声なきけものの慟哭   作:ケイド6.5

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けものフレンズ2が低評価されるのみならず不当に叩かれまくってていっぱい悲しいし、叩けばいいコンテンツと見なされて最低限の創作の体裁すらなされていない作品も出回り始めてきてムカついたので書き上げた作品となります。

私自身は一期も二期も好きだということに変わりはないですし、けものフレンズの世界は思ったよりも壮大なもので一期や二期だけを見ても全容を掴むことはできません。
というわけでみんな、アンソロやガイドブック、そして旧アプリ版の動画もチェックしてみよう! なんならさわりだけでもチェックするだけでもいい、とにかくたくさん調べて君だけのここすきを見つけるのだ。きっと新たな発見があるはずだぞガーディアン!

ただし2に悪意しかないだの地獄説だの叫んでる連中、テメーらはダメだ。こちらからお断りだ。


序:こえのないけもの/けものののろい

私は、フレンズになれなかった。 いや、正確に言うならばフレンズでも動物でもない、中途半端な存在となってしまった。

いつからこうなったのかは分からない。気がついた時にはヒトによって縛られ、観察されていた。

しかしヒトは私を縛ってなお、私を案じてくれていた。

狭苦しくはあれども食事も出たし、ヒトは私によくしてくれた。

 

だがしかし、いつしかヒトは姿を消した。 私を残したまま。

私は困惑した。 ヒトや他のフレンズのように私は話すことができなかったし、ただあの狭苦しい部屋に残されるだけとなった。

 

最初は待ち続けた、きっといつかヒトが戻ってくるのではないかと。 しかし私がどれだけ待ってもヒトは戻ってくることはなく、時が経つに連れて孤独と寂しさが勝るようになった。

もしかすると、このパークで残っているのは私だけかもしれないーーそんな気もした。

 

どれだけの日数が経ったかは分からないが、ある日私はこの部屋から外に出てみようという衝動に至った。

ヒトが戻ってくるという私の考えは次第に消え行き、せめてパークが、外の世界がどうなっているのか見てみたいという考えが生まれた。

 

扉は相変わらず閉じられていたが、私は力を入れて扉を殴り付けた。

扉は容易く吹き飛び、外の世界への道は存外容易く開かれることになった。

 

私は光と風に導かれるまま、遂に外の世界に出た。

風と土の香り、太陽の日差し、風の音……最初に部屋に閉じ込められた時以来見ていなかったパークの風景の一つに、私は内心から沸き上がるものを覚えた。

外の世界に出た私はパークのフレンズを探すべく探索の旅に出ることにした。

ただ一人でパークをさ迷い歩く中、私はフレンズがセルリアンに襲われているのを見た。

セルリアンはかなり大型で、私が最初に叩きのめした時のヤツよりもデカかった……私はすぐに彼女を助けに行こうとした、だがその時、私の体に異常が起こり始めた。

 

体の奥からサンドスターと共にどす黒い何かが沸きだしてくるのを感じた。

 

殺せ、敵だ。

 

狩れ、敵だ。

 

戦いを楽しめ、敵だ。

 

その力を存分に活かせ、敵だ。

 

お前は「獣」、本能に身を任せろ。

 

まるでもう一人の自分が体の奥から語りかけるような感覚を覚えた。

そして私はその言葉に抗うことはできなかったーーその言葉を聞くたびに何故か心地よささえ覚えてしまったからだ。

そしてそれを皮切りに、私は「けもの」から「獣」となるーー最初の時と同じように。

 

 

「■■■■■■■■■■――!!!」

 

 

私は吼え、全身の力をバネにして大地を蹴り大型セルリアンへと駆け出す――狙うはセルリアンの弱点である「へし」、あるいは目玉の中心だ。

セルリアンは触手を繰り出してくる、だが私はその触手を爪で引き裂きながらセルリアンの懐まで肉薄し跳ぶ。

そして、私は手に力を込めてセルリアンの眼球に爪を突き立てた。

 

 手応えはあった、セルリアンは小気味よい音を立て色とりどりの光る結晶となって砕け散る。 だが、私はそれで終わらなかった。

 私の高揚感はまだ終わらなかった……そして同時に更なる狩りへの渇望が高まっていった。 そして私は、助けようとしたフレンズに襲い掛かった。

 

