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インフルエンザ関連死亡迅速把握システムについてのQ&A

国立感染症研究所 感染症疫学センター
(2020年5月24日掲載)

 

感染研のホームページに公開中のインフルエンザ関連死亡迅速把握システムについて、お寄せいただいた質問に回答します。

Q.超過死亡とは何ですか?

A. 毎年冬になると季節性インフルエンザの流行により、主に高齢者で死亡者数が増えます。しかし全員がインフルエンザの検査を受けているわけではなく、また死亡診断書にはインフルエンザの結果として発生した他の病気(例えば肺炎)が死因として記録されることがあるため、インフルエンザの流行によって生じたで死亡者数を正確に数えることはできません。そこでインフルエンザが流行していなかったと想定したときの死亡者数(総死亡者数や肺炎死亡者数)と範囲を統計学的な手法を使って推定し、実際の死亡者数と比較することでそのシーズンのインフルエンザによる死亡者数を推定したものが「超過死亡」です。推定方法にはさまざまなものがあります。

Q. インフルエンザ関連死亡迅速把握システムとはなんですか?

A. 一般に超過死亡は冬が終わってから計算されます。インフルエンザ関連死亡迅速把握システムは、わが国の超過死亡をシーズン中からリアルタイムで推定することを目的として、平成11年から厚生労働省結核感染症課の事業として実施されています。毎年12月1日から3月31日までの期間(入力は5月末まで)、全国の政令指定都市および特別区で行われています。

Q. どうやって情報を集めているのですか?

A. その週に届け出があった死亡診断書の死因欄にインフルエンザあるいは肺炎(病原体不問、飲食物が肺に入って生じた肺炎除く)の記載がある人数を、対象地域の各保健所が入力し、それを国立感染症研究所で解析して公表しています。なお、対象地域のすべての保健所が入力をしているものではありません。

Q.毎週、「実際の死亡数」が変化しているように見えるのはなぜですか?

A.複数の保健所がある地域の場合、入力のタイミングがばらばらなので、入力された死亡数の平均値から地域全体での死亡数を推測して「実際の死亡数」として評価しています。そのため、時間の経過に伴い保健所からの入力が進むにつれ、「実際の死亡数」の値が増減することがあります。通常はシーズンが終わった5月以降に最終の数が確定します。

Q.図の「ベースライン」と「閾値」の意味を教えてください。

A.図の「ベースライン」は、インフルエンザが流行していなかった場合に想定される死亡数、「閾値」はその起こりうる範囲を意味しています。なお「ベースライン」と「閾値」は前シーズンまでのデータに基づいて計算されるため、毎年変化します。

Q.「実際の死亡数」が「閾値」を超えると何が言えますか?

A.「実際の死亡数」が「閾値」を超えると超過死亡が発生した、つまりインフルエンザが流行しなかった場合に想定される死亡数を上回る死亡が発生したと判断されます。

Q. 2019-2020年シーズンの傾向について教えてください。

A. 全国の対象都市の合計ではシーズン中の「実際の死亡者数」が「閾値」を超えることはなく、超過死亡は観察されませんでした。

Q.  2019-2020年シーズンは東京で超過死亡が発生しているように見えます。

A. このシステムでは、東京では過去3シーズンにわたって超過死亡を認めています。2019-2020年シーズンも東京で超過死亡が観察されていますが、「実際の死亡数」は過去3シーズン並みか、やや低い傾向にあります(図)。

図.2016-2017年シーズンから2019-2020年シーズンの東京の死亡数

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Q.このシステムで新型コロナウイルス感染症の影響を評価することはできますか?

A.新型コロナウイルス感染症の流行により、超過死亡が発生する可能性はあります。しかし本事業は毎年冬に流行するインフルエンザを想定して長年にわたって運用されているシステムです。本事業で新型コロナウイルス感染症による超過死亡への影響を評価することはできません。

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