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【社会】

黒川検事長が辞表を提出 賭けマージャン認める

 黒川弘務・東京高検検事長(63)は二十一日、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言下で賭けマージャンをしていたことを認め、安倍晋三首相に辞表を提出した。二十二日の閣議での承認を経て、正式に辞職する。森雅子法相は記者団に、黒川氏を訓告処分としたことを明らかにした。法解釈を変えてまで黒川氏の定年延長を決めた安倍政権にとって、大きな打撃となる。

 森法相は二十一日夕、首相官邸を訪れ、安倍首相に処分内容などを報告後、報道陣に「誠に不適切な行為で極めて遺憾だ」と述べた。後任は未定という。

 黒川氏は東京高検を通じ、「首相宛てに辞職願を提出した。報道内容は一部事実と異なる部分もあるが、緊急事態宣言下での私の行動は緊張感に欠け、軽率に過ぎるもので、猛省している。検事長の職にとどまることは相当でないと判断した」とコメントした。

 週刊文春(電子版)は二十日、黒川氏が一日に東京都内の産経新聞記者宅で、同紙の記者二人と朝日新聞社員の計四人で賭けマージャンをしたと報じた。十三日にも同じ場所でマージャンをしたとしている。

 安倍内閣は今年一月、二月に定年を迎えるはずだった黒川氏の定年を八月まで延長する閣議決定をした。稲田伸夫検事総長(63)が慣例に従って任期二年となる七月で勇退すれば、黒川氏が後任に就くことが可能になった。検察官の定年延長に前例はなく、野党などは「政権に近い黒川氏を検事総長にするための違法な人事だ」と批判した。

 政府はその後、国家公務員法の定年延長制は検察官には適用されないとのこれまでの法解釈を変更したと主張。三月には検察官の定年を政府判断で延長できるようにする検察庁法改正案を提出したが、世論の抗議が高まり、今月十八日、今国会での成立を断念した。

◆首相「批判受け止める」

 安倍晋三首相は二十一日、黒川氏が辞表を提出したことについて、官邸で報道陣に対し「法務省の対応を了承した。最終的には首相として当然責任がある。批判は真摯(しんし)に受け止めたい」と話した。

◆政権の人事介入 許した末

<解説> 一連の定年延長問題の渦中にいた黒川弘務・東京高検検事長が、賭けマージャンという思いがけない行為で辞職することになった。法の適正な執行を掲げる検察ナンバー2が、緊急事態宣言下で賭博罪に問われかねない行為をすることはあってはならず、国民の検察不信が高まるのは必至だ。今回の事態を招いた背景には、組織の人事政策の不備という問題が横たわる。

 政権からの独立性が求められる検察は、トップの検事総長の人事を法務・検察内部で固め、内閣が追認することを慣例としてきた。

 当局が当初、次期総長候補の本命に据えていたのは、林真琴・名古屋高検検事長(62)だった。だが、法務・検察幹部が昨年末、政権幹部にこの腹案を伝えたところ首を横に振られ、方針転換を強いられたとされる。長年の慣例が崩れ、政権による人事介入の余地が生まれたことで、安倍内閣による脱法的な定年延長を許してしまった。

 政治家との接点が多い法務省の官房長と事務次官を歴代最長の七年半近く務め、政権との距離も縮めた黒川氏。同省幹部は「政治は黒川氏に任せておけばいいという状況が続きすぎ、法務・検察当局は政権と渡り合える次の人材を育ててこなかった。そのツケが回ってきた」と指摘する。

 二〇一〇年にあった大阪地検特捜部検事による証拠改ざん事件後、地に落ちた信頼を取り戻しつつあった検察当局。当時法務省大臣官房付として事態収拾に動いた黒川氏によって、再び窮地に追い込まれている。 (池田悌一、山田雄之)

 

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