 その時のフレンズの顔は決して忘れられない――自分を助けようとした相手が突然牙を向いてきたのだ。

私もまた自分を抑えようとしなかったわけではない、しかしそれ以上に沸き上がる狩りへの渇望と本能が上回っていたのだ。

 

 フレンズは悲鳴を上げながら逃げ出した。 私は無論追いかけた、だがしかし、そのフレンズは私から逃げおおせた。

戦いの渇望冷めやらぬ私はその渇望を無理やり抑え込むべく、その湧き上がる衝動を周囲の物体に当たり散らす事で落ち着かせることしかできなかった。

 

 そして私は今一度理解した。私はフレンズではないのけものでしかないと――しかし、すぐに諦める気にはなれなかった。

もしかすると、私のこの忌々しい呪いのようなこれを直すすべがあるかもしれない……私は後ろめたさを感じつつも僅かな希望を持ってパークを再び歩いていく。

 

 だが、その望みはすぐに打ち砕かれた。セルリアンを目にするたびに私は次第に闘争本能を抑えきれなくなり、次第により獣に近づいてしまいつつあった。

そして私の手によって、少なくない数のフレンズが大きな悲しみを負わせることにもなった――それに気づいた時、私は罪悪感に駆られた。結局私はフレンズのなりそこないでしかないという事を思い知らされたからだ。

 

 私は当てもなく死に場所を探した――誰にも知られる事なく、一人で最期を迎えたいと思った。短くも壮大なパークの放浪の旅で、私の居場所はここにないという事も知ったせいでもあったが。だがそんなある日、風に乗って微かに懐かしい匂いを私は嗅ぎ取った……ヒトの匂いだ。

 その匂いはかつての私が知るそれではないが、だがどこか似ているようにも思えた――ゆえに私はその匂いを追いかけることにした。

 例え私の知るヒトでなくとも、もしかしたらという思いもあった。そうでなくとも、パークにヒトがいるのならば会ってみたい――最初の頃に無くしかけた思いが再び強くなっていくのを感じた。

だがそれは同時に、自分がより獣として近づくという事と同じであった……パークを歩けばいつかセルリアンにも出くわすということであり、そのたびに私は我を忘れ暴れまわるからだ。

実際、今では意識を保つのも難しくなりつつあった――しかしそれでも、私の中にはヒトに会いたいという思いが再び芽生えつつあり、獣の衝動と同じくらいに私の中で抑えが効かなくなっていた。

 

そして私は再び、ヒトを探すためにパークに出た――僅かな希望を込めて。

 

フレンズには極力会わないようにした。

私自身が恐れられていたのもあるし、私自身フレンズに会えばどんなことをするかも理解していた。

だから私は出来る限りフレンズの目を避けて行動することにした――そうすれば、私が他のフレンズに牙を向く確率も減るからだ。

 

私は再びパークを放浪し、そしてついにヒトの匂いの根元を見つけた――私はその匂いを必死に追いかけた。

だがその時だった、私は再びセルリアンと遭遇してしまった。

そしてどういうわけか、私にはこのセルリアンもヒトを追ってきたという妙な確信を抱いた……だが、問題はそこではなかった。

セルリアンを見た途端、私の体の奥底から激しい衝動が込み上げてきた――私が抑え込もうとしたのも役に立たず、私は再び我を見失った獣となりそのセルリアンを叩きのめした。

 

正直、そこから先のことを私は思い出せなかった。

今までは衝動に飲まれても記憶が抜け落ちるなどということはなかったが、今回はその最中の記憶は朧気にしか思い出せなかったのだ。

私は必死でその時の記憶を思い返した――青い帽子を被ったヒトの少女と、二人のフレンズがいたのだけは鮮明に覚えていた。

 

しかし、この記憶が確かだということはヒトがパークにいるということだ。

私は彼女と会い、友達になりたいと思った――が、私のこの衝動が爆発してしまい他のフレンズにしたことを彼女にしてしまうという考えもまた頭によぎった。

しかし、私はそのヒトとフレンズを追うことを決めた。決めてしまったのだ。

根拠はなかったが、私は彼女が重要なヒトであるように見えた。もしかすると、私のこの呪いを解くことができるかもしれないと。

 

私は再びそのフレンズ二人とヒトを追いかけた。

だがそれは、私がより獣に近付いていくということでもあったのだ。

セルリアンと戦うたび、私の内から沸き上がる本能と衝動が私を蝕んでいくのを感じた――そして私自身、それに抗えなくなりつつあった。

 

