もう日本は眼中にない…対コロナ勝利で韓国の「先進国意識」が確立?

70年間の自分探しの旅は終わったのか
木村 幹 プロフィール

格差、それでも若者に翳りなし

もちろん、その事は韓国の経済や社会に問題がない、という事を意味しない。よく指摘されるのは、韓国において深刻なのが経済的格差の拡大であり、またその表れとしての失業問題である。

韓国政府の公式統計で2019年の失業率は3.8%。日本の数字が2.4%だからそれよりも高い事も重要であるが、とりわけ20代以下の失業率が8.9%と極めて高い数値になっている事が大きな問題となっている。

この様な若年層の雇用問題は韓国が1997年から98年のアジア通貨危機において、IMFの指導下で新自由主義的な構造改革を行われてから、一貫して深刻な問題として現れている。だからこそリーマンショック直後の2010年には、当時の若者の間で、「ヘル朝鮮」つまり、「韓国は地獄だ」という言葉が生まれ、流行する事にもなっている。

とはいえその事は、この国の若者が必ずしも自らの国家に対して、年長者より低い国際的評価を与えている事を意味しない。たとえば2010年の調査では韓国は「先進国である」と答えた20代は46.6%、この数字は全年齢層で最も高いものになっている。

今回2020年の調査では「先進国である」と答えた20代の人々は61.5%。政府支持層の多い、30代の67.3%や40代の74.3%よりは若干落ちるものの、それでも平均の57.6%を上回る数字になっている。その事は高齢者の多くが依然として韓国は「後進国である」と答えているのとは対照的だ。

 

しかしそれは当たり前の事である。韓国が未だ貧困と権威主義体制下の抑圧にあった時代に育った高齢者とは異なり、民主化後の時代に育った今の20代から30代の人々は、幾度かの経済的苦境こそあったものの、基本的に平和で民主主義的かつ豊かな生活を享受してきた。だからこそ、数多くの不満を抱えこそすれ、彼らが自らの国家に対する自信を強めていくのは当然の事である。