[新型コロナ] 米国 コロナ禍の農家支援開始 直接支払い 160億ドル
2020年05月24日
米国農務省(USDA)は、新型コロナウイルスの影響を受けた農家を支援するコロナウイルス食料支援プログラム(CFAP)を始める。総額160億ドル(1ドル約108円)を投入し、価格下落や物流停滞で生じた損失を直接支払いで支援する。26日から農家の申請を受け付ける。
CFAPは、1月中旬から4月中旬までに価格が5%以上下がった品目に適用される2方向からの支援だ。……
価格下落と 滞貨に対応
CFAPは、1月中旬から4月中旬までに価格が5%以上下がった品目に適用される2方向からの支援だ。……
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2020年05月24日
コロナと農村交流 自粛時こそ関わり維持
経験したことのない全国規模の外出自粛は、田園回帰の流れや都市農村交流にどんな影響を及ぼすのか。詳細な動向調査や分析が待たれる。地方の側が呼び掛けた来訪自粛要請の副作用がこの先出ないかも心配だ。アフターケアをしておきたい。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、想定外の人の動きが起こった。東京などの大都市から地方、農山漁村に向かう「コロナ疎開」である。5月の大型連休を前に「今は来ないでください」と、自治体の首長が訴えたのは記憶に新しい。有名観光地にとどまらず、普段はめったに人の来ない農山漁村でも来訪自粛現象が見られた。
これが感染防止のためという趣旨は十分理解できる。ただ、外出・移動自粛が段階的に解除され、地方との往来が自由にできるようになった暁に、呼び掛けられた人たちはすんなり地方に足を向けるものだろうか。ここは、都市農村交流への後遺症が出ないよう、アフターケアやリハビリが大事になる。
農山漁村の活性化にとって、外から人を呼び込むのは重要な政策手法だ。温泉、農業体験、農家民宿、グリーンツーリズム、近年の訪日外国人(インバウンド)、田園回帰、半農半X、二地域居住、関係人口などさまざまある。こうした取り組みに今回の自粛が水を差してはならない。移動に制約がかかる今こそ、関わりを維持する「心の交流」を働き掛けたい。
参考事例は多い。緊急事態宣言の下、都市と農村、生産者と消費者との間で非接触型の交流が行われてきた。成果を挙げたのは「飛騨牛」の購入型クラウドファンディング。JAや地元金融機関、企業が連携し、5月10日までの12日間で支援者1万人、1億1000万円もの資金を集めた。文化人や芸能人が呼びかけた小規模映画館の救援クラウドファンディングは1カ月で3億円超を集めて話題を呼んだ。そのサプライズが農業分野でも起き得ることを実証した形だ。
訪問できない都市住民に農業の様子を動画で伝えるといった試みも各地で広がった。一ひねり加えたサービスを考案したのは広島県三次市の平田観光農園だ。イチゴの摘み取り作業の動画とネット販売を組み合わせた「巣ごもりいちご狩り」を始めた。帰省したくてもできない都会在住の若者を古里の味で励ます試みもあった。新潟県燕市は新潟県外の学生に米5キロと手作り布マスク1枚を贈った。同様の取り組みは富山県や新潟県長岡市、茨城県大子町などでもあり、インターネット交流サイト(SNS)で「あったかくてすてき」と話題になった。
移動できないからと諦めてはいけない。今はSNS、動画、オンライン会議など手法に事欠かない。それは苦手という人は手書きの手紙を送れば、ネットよりもっと効果があるかもしれない。自粛中でも関わりを追求する姿勢は、解除後の交流活動に良い効果を与えるだろう。
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2020年05月20日
[新型コロナ] 都会の学生へ 特産品支援 全国で 古里見直す契機に 相次ぐ感謝
新型コロナウイルスの影響で帰省を自粛する、地域外に住む学生に地元米を送る農山村の支援が全国に広がっている。「離れていても応援している」「共に苦境を乗り越えよう」というメッセージとなじみのある特産品や農畜産物を発送。新潟県燕市発の心のこもった応援が大きな反響となり、学生が古里や地域農業を見直すきっかけにつながっている。