まさに、一瞬の油断が私を完全に獣にさせるという危険な状況だった。

それでも寸での所で私を押し留めていたのは、あのヒトに会うという思いがあったからかもしれない。それがなければ、私はもっと早くに獣に成り果てていただろう。

完全に獣の衝動に飲み込まれそうになるのを抑え込みながら 、私はヒトを追って旅を続けた。

そしてとある森でそのヒトが近くにいる事を匂いで嗅ぎ当てた私は、その匂いを追って森へ突入した。

だがその途中、再び運悪くセルリアンと遭遇してしまった――あと少しでヒトに会えるのに、私は自分で自分を呪った。

そして私の中の本能が再び甘く囁きかけてくる。

 

敵だ、殺せ。

 

違う、私は飲まれたくない。

 

敵だ、狩れ。

 

嫌だ、私は狩りたくない。

 

私を受け入れろ。

 

嫌だ、お前は私じゃない。

 

お前は獣、フレンズではないのけものだ。

 

違う、私は獣なんかじゃない。

 

 

 

 

抗うな、繕うな、楽に生きろ。理性を捨て獣となるのだ。

 

 

 

その言葉を皮切りに私は理性を失い、目の前が暗くなった。

 

「■■■■■■■■■――――!!!」

 

遠くで、私の咆哮が聞こえるのを聞きながら私の意識は闇に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと、私は見知らぬ天然の洞窟の中で目を覚ました。 身を起こして外を見てみると、すでに満点の星空が辺りを彩っていた。

しかし、起きてからすぐに違和感を感じた――あの時理性を失ってからどれくらい経ったのだろうか? そして私が狂っていた時の事を思い返そうするも、やはりおぼろげな記憶しか思い出せない。 しかし、思い出さなければならない、私はそう考えながら意識を集中させていく。

 

呆然とした、しかし恐怖も入り混じった様子で尻餅をつきこちらを見るヒトの少女、目の前を横切る火のついた飛ぶ何か、その時に感じた別のヒトの匂い、場面は飛び夕暮れの中先の少女を守るように泥まみれになりながらこちらに牙をむくイヌかオオカミのフレンズらしき少女、そして大きな耳が目を引くネコのフレンズが金色の瞳を見せこちらを睨んでくる光景――かなり朧気で不鮮明ながらも私の前にこの記憶の光景が見えた。

 

そして私はあることに気づいた――この不鮮明な記憶たちは、一部から大きく時間が飛んでいるということに私は気づいた。

つまり私は今まで以上に理性を失い、狂える獣となって暴れまわっていたのではないか……私はそう考えた。

そしてそれは、私が半ば抑えが効かないレベルで獣に近づきつつあったという事でもあったのだ……そう考えると、今まで以上に私は私自身が怖くなった。

このままいけば完全に獣になってしまうのではないか、私が襲ったあのヒトと彼女をかばったフレンズたちは大丈夫なのだろうか、そして何よりも、あの火のついた何かを見た時に感じた別のヒトの匂い――様々な感情が私の中で渦巻いていき、そして私を押しつぶそうとしてくるのを感じた。

 

押し寄せる自分への恐怖と嫌悪が、ひとまとめになって私の頭を思い切り殴りつけてくるような感覚さえもした――それによって吐き気と虚脱感を覚えた私はそれを忘れるように地べたに体を横たえ、しばし眠ることにした。 

やはり自分はのけものだった、最初から一人で消えていればよかった――声に出せない私は心中でそう叫んだ。




かくしてはじめてのけもフレ関連の作品となりました。 先も言いましたが私はけもフレはたつき監督の手掛けた1期も木村監督が手掛けた2も両方好きです、はい。
脚本のヒト何も考えてないよという煽りがあるが、少なくとも私はそう感じませんでした。 というのも、本当に何も考えずに作っているのならなぜ明らかに1期や旧アプリ版、ぱびりおんやけもフェスといった関連作品との繋がりを見せる要素を入れたのでしょうか? 
そして考察班や実際に何度も見返して、木村監督も過去作に敬意をこめて2に取り入れたという結論に至りました。アンチの言う悪意など微塵も感じられないほどに。

先も言いましたがけもフレは一期だけではありません。旧アプリ版、最も古い時系列にあたるフライ先生のようこそジャパリパーク、ガイドブック、ぱびりおん、内藤隆先生の2のコミカライズ、そして各種アンソロジーコミックに舞台版などなど、それらすべてがけものフレンズなのです。

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