もう日本は眼中にない…対コロナ勝利で韓国の「先進国意識」が確立?

70年間の自分探しの旅は終わったのか
木村 幹 プロフィール

弱く不安定であることへの不安

しかし、この時期までの韓国民族主義の高揚には1つの矛盾した背景があった。民族主義的な高揚と同時に、依然として自らの将来に対する不安感が強く残っていた事である。

先の李承晩の言葉に倣って言うなら、「団結するのは生き残る為」なのであり、その前提には民族、あるいは国家としての「死」への恐怖が存在した。だからこそ、これまでの韓国においては、劇的な危機からの回復の直後においてすら、自らの民族や国家に対する評価は決して高いものとは言えなかった。

たとえば、韓国の世論調査会社の1つであるリアルメータが2010年11月に行った調査がある。ここでは、韓国が「先進国である」と答えた人は僅か34.3%しかおらず、56.9%の人々は韓国は依然として「発展途上国である」と回答している。

重要な事はこの調査が、先に紹介した韓国のリーマンショックからの回復直後、何よりもその成功を世界に誇るべく李明博がソウルにてG20をホスト役として開催する中、行われたものであった事であった。

 

「かつては列強に見捨てられ植民地へと転落した韓国に、今度は世界の首脳が自ら足を運んで来るのだ」。韓国政府が繰り返しそう宣伝し、首脳会談が大々的に行われる中ですら、韓国の人々は「先進国」としての自信を持ち切れていなかった事になる。