同市は4月10日に、帰省できない学生らに地元の米やキュウリ、みそなどの発送受け付けを始めた。支援を考案したのは地元有志ら。インターネット交流サイト(SNS)で話題となり、全国的なニュースとなった。
同市発の支援は多数の農山村に波及している。茨城県では神栖市、茨城町、笠間市などが、県外に住む学生らを勇気づけようと米「コシヒカリ」などを届ける。常陸太田市は米やニンジン、タマネギなど地元の食を詰め込んだ応援物資を学生に送り、市には感謝のメールが届いている。
新潟県では、燕市以外にも支援が広がる。村上市は「あなたにまごころ届け隊」として、米の食味ランキングで「特A」に復活した地元産「コシヒカリ」と、村上牛など特産品50品目の中から選んだ1品などを届ける。市には「(帰省できなくても)古里を感じられる」など300件近い感謝の声が届く。柏崎市でも菓子を送り始めた。
三重県では松阪市、志摩市などが「コシヒカリ」などの地元の農作物や加工品を地域外の学生らに発送。松阪市は「古里の香りを感じていただき、元気をつけてほしい」などのメッセージも同封した。
長野県は高森町、佐久市、伊那市、大町市といった多数の自治体が取り組む。飯島町は、町民の考案で、農家複数人が米5キロを寄付し、精米や荷造りは町内の農業法人「田切農産」が無償で協力する。地元の人が作ったわら細工のストラップやメッセージなども同封し、町が送料を負担。地域ぐるみの応援物資を発送中だ。南牧村は県外に転出した新社会人にも送る。
鳥獣害対策に力を入れる島根県美郷町は、米やイノシシ肉のキーマカレーを県外の学生に届ける。熊本県南小国町も町出身の学生に米や野菜、ヨーグルト、漬物などに家族からのメッセージを添えて送る。この他、山形県米沢市や岡山県津山市、香川県三豊市、鹿児島県出水市、富山県など全国に支援の輪が広がる。
発端となった燕市の鈴木力市長は「心細い学生に『帰るな』と言うのはつらい。『会えなくてもどんな時も応援している』と伝えようと始まった市民発の支援が、全国のモデルになった。国難だからこそ都市と農村の共生を見据え、関係を深めたい」と強調する。
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2020年05月21日
[新型コロナ][届け!エール](8) 坂本冬美さん 希望捨てず また笑顔で
新型コロナウイルスの感染拡大で、大変な思いをしながら食を支えている農家やJAの皆さまに「本当にありがとうございます」と伝えたいです。これまで全国津々浦々を周り、取れたてのトマトやジャガイモなど産地のものをたくさんいただいてきました。
そんなことを思い出し、全国に行けない自粛生活の中で家庭菜園を始めました。キュウリ、トマト、ナス……。毎日、本当にいとおしく、芽が出たかな、大きくなったかなと見つめています。苗からではなく、種から育てています。農家の皆さまが朝早く起きて農作業、草刈りや虫対策をしているから食事がいただけることに思いをはせるきっかけになっています。古里は和歌山県。台風被害に毎年苦しみますが、果樹農家は苦境を乗り越えて収穫を迎えます。コロナ禍で明日が見えない農家も多くいらっしゃると思いますが希望を捨てないでください。
今の状況が改善すれば新曲「俺でいいのか ギターバージョン」を発売します。「苦労を掛けるけれど俺に付いてきてほしい」という歌に込められたメッセージは家族農業の農家に共感してもらえるはずです。動画配信サービス「ユーチューブ」も始めました。気軽に見ていただき、少しでも明るくなってほしいです。
食べることが一番大切な今、国産で食が自給される大切さを感じます。農家やJAの皆さまと、笑顔で会える日が来ると信じています。(歌手)
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2020年05月21日
[新型コロナ][届け!エール](7) 加藤登紀子さん 「農は不可欠」伝えたい
次から次と困難が押し寄せて来ますね。昨年の台風被害からまだまだ立ち直れない中で起こった新型コロナウイルス。外国人観光客の減少に始まり、国内の外出禁止、学校の休校などで農産物の消費が減って農業はまさに今、正念場といったところでしょうか。
