新型コロナウイルスに感染し、回復するまでの経験を語った男性。スマートフォンに届いた知人の励ましが支えになったという(京都市内)

新型コロナウイルスに感染し、回復するまでの経験を語った男性。スマートフォンに届いた知人の励ましが支えになったという(京都市内)

 新型コロナウイルスに感染して退院した京都市南区の男性(67)が、13日までに京都新聞社の取材に応じ、命の危険を感じた2週間余りの闘病生活を語った。男性の感染ルートは今も分かっておらず、「誰でも感染の恐れがあると痛感した」と予防の重要性を訴えている。

 男性が最初に体の異変を感じたのは4月4日朝。血圧の数値が上がり、近くの診療所に行った。処方された血圧降下剤を飲んでいったん症状は落ち着いたが、夜になると発熱と足腰の関節痛がひどくなり、下京区の救急体制のある病院に向かった。
 コンピューター断層撮影(CT)検査を受けると肺炎が見つかり、すぐに新型コロナウイルスに感染しているか調べるPCR検査を受けた。
 「肺炎と分かると医師の態度が急変し、こちらが動揺した」

■高熱と息苦しさ続くも、入院できず

 男性(67)はその後、検査結果を待つため、いったん帰宅した。
 翌4月5日、市や病院から連絡はなかった。不安な気持ちが抑えきれず、6日は朝から市に3回も問い合わせた。夕方、市保健所から「陽性」との結果の連絡が来た。男性は入院を強く希望したが「20人以上も待っている人がいる。すぐに入院できない」と電話を切られた。「どうしよう。放置された」。息苦しさと高熱は続いており、時間の経過とともに不安が募った。
 7日に「入院先の病院が決まった」との連絡があり、全身防護服を着た職員2人が、内部を透明のカーテンで仕切ったワゴン車で自宅に迎えに来た。
 向かった先は西京区の病院。ようやく入院できたが、症状は悪化した。熱は39度台に上がり、鼻に酸素吸入器を付け、治療の効果があるとされる抗インフルエンザ薬「アビガン」などの薬を数日飲んだ。朝は平熱でも夕方に高熱が出る日が4日間ほど続き、「背中や腰、関節が痛く、体がバラバラになったような感覚だった」という。
 ベッドに横たわっていると自分より若い人が新型コロナで命を落としたニュースを思い出し、「ひょっとしたら死ぬかも」と何度も思った。それでも、知人が送ってくれた「良くなると信じている」といった励ましのメールを心の支えとし、回復のために頑張って食事を取った。

■「どこで感染したのか」今も分からず

 入院から10日ほどすると症状は改善し、京都府が回復期や軽症の人を受け入れる京都平安ホテル(上京区)に移動して過ごした。2度のPCR検査で陰性となり、ホテルを出たのは21日。入院・療養生活は計15日間にわたった。
 男性は府南部の福祉作業所に勤務している。行動歴や接触者を確認する保健所の疫学調査に回答し、同僚や利用者らもPCR検査を受けたが、陽性者はゼロ。「どこで感染したのか」との思いは今も消えない。
 マラソンが趣味の男性は「体力に自信があり、新型コロナは軽い病気と思っていた」と振り返る。しかし、病床で医師や看護師らが未知の感染症への対応に苦慮する様子を目の当たりにした今、「生死に関わる病気。検査態勢の充実と医療従事者への支援を手厚くしてほしい」と強く願っている。