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三重

警察の検視、新型コロナへの警戒も 高齢者の孤独死多く増加傾向

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 医師により死因が特定されていない「変死体」など、県警が昨年一年間に取り扱った遺体は計二千五百六体に上り、うち七割強が高齢者だった。超高齢社会で、誰にも看取(みと)られずに自宅で亡くなる「孤独死」も増え、遺体の取扱数は増加傾向にある。県警は今春、検視体制を強化したが、現場の負担は依然大きい。

 紀北地域の民家で昨年三月、八十代女性が亡くなっているのが見つかった。四年前に夫を亡くしてからは独り暮らしで、親族が自宅を訪れた時は死後二週間が経過していた。検視官が現場に出動(臨場)し、遺体や現場の状況などから病死と判断した。

 検視は、死亡した人の死因が分からなかったり、事件性が否定できなかったりした場合に行われる。遺族の聞き取りもし、犯罪死ではないか、大学の法医学教室などによる司法解剖が必要かどうかを見極める。

 二〇一八年十月に伊賀地域で独居の八十代女性が亡くなった事案では、遺体にあざがあったことなどから事件性を疑い、司法解剖を行った。結果、死因は頭を打ったことによる急性硬膜下血腫と判明。遺体近くにいすが倒れていた状況もあり、転倒による事故死と結論づけた。

県歯科医師会と合同で開催した研修会で、歯科所見からの身元確認技術を学ぶ県警の検視官ら=津南署で(県警提供)

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 県警捜査一課によると、昨年に取り扱った二千五百六体のうち、千九百体が六十五歳以上の高齢者だった。孤独死は29・9%の七百五十一人で、六十~八十代が大半を占めた。高齢単身世帯の増加が背景にあり、一五年で約七万七千人と十年前の一・八倍に増えた。

 同課検視官室の須川佳男室長は「新聞や郵便物が取り込まれていなかったり、水道メーターが止まっていたりして発見されるケースも多い」と指摘する。一八年の取扱数は二千五百九十八体で過去最多となった。

 犯罪死を見逃さないためには、検視官が現場に出動する割合(臨場率)の向上が鍵を握るが、昨年は76・4%で全国四十二位にとどまった。一方、検視官一人あたりが受け持った遺体数は全国で十番目に多い。県警は今春、体制を強化しようと、検視官を一人増やし五人とした。

 検視に当たっては、新型コロナウイルス感染症への対応も求められる。

 四月には四日市市で五十代男性が死亡し、後に感染が判明。死後数日前から発熱が続いていたことから感染を疑い、防護服を着用し、最小限の人数で検視した。他にも感染が疑われた遺体があった。

 県警では現在、変死体が見つかった場合に遺族らから発熱や近親者の感染の有無、海外渡航歴などの確認を徹底している。感染の疑いがあれば、防護服を着て検視に臨んでいる。

 須川室長は「検視は死者の尊厳を守る仕事。ライフスタイルの変化で独り暮らしの高齢者らの孤独死はこれから先も増えると思うが、犯罪死を見逃さないよう気を引き締めて取り組みたい」と話した。

 (斉藤和音)

 

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