その上に人材不足で生産や収穫などに影響が出ている地域があるとか。それでもスーパーマーケットなどで野菜が豊富に並んでいるのを見ると、ホッとして感謝の気持ちでいっぱいになります。これがやっぱり元気のもとですから。
経済が低迷する中でも一番必要なのは食料確保です。その意味でも今こそ日本の農業をしっかり支えていかなければ。混乱で仕事をなくした人たちにも農業こそが必要不可欠、最も将来性のある仕事であることを伝えたいし、日本の豊かさを示す最良の仕事として興味を持ってほしいです。
私の次女Yae(やえ)は歌手の仕事をしながらも私の夫、故・藤本敏夫の残した千葉県鴨川市の農場を継ぎ、夫と3人の子どもとの生活に充実感をもらっている、と言っています。今後も農のある暮らしを大切に歌手活動も頑張ってほしいと願っています。農業の現場と都市の人たちをつなぎ、しっかり日本の農業を応援していきます。皆さま、どうぞ頑張ってください。(シンガーソングライター)
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2020年05月19日
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2020年05月24日
[新型コロナ] 技能実習生 コロナ禍で出国できず 在留延長の申請進む
新型コロナウイルスの感染拡大で、出国が困難になった外国人技能実習生の在留期間を延ばす制度の運用が始まっている。各地のJAや監理団体は、任期後も実習生が引き続き残れるよう手続きに着手。実習生は就労可能な資格を一時的に得て日本に残れるようになった。福岡県のJAみいは双方を支援するため、延長中の賃金支払い方法などで相談に乗る。(三宅映未、中村元則)
「特定活動」手続き支援 福岡・JAみい
JAみい管内では約100戸の農家が400人前後(3月時点)の実習生を受け入れている。フィリピン、ベトナムがほとんどだ。
実習生が管内で最も多い久留米市弓削地区。小松菜などを1・4ヘクタールで生産する手嶋忠広さん(58)の畑ではフィリピン人の実習生5人が学ぶ。そのうちの一人、シェーン・メイ・ガルベーズさん(28)は3月25日に3年の在留期間を終え、帰国する予定だった。しかし、新型コロナの感染拡大でフィリピンは日本からの入国を停止。帰国のめどが立たなくなった。
手嶋さんは、実習生の監理団体を通じてシェーンさんの「特定活動」の申請を提出。申請が通り、シェーンさんは4月24日から働き始めることができた。「働けて良かった」とシェーンさん。
手嶋さんは「仮に帰国しても今は現地で働く場がないと聞く。それならここで働いてもらったほうが良い」と説明する。就労資格が得られるまで、手嶋さんは1カ月分の賃金相当の額を自費でシェーンさんに渡した。 5月上旬は小松菜の収穫作業の最盛期に当たる。午前中だけで1人当たり120~130ケース(1ケース4キロ)分の収穫、調製作業がある。一人でも働き手を欠くと、負担が増える。手嶋さんが実習生の受け入れを始めたのは約8年前。家族やパート従業員もいるが「実習生がいなかったら今の面積の3分の1も生産できない」と話す。
実習生の受け入れや監査を担う監理団体・福岡アグリ協同組合(同県大刀洗町)では、15人の実習生が新型コロナの影響で任期を終えても帰国できていない。いずれも「特定活動」の申請を進め、就労しながら帰国時期を待つ。同組合は「いつ収束するか分からない。受け入れる農家と連携しながら、必要な手続きを進める」と説明する。
JAでは青色申告の担当部署が実習生関連の相談に対応する。手嶋さんのケースでは、シェーンさんの帰国時期が未定のため、残りの期間は時給制にするよう助言した。手嶋さんの他にも実習生の任期を延長した農家から、連絡や賃金関係の相談が寄せられている。
営農企画課の増原修一係長は「関連する相談は今後増えると想定している。関係機関から情報を集め、対応を進めたい」と話す。
帰国するまで受け入れ 茨城県エコ・リード
茨城県ではベトナム人や中国人など6378人(昨年10月末時点)の技能実習生が農林業に従事する。JA茨城県中央会が主導して設立した協同組合エコ・リード(水戸市)は、県内でベトナムや中国、タイなど398人を受け入れる。
