2020-05-24

子ども知的障害者になった

健常者だった2歳の息子が、病気の後遺症で知的障害者になった。

ことの始まりは熱性痙攣。子どもを持つ親だと聞いたことくらいはあるだろう。

熱が急激に上昇し、目が虚ろになって痙攣していた息子を見て「あ、これが熱性痙攣というやつだな」と冷静に判断することが出来た。

念の為に動画を撮っておくといいらしいということも聞いていたので慌てず動画を短時間撮影し、落ち着くのを待った。

だが全く収まる様子がなく、話に聞いていたのと少し違うように感じ始め、そして少し動揺しつつも救急車を呼んで病院に搬送された。

病院についてしばらくしてから痙攣は収まったものの意識が混濁している様子が続き、ほとんど意識がないまま夜を越した。

先生から話を聞くと急性脳症などという病気の疑いがあるらしく、何やらステロイドを使った治療を進めたいとのことでやってもらうことにした。

半月ほど、意識もほぼ無く食事も摂れず一日中たくさんの点滴を入れ続ける日々が続いた。

そしてようやく意識をわずかに取り戻したと思ったら、あの元気で明るくて楽しい息子はそこにはいなかった。

目は虚ろで言葉も無く、手足すら満足に動かすことは出来なかった。

まだ意識がはっきりしていない上に投薬の影響もある。そう信じて回復をとにかく祈り、ただひたすらに病院に通った。

医学の知識もない人間に出来ることなどせいぜいおむつを交換するくらいで後は横にいて呼びかけたりすることしか出来なかった。

2ヶ月が過ぎた。

病名についてたくさん調べ、残念ながら有効な治療法などは特に確立されておらずまだ手探りの状況らしいということを知った。

その中でも先生方は最大限にやれることをやってくださったと信じている。

そして退院することになった。急性期を脱した息子に対して、病院ではやれることがあまり無くなったから。

だけど元気な息子は、帰ってこなかった。

走り回り、歌い、踊り、お絵かきもする、わがままもいう、なにより笑顔の絶えない、そんな息子は帰ってこなかった。

手足はもぞもぞ動く。笑顔は無く、何やらずっと不機嫌そうにしている。

言葉は、知的障害者を思い浮かべたら出てくるような「あー、うー」みたいな意味のない言葉。

食事だけは、鼻からチューブで栄養を注入するような予後になることも決して少なくはない中で、経口摂取出来る程度に回復したことだけが唯一の救い。

最終的には急性脳症、その中でも痙攣重積型(二相性)急性脳症と呼ばれる病名が付いた。指定難病だって。

急性脳症は後遺症が残りやすいということを聞いた。ざっと3割は後遺症が残らず、4割は軽度~中等度、残りの3割は重度の障害が残るらしい。

世の中に何らかの障害を持った人が少なからずいるのは当然知っている。

だがこれまでの人生において身の回りには偶然にもほとんどいなかった。

まさか、自分の息子が、後天的に、知的な、重度の障害を持つことを誰が想像しただろうか。

度重なる検査の結果、原因は不明だと告げられた。

受けるべき予防接種も全て受けていた。親として出来ることは全てやっていたと認識している。

もはや交通事故のようなものとして受け止めるしか道もない。

なんでうちの子だったんだと、信じてもいない神に対して恨み言を吐くしかない。

道行く子どもを普通の目で見れなくなった。お前はいいよな、と心の中で思ってしまう汚い自分がいる。

救急車で搬送されたあの日から半年が経とうとしている。息子の誕生日よりも忘れられない日になった。

愛する息子であることに変わりはない、変わりはないはずなのに、 わずか2歳の息子に対して"以前"と"以後"というラベルをつけてしまう自分がいる。

「以前はご飯よく食べてたのにね」「以前は一緒に歩いてお買い物に行ってたのにね」

いまだに全く消化できておらず、以前の写真や動画を見るだけで涙が出る。それでもそこにしか元気な息子はいない。もっと動画を撮っておけばよかったと心から後悔している。

いま、目の前には転がるしか出来なくなった息子が転がっている。

楽しくお話していたあの子はもういない。

わずか2年でたくさん出来ることもあったしこれから先にもどんどん成長していったはずの姿を見ることは叶わず、地道にリハビリをして、何年かかるかもわからないが、2歳の頃の息子に追いつくのが目標となってしまった。

"普通"の大人になれるかどうかすらわからず、将来の選択肢もきっと大幅に狭くなっただろう。

失って気付く、"普通"がどれだけありがたいことか。



それでも一番辛いのは決して私ではなく息子だということを忘れない。

家族で身を寄せ合って頑張って生きていくしかない。

  • わぁ…これは辛い。辛い。こういう事書くのも差別みたいな、自分の正義マン!みたいな人がいるから、表には書きにくかったんだろう。辛いなぁ…なにかいい事を見つけていくしか無...

  • 飯がうまい

  • どうか幸せになってくれ…

  • 落ち込むの早すぎやしませんか 10年後 どれだけ発展してるか 20年後なら? 低酸素脳症に幹細胞 新生児対象 投与治験へ 名古屋大 https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202001/CK202001310...

    • 自分も原因不明の後天的障害を負ってそういう医学やら技術の進歩に夢を見てたから言うけど、 研究自体は報じられても全然実用化されなかったり その間により見栄えのする研究ばかり...

      • じっさいに進歩したのは「生まれる前に障害が分かる」というスクリーニング技術の方だったね。 そしてそっちの方が需要が高い。 いったん「なってしまったもの」を治すという研究に...

  • リハビリに詳しい増田いたよな。出てこいよ。

    • 原因が「筋肉が落ちた」のではなく「脳症」だからね 現実の医療レベルがネットより低いはずとおもいこむのやめなね

  • リハビリに詳しい増田いたよな。出てこいよ。

  • > それでも一番辛いのは決して私ではなく息子だということを忘れない。 そんなことないよ。全然ないよ。つらいよね。ほんとつらいよね。 つらさは家族だって一緒だよ。 画面の反対...

  • ぶっちゃけ、親が若くて面倒を見ていられる間はたいしたことないねんて。 本当の苦悩はその先にある。 親の老い先短くなってきて、いったい誰がこの子の面倒をみるん? となったと...

  • これはいい増田。 頑張ってほしい。

    • どのあたりがいいのさ

      • 不満・不遇を他人に擦り付けようとしないあたりが、潔くてよいと思う。 ホントはそういうこと言いたいところもあるかもしれないけど、その気持ちを表に出さないというのが出来る人...

  • ガイジの子が順当にガイジになったな

    • おい、許しがたいぞ 自分が書いたのを百遍読み返せ

      • 人にものを頼むなら態度ってものがあるでしょ

        • 頼んでないけど。お前と俺が対等とか勘弁してくんないかな。ちゃんと義務教育受けた?

  • おれには何もできないけど、あなたが少しでも幸せになってほしいと思うよ。

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