが原則です。誰かを経済的にフォローをしていない独身者や、共働きで子供のいない夫婦が死亡保険に加入している場合は、保険でサポートする必要性が薄いとも考えられます。特にそうした人は、死亡保険を見直すべきです。
また、不幸にして家計の稼ぎ手が亡くなった時には、国から「遺族年金」が出ます。自営業やフリーランスといった国民年金に加入している人は「遺族基礎年金」、加えて会社員(厚生年金加入者)は「遺族厚生年金」も受給できます。
遺族基礎年金は年額78万1600円で、18歳になっていない子供1人につき22万4900円(第3子からは7万5000円)が加算されます。遺族厚生年金は亡くなった方の給料によって金額は変わりますが、子供2人がいる平均的な家庭で総額月額15万円ほどとなっています。
また、住宅ローンを組んでいる場合は「団体信用生命保険」にも原則加入しています。団信では、返済者が死亡した際にローン残高に相当する保険金が支払われ、実質的にローン返済は不要になります。加えて、勤め先によっては死亡弔慰金を支給してくれる場合もあります。
これらの公的な保障などを考慮して、残された家族が生活するために必要なお金の総額から差し引き、死亡保険で賄わなければいけない金額を検討したほうがいいでしょう。特に、保険会社の担当者の試算を信じて言われるがまま契約したようなケースでは要注意です。
ファイナンシャル・プランナーである私のもとに相談に来る方の中には、住宅ローンが残っていて貯金がなかなかできておらず、もしもの時の「子供の教育資金不足」を補うために死亡保険が必要ではないかと考えている方が少なくありません。そうしたケースでは、短期間、定期の死亡保険を契約することでカバーできます。例えば、お子さんが現在12歳ならば、“一家の大黒柱”にもしものことがあっても大学卒業の22歳までは資金が必要だと考えれば「10年定期」の生命保険に加入するという選択肢があります。死亡時に1000万円が出るという保障内容ならば、保険料は月1000円台という保険も珍しくありません。
◆【2】当面の生活費に困ったら「契約者貸付」利用を
生活費に困った時に、加入している生命保険の保険会社からお金を借りることができることをご存じでしょうか。「契約者貸付」と呼ばれるもので、貯蓄性の保険で将来受け取れる「解約返戻金」を担保にして、一定の範囲内で資金を借り入れることができます。
新型コロナの拡大を受け、貸付金利を「0%」としている保険会社もあります。借りられる金額や金利、期間については契約中の保険会社によって異なるので、手元資金が不安なときには保険会社のウェブサイトなどで確認してみてください。
◆【3】保険料を払うのが厳しければ「支払い猶予」も検討
新型コロナで仕事や生活に影響が出ている場合には、保険料の払込猶予をできるようにした保険会社も多くあります。もし保険料を払うのが厳しければ、こうした猶予制度を利用することも、当座の家計を補う方法になります。
無理して高い保険料を払い続け、生活が苦しくなるのでは本末転倒です。現時点で生活に困っていないという人でも、コロナは長い目で見れば少しずつ家計を蝕んでくることが予想されます。特に【1】の死亡保険の見直しは多くの方に検討していただきたいと思います。
◆しみず・あや/CFPR、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、証券外務員I種。30歳でファイナンシャル・プランナーとして独立、長野・東京で活動中。主に30~40代の「普通のくらし」を求めている方への「自分がお客様の立場だったらどういう判断をするか」を軸にお金の持ち方・つかい方のアドバイスに力を入れている。ライフプラン作りから資産運用まで老後にわたる継続的なサポートすることを事業理念として活動している(http://www.fp-saku.com/)。