このうち県西地区で実習を受けていたベトナム人の男性3人が3年の在留期間を終えて、今月20日に帰国する予定だった。しかし、現時点でベトナムは全ての国からの入国を停止しており、帰国できなくなっている。
新たな技能実習生の来日もできない状況で、農家からは3人の残留を求める声が上がっていた。このためエコ・リードは在留資格の変更に必要な書類を作成し、東京出入国在留管理局水戸出張所に提出。3人は就労可能な資格「特定活動」(6カ月)を得て、受け入れ先の農家で就労するという。
エコ・リードによると7月にも帰国する実習生がおり、「出入国の状況次第で対応を考えないといけない」(担当者)としている。県中央会によると、県内のJA関係の監理団体で受け入れる実習生のうち、帰国できず「特定活動」に在留資格を変更した実習生は11日時点で9人。中央会は「帰国できない状況が続くようであれば、今後も特定活動に変更する実習生が増えそうだ」としている。
<メモ>
出入国在留管理庁は3~6月に在留期間の満了日を迎え、新型コロナウイルス感染拡大の影響で帰国が困難な実習生に対し、「短期滞在(90日、就労不可)」か「特定活動(就労可)」への在留資格変更を受け付けている。影響の長期化を受け、今月20日からは、「特定活動」での在留可能期間が当初の3カ月から6カ月に延びた。20日以前に延長申請をした実習生についても再申請できる。
国は4月下旬から、雇用先の経営不振などで雇い止めになった実習生に対し、希望職種への再雇用支援も始めた。農業関連は農水省に情報を集約し、JA全中などを通じて監理団体やJAなどに情報を送り、マッチングを促進する。
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2020年05月23日
[新型コロナ][届け!エール](9)のんさん 離れていても心は共に
映画「この世界の片隅に」に出演して食や農業への興味、関心が高まり、時間のある時に少しずつ自炊をしていましたが、コロナによる自粛生活で回数が増えました。私の第二の古里は岩手と思っています。JA全農いわての宣伝部長でもあり、岩手のお肉やお米は意識することが多いです。CMに出演している「いわて純情米 銀河のしずく」は元々食べていたのですが、先日買い足しました。今の元気のもとです。
私の行くスーパーには、野菜の袋に農家の名前や似顔絵が書いてあり、陳列される野菜やお米を見ながら農家の方を思い浮かべています。全国各地で毎日、毎年、どんな時も頑張っている農家の方がいるから、食べることができるんだと思います。スーパーで、岩手県産を見つけるとうれしい気持ちになります。
コロナの影響で農家が大変な状況にあると思います。私の想像では計り知れないような苦労をたくさんされていると思います。おいしい食事をできるのは農家のおかげ。ありがとうという感謝でいっぱいです。
行動が制限され、ストレスがたまり、思うようにいかない状況だからこそ、助け合いを大切にしたい。実際に手を取り合うことはできなくても、離れていても心を通わせたい。心の距離を縮めて、前に進んでいきたいです。(女優)
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2020年05月23日
[新型コロナ] 緊急事態 近畿3府県で解除 飲食店、民泊は“新たな形”模索
政府は21日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合を首相官邸で開き、流行が落ち着いたと判断した京都、大阪、兵庫の近畿3府県での緊急事態宣言の解除を決めた。埼玉、千葉、東京、神奈川の首都圏4都県と北海道では宣言を継続する。25日にも専門家会議の評価を聞き、解除の可否を判断する方針だ。
近畿3府県では、農家レストランや農家民宿など人を呼び込んできた農業経営者らが新たな形で経営を始めた。同日は39県で解除され1週間がたったが、にぎわいは戻らない。それでも、テークアウトやドライブスルー方式など、新たな一歩を模索する。
大阪の農家レストラン 3密避けもてなし
