2018年12月28日

    あの「おせち事件」から8年、グルーポンとクーポンビジネスのいま

    クーポンはいまも日本人に愛されている

    「クーポン共同購入サービス」って知っていますか?

    簡単に説明すると、飲食店や美容施設などのサービスを特別価格で購入できるサイトのこと。

    “共同購入”の名前の通り、一定時間内に規定の購入者が集まることで大幅な割引がなされるのが特徴で、「フラッシュマーケティング」とも呼ばれていました。

    2010年頃に大流行し、大手からスタートアップまで雨後の筍のように新規参入が相次ぎ、猫も杓子もクーポン!クーポン!という感じでした。

    ところが最大手のグルーポンという会社が粗悪なおせちを売ってしまうという事件をきっかけに一気に下火となり、類似サービスもどんどん閉じていったのです。

    しかし、当のグルーポンはまだ残っており、しかもビジネスモデルを少しずつ変えながら、好調を維持しているとのこと。

    そこでグルーポンのいま、そしてクーポン市場の変遷などを、今年同社カントリーマネージャーに就任した奥江靖さんに聞きました。

    narumi / BuzzFeed

    (グルーポン・ジャパンのカントリーマネージャー、奥江靖さん)

    一時期は40〜50サイトもあった

    ーー 昔たくさん登場したクーポンサイトですが、いまってどうなってるんですか。

    奥江:去年、リクルートの「ポンパレ」がチケット販売サービスを終了しました。なので、いま同じビジネスモデルでサービスを提供しているのは、「LUXA」と「くまポン」くらいでしょうか。

    ーーそんなに減っちゃったんですね。

    奥江:減っちゃいましたね。一斉に出てきたのは2010年くらいですかね。その時期は本当にたくさん。

    まずはアメリカでその「フラッシュマーケティング」というビジネスモデルが生まれて、そのあとに類似サイトが日本にいっぱい出てきました。

    ーー日本のスタートアップがこぞって参入していました。数十個はあったと思います。

    奥江:40から50サイトあったそうです。グルーポンはもともと、「Q:pod」(クーポッド)というサイトを、もともと光通信の出身の方たちが立ち上げて、それを米グルーポンが買収して生まれたんですよ。

    他にも類似サイトは多数ありましたが、ただ、クーポッドが月間の売り上げも、販売枚数も圧倒的に多かったみたいですね。

    おせち事件後、審査基準を厳しく

    ーーそうしてスタートした日本のグルーポンですが、2011年におせちの事件(見本写真より明らかに品質の低いおせちが届き、クレームが寄せられた)がありました。

    奥江:そうですね。残念ながら、そのイメージはいまだにあるかもしれません。ただ、その後は審査基準を非常に厳しくするなど、社内プロセスの改善に取り組んでいます。

    たとえばディスカウントの表記についても、クーポンで提供されるコース料理が数種類あるなかで、一番安いメニューからのディスカウント額を表記するルールにしています。

    一番高いメニューを元にディスカウント額を表記すると、割引率は高く見えますが、うちはやらない。不満を言うメンバーもいますが、いや、駄目だと。あえて厳しくいこうと。

    あとはお客様からのレビュー制度も導入しました。辛口のレビューにお店側からクレームが出たとしてもレビューの削除はしない方針です。これは質の担保に必要だからです。

    あまりにもコメントで批判が多く、その原因が明確な場合は、我々のほうで指導もしていきます。

    ーー奥江さんは今年グルーポンのカントリー・マネージャーに就任しました。まわりからは「まだあったの?」みたいな反応も多かったのでは。

    奥江:残念ながら、そのような反応も多少はありましたね。認知度としてはおせち料理という過去の事件があって、それを覚えている人はまだいますが、グルーポン自体を知らない若い方もけっこういます。

    なので認知度を上げるというのは来年の大きな課題になります。そこに向けて今はいろいろと計画を立てています。

    ウェンディーズ・ファーストキッチンなどのハンバーガーチェーンや、コンビニエンスストアなど誰もが利用するお店のクーポンもたくさん出ている。これを買っておくだけでかなりお得になる)

    実は、もはや「共同購入」ではない。

    ーーそもそも参入しやすいビジネスだと思いますが、グルーポンがここまで残っている強みというのは。

    うちの強みっていうのは、かなり昔からやっているので長い付き合いのお客様がいるというのもありますけど、やっぱりグローバルのプラットフォームでやっているので、グローバルの最新のテクノロジーが使えることです。

    たとえば、あるレストランと契約して、クーポンを載せました、と。それをどういうふうに表示するかっていったら、アルゴリズムを元にコントロールしています。

    行動履歴やトレンドなどをもとに、その人が一番素敵に思うのはどのクーポンかを判断して表示しています。

    ーー最初、日本に入ってきたときは「クーポン共同購入サービス」というふうに呼ばれていました。

    奥江:はい。それがいわゆるフラッシュマーケティングです。でも、いまはフラッシュマーケティングじゃないんです。サービス開始から1年以内にはフラッシュマーケティングの形は取らなくなりました。

