去る4月15日、韓国では4年に1回の国会議員選挙が行われ、与党「共に民主党」とその比例代表用衛星政党「共に市民党」は、国会全300議席のうち60%に当たる180議席を獲得した。
この議席数は1987年の民主化以降、単独の政党が選挙で得た議席としては最大のものであり、これにより与党は3分の2以上の議席数を必要とする憲法改正を除き、国会における事実上のフリーハンドを獲得する事になった。
「共に民主党」は選挙前には、国会の過半数に当たる議席すら有していなかったから、これにより文在寅政権は選挙前とは比べ物にならない強固な政治的基盤を得た事になる。
多くのメディアが報道した様に、この様な韓国与党の「歴史的大勝」の背景には、新型コロナウイルスの蔓延に対する政府の施策への強い支持があった。
事実、一時期は韓国南東部の大邱・慶尚北道地域を中心に拡大した感染は、大量検査と徹底した感染者・濃厚接触者に対する個人管理によって抑え込まれ、5月に入ると韓国では学校の再開をはじめとする日常生活への復帰の動きもみられる様に事となった。
この様な動きの中、文在寅への支持率は更に上昇を続けた。
韓国ギャラップによれば、新型コロナウイルスの感染拡大が続いていた2月第2週には42%であった支持率は、感染者が減少した3月第4週に50%を超え、選挙投票日前後には60%台に突入した。そしてその数字は5月第1週には遂に70%を突破、任期後半に突入した韓国の大統領としては前人未到の支持率を記録する事となった。
その後文在寅の支持率は、ソウル市内ナイトクラブを舞台とする集団感染の発覚により、若干の低下傾向へと入ったものの、依然として60%台の極めて高い水準を維持している。
さて、冒頭の引用文は、自らの大統領就任から3周年の5月10日、ちょうど文在寅の支持率が70%を超えた頃に、文在寅が行った記念演説の一節である。明らかなのは、この演説が今までに文在寅によって行われた如何なる演説と比べても、自らの業績への自信感に溢れ、韓国人の民族意識を大きく鼓舞するものになっている事である。
文在寅の異例の高支持率に見られるように、新型コロナウイルス蔓延後の韓国には、独特の強い民族主義的な空気が流れるようになっている。そこに存在するのは、大きな危機をいち早く抜け出した事から生まれる高揚感であろう。