大阪市で2店舗の中華料理店「農家厨房」を営む農家の大仲一也さん(54)が、自身で収穫したニンジンや豆類、ジャガイモなど野菜が10種類入った温野菜を蒸す作業を黙々と続ける。3府県の緊急事態制限が解除されたことを受け、「今ならまだ間に合う」と大仲さんは話す。
今週からアルコールを提供する夜の部門を再開。初日の19日の客はゼロだったが、21日はテラス席に予約が入った。店内には22席あるが、3密(密集、密閉、密接)を避け、間隔をできるだけ広げて席数を減らすことも考える。消毒を小まめにし、テークアウトメニューを増やす。他の飲食店が工夫する取り組みを研究し「何でも挑戦する。諦めない」という。
売り上げは平年の7割減。現状の稼働率は3割以下で、運転資金が枯渇する恐れが出てきた。それでも大仲さんは、何とか経営を続けられる方法をここ3カ月間、ずっと考えてきた。
大仲さんは「農家が経営する飲食店というのが、店の最大の売り。採れたての新鮮な野菜を蒸した温野菜は他にない。野菜本来の甘さが感じられるから、食べた人は感激する。やめることは考えへんかった」と包丁を握る。畑を耕し田んぼの水管理をしてから出勤する“農家シェフ”の自信が垣間見える。
大仲さんは堺市で米や野菜を1ヘクタール作る。農家だった父が亡くなったことを契機に一流ホテルのシェフをやめ、2009年に起業し農業も継いだ。
健康志向の会社員や地域の高齢者らに人気の店だ。しかし、3月からコロナ禍が直撃。夜の営業はできなくなった。賃貸や光熱費は月100万円近く、従業員の給与もあるため、大赤字だ。融資や助成金などを申請するが、煩雑な書類の対応に追われ、対応窓口の大混雑。ピンチの中、農家厨房のファンだったオーナーが一定期間家賃を半額にしてくれ、常連客からの再開を望む声が大仲さんを支えた。第2波の懸念など先行きの不安は募るが、「3密を避けて集客する」と大仲さんは意気込む。
近場客中心 持ち帰り注力
緊急事態宣言解除でも、すぐに人々の往来が活発になるわけではない。それでも、兵庫県朝来市の「農家民宿まるつね」には、6月から少しずつ予約が入り始めた。今後は「これまでのような交流はできない」と了承した客に来訪してもらう。もともと1棟貸しのため他の人と交わることがなく、感染拡大の危険は低い。今後はインバウンド(訪日外国人旅行者)ではなく、京阪神の客の受け入れが中心となる見通しだ。
夫と経営する黒田真澄さん(55)は「経済活動が少しでも戻るのはうれしいが、不安もある。さみしいけれど、交流を控えめにして経営したい」と胸中を明かす。
1週間前に宣言が解除となった39県でも、まだ学校や図書館などが再開しない地域が多く、休業を続ける農家もいる。
福岡県宗像市の農家レストラン「まねき猫」は現在も休業を続け、6月からは地域の人から予約があれば対応する。経営する農家の岩佐政子さん(62)は「テークアウト向けの加工品を増やしていく。経営は農業が柱。売り上げは落ち込んで厳しいけれど、また頑張りたい」と見据える。
青森県おいらせ町の農家レストランや観光農園、直売所を経営するアグリの里。レストラン部門はビュッフェ形式のため休業、直売所での弁当や総菜の販売に切り替えた。ドライブスルー方式のテークアウトも始める予定だ。観光農園は通路を広げ受け入れる。苫米地義之さん(59)は「宣言が解除されても厳しい状況が長引くことは間違いない。感染予防第一にできることを長期戦略でやるしかない」と強調する。
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2020年05月22日
[新型コロナ] 夏の甲子園中止で農高関係者 頭真っ白、やり切れず
第102回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)が新型コロナウイルスの影響で中止となった。選抜高校野球大会に続き夢の舞台を失った農業系球児や、選手たちを陰で支えてきた農業関係者に戸惑いや落胆の声が広がった。
「まだ子どもたちに何と声を掛けてよいか分からない」とやり切れない思いを吐露したのは、北海道芽室町で小麦やナガイモなどを栽培する畑作農家の村中祐也さん(41)。先の選抜大会に21世紀枠で出場が決まっていた帯広農業高校野球部2年の滉貴さん(16)の父親だ。来年の選抜に向けた秋の公式戦が開かれるか否かの不安も述べつつ「新しい代の部員たちは、3年生の分も頑張ってほしい」と話した。