    ーー以前はクーポンの購入者がある程度集まらないと成約にならなかった。だから人を誘って「一緒に買おうよ」と。それがシェアを呼んで、より売れたと思うんですけれど。

    奥江:その購入者の達成人数はずっと前に外すようになっていて、「共同購入」だったのはほんの一時期でした。当時使っていた人からは、そのイメージはいまも強いですが、もちろん1人だけでもクーポンが買えます。

    共同購入だった頃はクーポンが使える期間も短く設定されていて、1ヶ月以内とかでしたよね。

    ーーそれがなくなった理由って、何かあるんですか。

    奥江:やっぱり一番大きな理由としては、お店側が赤字になっちゃうんですよ。それをどう見るか。

    その赤字の部分をマーケティングコストと見るとしたら、そんなに頻繁にクーポンを出せなくなっちゃうんですね。もう1回しかやらない。焼き畑になってしまう。

    パートナーであるお店側が赤字にならないような形で一緒につくっているんです。逆に我々が自らのマーケティングコストで、さらにディスカウントを提供しているくらいです。

    「動機」と「経験」を提供するサービスへ

    ーーじゃあ、ビジネスモデルがちょっと変わってきている。

    奥江:変わってきていますね。昔は共同購入サービスと呼ばれていたんですけれど、いまは「マーケットプレイス」って呼んでいるんです。まあeコマースですね。クーポンを売ってるECサイトです。

    (「クーポン・オブ・ザ・イヤー」という特設ページで今年最も売れたクーポンを紹介している)

    そこで提供しているのは動機です。そして我々の消費者に対する強みというのは「経験」なんです。新しい経験を、我々を通して試してもらう。

    まだ利用したことのないサービスって面白そうと思っても、買って使ってみるまではなかなかいきません。でも、その障壁を下げて1回試してもらうことはできるので、ある意味、我々はきっかけなんですよ。

    だから、消費者にはこれまで経験する機会がなかったものとか、または何かの理由で機会がなかったものをぜひ試してほしいです。

    そしてお店側にとっては、時期によってキャパシティが空いているところをまったく使わなかったらゼロじゃないですか。でも多少クーポンで安くなっても、誰かが使ってくれたらその分だけ収益が上がります。

    我々も、1回来ただけでおしまいではなく、またリピーターになるような施策も用意しています。たとえばニュースレターとかでまたトライしてみませんか? とフォローしたりする仕組みもあります。

    日本人はやっぱりクーポンが好き?

    ーークーポンってサービス自体が減るなかで、市場全体では伸びているんですか?

    奥江:サービスを提供しているサイトは、減っているんですけれど。クーポンをどう定義するかによるんですけれど、クーポン全般ということでいうと、すごく広がっているんですよ。

    ーーニュースアプリの「スマートニュース」でもクーポンが見れますしね。

    奥江:そうです。グノシーにもクーポンページはあるし。ヤフーも提供していますし、わりとどこでもやっているんですよね。

    だからもう日本人はクーポンが好きだと言われていますし、お店側がクーポンをマーケティングに使うというのも定着はしているんです。

    そのなかでやっぱりうちが違うのは、「体験の壁を下げる」というところに特化しているところ。そこが一番大きな違いなので、いかに使いやすさをひろげて、体験していただくかです。

    体験まで繋げないと、意味がないと思ってるんですよね。できればこれまでに使ったことのないサービス、ジャンルを試してもらえたらなと。

    年末年始のおすすめはハウスクリーニング

    ーー奥江さんはなにか初めてのこと、やりました?

    奥江さん:青山にタイマッサージに行きましたよ。1万円くらいのコースが3800円になるクーポンで。それくらいディスカウントされるとやっぱり使ってみようかなとなりますね。

    あとはオンラインのショッピング系も。オンワードが運営する「オンワード・マルシェ」っていう食べ物系の商品が多いサイトで、お肉を注文しました。

    明日はうちの同僚と、なるべく我々自身がお客様の立場で使ってみようっていうので、新宿にあるシュラスコのお店に行きます。飲み放題・食べ放題で、8640円が4500円。

    (たぶんこのお店だと思われる)

    ーーそれは安いですね。

    あとは年末年始だとハウスクリーニングも需要があります。すごく人気が高いです。最初って相場とかよくわからないじゃないですか。

    それをかなりのディスカウント率で提供していますので。そこはレビューがすごく大事で、レビューを参考にして頼む人が多いです。

    やっぱりレビューがいいところは売れているんですよ。完全に関連性がありますね。

    ーーちなみに年末年始といえば、今年はおせちって売っているんですか?

    奥江:2014年からおせちの販売を再開しましたが、いまはもうショッピングクーポンの販売をやっていないので、おせちも扱っていません。

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