同校は、選抜の中止が決まってから約1カ月後の4月8日に全体練習を再開したが、同18日から再び休校となり、全体で集まれない状況が続いた。選手たちは6月27日から始まる地方大会に向け、各自で自主練を続けていたが一転、春に続き甲子園への道が断たれる結果となった。
同校野球部OBで、2017年に主将を務めた幕別町の酪農家、齊藤蓮さん(20)は「とてもかわいそうというのが率直な感想。中止になったが、これまでやってきたことは必ず残る」と後輩たちを励ました。
「頭が真っ白。(夏の)甲子園はやると信じていたのに……」。南部高校(和歌山県みなべ町)野球部で唯一、農業系学科「食と農園科」で学ぶ2年の堺建人選手(16)は肩を落とす。
過去6度の甲子園出場を果たしている同校は昨夏、甲子園出場を懸けた地方大会の準決勝まで勝ち進み涙をのんだだけに今年に懸ける思いは強かった。「無観客でいいから試合がしたい」と代替試合開催を熱望する。
第100回大会で金足農業高校(秋田市)の準優勝に貢献し、現在は東京農業大学(北海道網走市)で野球と学業を両立する高橋佑輔さん(19)は「3回しかチャンスがない夏の甲子園に挑んだ選手は相当な覚悟だと思う。中止になったがここで培ったことは無駄にならない。人生はこれから。次の舞台で悔しさをぶつけてほしい」とエールを送る。
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2020年05月22日
[新型コロナ] 田植え体験中止 児童向けに動画 広島・JA三次
JA三次八次支店はJAの食農教育「ちゃぐりんキッズクラブ」を行う三次市立八次小学校の田んぼで教諭5人とJA女性部八次支部メンバー、支店職員8人で田植えをした。例年は児童が体験するが、新型コロナウイルス感染防止で休校のため、教諭らが田植えを動画で撮影。授業再開後に動画で疑似体験してもらい、秋の収穫を目指す。
昔の農具を使い、一列ずつ苗を植えた。また先行きが不透明なことから、校内でも米作りが学べるバケツ稲を準備した。5年B組の大平宏子教諭は「毎日何気なく食べている食べ物の生産に興味を持ち、課題意識を持って学習に取り組んでほしい。実際の作業を動画を見てしっかり学び、みんなで無事収穫を迎えたい」と話した。
JAは児童がいつでも食農体験ができるよう学校、地域と協力して田植えの準備を進めてきた。女性部の平律香部長は「大変さびしい田植えだった。秋には一緒に稲刈りがしたい」と話した。
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2020年05月22日
[新型コロナ] 都会の学生へ 特産品支援 全国で 古里見直す契機に 相次ぐ感謝
新型コロナウイルスの影響で帰省を自粛する、地域外に住む学生に地元米を送る農山村の支援が全国に広がっている。「離れていても応援している」「共に苦境を乗り越えよう」というメッセージとなじみのある特産品や農畜産物を発送。新潟県燕市発の心のこもった応援が大きな反響となり、学生が古里や地域農業を見直すきっかけにつながっている。
同市は4月10日に、帰省できない学生らに地元の米やキュウリ、みそなどの発送受け付けを始めた。支援を考案したのは地元有志ら。インターネット交流サイト(SNS)で話題となり、全国的なニュースとなった。
同市発の支援は多数の農山村に波及している。茨城県では神栖市、茨城町、笠間市などが、県外に住む学生らを勇気づけようと米「コシヒカリ」などを届ける。常陸太田市は米やニンジン、タマネギなど地元の食を詰め込んだ応援物資を学生に送り、市には感謝のメールが届いている。
新潟県では、燕市以外にも支援が広がる。村上市は「あなたにまごころ届け隊」として、米の食味ランキングで「特A」に復活した地元産「コシヒカリ」と、村上牛など特産品50品目の中から選んだ1品などを届ける。市には「(帰省できなくても)古里を感じられる」など300件近い感謝の声が届く。柏崎市でも菓子を送り始めた。
三重県では松阪市、志摩市などが「コシヒカリ」などの地元の農作物や加工品を地域外の学生らに発送。松阪市は「古里の香りを感じていただき、元気をつけてほしい」などのメッセージも同封した。
長野県は高森町、佐久市、伊那市、大町市といった多数の自治体が取り組む。飯島町は、町民の考案で、農家複数人が米5キロを寄付し、精米や荷造りは町内の農業法人「田切農産」が無償で協力する。地元の人が作ったわら細工のストラップやメッセージなども同封し、町が送料を負担。地域ぐるみの応援物資を発送中だ。南牧村は県外に転出した新社会人にも送る。
鳥獣害対策に力を入れる島根県美郷町は、米やイノシシ肉のキーマカレーを県外の学生に届ける。熊本県南小国町も町出身の学生に米や野菜、ヨーグルト、漬物などに家族からのメッセージを添えて送る。この他、山形県米沢市や岡山県津山市、香川県三豊市、鹿児島県出水市、富山県など全国に支援の輪が広がる。
発端となった燕市の鈴木力市長は「心細い学生に『帰るな』と言うのはつらい。『会えなくてもどんな時も応援している』と伝えようと始まった市民発の支援が、全国のモデルになった。国難だからこそ都市と農村の共生を見据え、関係を深めたい」と強調する。
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2020年05月21日
[新型コロナ] 買い物代行タクシー奔走 食料、日用品… 薬も受け取りに
外出自粛で高齢者の利用多く
新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛を受け、地方では異業種による買い物代行サービスの取り組みが広がっている。コロナ禍で本業が苦戦しているタクシー会社が参入し、外出を控える消費者に代わり、食料や日用品を購入し、自宅まで届ける。高齢者を中心に利用が多く、“買い物弱者”を生み出さない地域の暮らしを支える手段として注目を集める。
地域のため「救援事業」 介護施設からも依頼
広島県福山市のアサヒタクシーは「お買い物代行サービス」を4月13日に始めた。利用者は電話で買い物内容やスーパーなど指定店舗を伝える。代金は運転手が立て替え、代行料は660円から、店舗から届け先までのメーター料金に準ずる。
対応するのは、離島を除く市街地から農村部まで含む市内全域。利用者の住む地域は広範囲に及び「会社から12キロ離れた遠方からの利用もあった」と川本直則広報担当。利用は徐々に増えており、今は1日平均30件。介護施設からの食材購入依頼もあるという。
コロナ禍で、4月の売り上げは前年同月に比べ5割ほど落ち、保有車両230台の半数しか稼働していない状況だ。
買い物代行料は、通常のタクシー利用料に比べると利益は少ない。それでも、川本担当は「厳しいが、救援事業という形で地域住民のために続ける」と話す。
市内に住む川本英子さん(71)は1週間に1、2回利用する常連だ。以前は買い物に出掛けていたが、外出を控える今は代行サービスに頼る。
買い物は、自宅から2キロ離れたスーパーで食材の購入を依頼し、「料金は高いと思わない。感染リスクを考えると、買い物して届けてもらえるから、本当にありがたい」と話す。
高齢化が進み、人口の約4割を65歳以上が占める山形県白鷹町。同町の朝日観光タクシーは買い物代行を15年前に始めたが、これまでの利用者はほぼいなかった。だが新型コロナの影響で高齢者の利用が相次ぎ、5月1日から12日までに5人が利用した。
同社は高齢者支援の需要を感じ、病院から薬を受け取る代行サービスも始動。「慢性疾患で定期的に薬を受け取る必要がある」といった悩みを反映させ、国土交通省に許可を取り、1日から始めた。
利用者は電話で病院を指定し、病院にも連絡を入れる。料金は1キロ以内830円で、1キロ延びるごとに450円加算。薬を受け取った後、電話か、オンラインで薬剤師に服用の指導を受ける。
高橋政浩取締役総務部長は「高齢者は重症化のリスクが高いため、なるべく外出の機会を減らしたい」と説明する。
飲食店と連携 企業に昼食 配送料を負担 北海道室蘭市
北海道室蘭市は14日から、タクシー会社が市内の飲食店から企業に弁当を配達する際の配送料を全額負担するサービスを始めた。コロナ禍で打撃を受けたタクシーや飲食業界双方の経営を支援する。
新たなサービスは「RanEats(ランイーツ)」。昼食時に注文金額が1万円以上か10食以上の注文が対象だ。市はタクシー会社に、1回の依頼で飲食店を1店舗だけ経由する場合は2500円、2店舗を経由する場合は5000円を、距離や時間に関係なく一律で負担する。市内を端から端まで走っても3000円程度で赤字になることはなく、メーターを回さない「救援事業等」として実施する。
同市は参加する飲食店を公募、リスト化しホームページに掲載する。注文する企業は飲食店とメニューを決め、指定の市内タクシー事業者(現在は5者)へ2日前までに注文内容や配達日時などをファクスで連絡する。タクシー事業者が飲食店で弁当の代金を立て替えるなどし、配達時に料金を回収する仕組みだ。リストには26店が掲載されており、今後増やしていく。
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2020年05月21日
[新型コロナ] 農作業を大学生が応援 人手確保に一役 JAふくしま未来 職業紹介所など
JAふくしま未来と包括連携協定を結ぶ福島大学は20日、繁忙期を迎える果樹農家の援農活動を始めた。学生20人が果樹農家6人の下で活動する。JAは、コロナ禍で労働力不足の農家と経済面で不安を抱える大学生を全面的にサポートする。6月下旬まで続ける予定。援農を希望する福島市と伊達市の果樹農家を、JA無料職業紹介所とJAの子会社「みらいアグリサービス」が取りまとめた。
JAは、就労を希望する学生を仲介あっせんすることで、農業の労働力確保と学生の就労要請に対応する。また、圃場(ほじょう)までの移動手段や昼食代の一部支援を行い、利便性と経済的負担もサポートする。給料は時給制で、活動終了後に支給される。
今回は桃とリンゴ、梨、ブドウの4品目で、摘果や袋掛けなどの作業に当たる。営農指導員が援農の技術指導を行い、農家の負担を軽減する。伊達市で桃1・2ヘクタール、リンゴ1ヘクタールを栽培する鈴木聡さん(59)は「面積も増えてきたので、人手が増えて助かる」と話す。
岡山県出身で福島大学1年の金城龍蔵さん(20)は「アルバイトができないのでうれしい。農業も学べるので役に立てるように頑張りたい」と意気込む。
同日、福島市の北信支店で開いた出発式には、学生やJA役職員ら36人が出席。菅野孝志組合長と小山良太教授があいさつ。研修会では、JAの担当者が桃とリンゴの摘果を説明した。
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2020年05月21日
[新型コロナ][届け!エール](8) 坂本冬美さん 希望捨てず また笑顔で
新型コロナウイルスの感染拡大で、大変な思いをしながら食を支えている農家やJAの皆さまに「本当にありがとうございます」と伝えたいです。これまで全国津々浦々を周り、取れたてのトマトやジャガイモなど産地のものをたくさんいただいてきました。
そんなことを思い出し、全国に行けない自粛生活の中で家庭菜園を始めました。キュウリ、トマト、ナス……。毎日、本当にいとおしく、芽が出たかな、大きくなったかなと見つめています。苗からではなく、種から育てています。農家の皆さまが朝早く起きて農作業、草刈りや虫対策をしているから食事がいただけることに思いをはせるきっかけになっています。古里は和歌山県。台風被害に毎年苦しみますが、果樹農家は苦境を乗り越えて収穫を迎えます。コロナ禍で明日が見えない農家も多くいらっしゃると思いますが希望を捨てないでください。
今の状況が改善すれば新曲「俺でいいのか ギターバージョン」を発売します。「苦労を掛けるけれど俺に付いてきてほしい」という歌に込められたメッセージは家族農業の農家に共感してもらえるはずです。動画配信サービス「ユーチューブ」も始めました。気軽に見ていただき、少しでも明るくなってほしいです。
食べることが一番大切な今、国産で食が自給される大切さを感じます。農家やJAの皆さまと、笑顔で会える日が来ると信じています。(歌手)
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2020年05月21日