つまり、あわせて考えると、日本テレビならびに幻冬舎および箕輪氏は、このたびの週刊文春の報道について、
「この件はおしまいです」
「箕輪は大丈夫です」
という態度で臨んだわけで、今後、メジャーなマスコミのスタンダードは、この態度を踏まえた上で動きはじめるということだ。
こんなバカなことが許されて良いのだろうか。
「スッキリ」が放送された当日、私は
《タイムラインに流れている情報では、箕輪厚介氏が今朝の「スッキリ」にリモート出演していたらしいのだが、マジか? そういう基準なのか? おまえらどこまで身内大事なんだ? 自分たちがそんなふうでどうして安倍さんを批判できるんだ?》2020年5月19日午前9:57
《幻冬舎箕輪厚介氏のセクハラ&原稿料踏み倒し案件を、どうやらテレビは追いかけていない。もしかして編集者と記者とディレクターとレポーターは、「相互非取材協定」でも締結しちゃってるわけなのか? 「お互い殺傷力のある武器を持った者同士、穏便にやりましょうや」ってか?》2020年5月19日午前9:33
というツイートを投稿しているのだが、おそらく、この事件は、裁判所に持ち込まれて明らかな結果が出ない限り、うやむやにされて終わるはずだ。それほど、社員編集者を守る業界の力は大きい。
念のために付言しておけば、岡村氏が盛大に叩かれている一方で、箕輪氏がなんとなく免罪される理由の最も大きな部分は、両者の知名度の違いにある。
誰もが知る有名人である岡村氏を叩くことは、視聴率やページビューを稼ぐ材料になる。不快に思っている人間がたくさんいる一方で、擁護したいと考えているファンも少なくない。とすれば、岡村氏の話題を扱うことは、どっちにしても人々の注目を集める。記事としては巨大なページビューが期待できる。
一方、箕輪氏は、しょせんローカル有名人にすぎない。
「箕輪って誰だ?」
と思う人間が、50%を超える状況下で、そんなマイナー著名人のスキャンダルを扱ったところで、部数もページビューも視聴率も期待できない。
大筋は、まあ、そういうことだ。
ただ、私は、メディア業界の人間たちが、同じメディア企業の社員にあたる人間のスキャンダルに対して及び腰になる構造は、明らかに存在しているというふうに考えている。それほど、社員編集者の地位は高く、メディア企業従事者同士の互助会の力は強烈なものなのだ。彼らは互いを責めない。当然だ。なぜなら、明日は我が身だからだ。
以下、その社員編集者たちへの思いを、一介のライターの立場から発信した5月17日の一連のツイートをご紹介する。
《表舞台に出たがる編集者と六方を踏む黒子はろくなもんじゃないってじっちゃんが言ってた。》2020年5月17日午前9:15
《大手出版社の社員編集者の中には著者をアシストするのではなく、ライターを「見つけ出し」て「育て」ている気分の人間が含まれている。でもって、自分が「人事権」と「企画権」を持ったプロデューサーであり、鵜飼の鵜匠でありオーケストラのコンダクターでありレストランのシェフだと思っている》2020年5月17日午前9:24
《ってことはつまりアレか? 書き手は皿の上のジャガイモで、あんたらが腕をふるって味をつけて熱を通さないと食えない代物だってことか?》2020年5月17日午前9:26
《実際のところ、うちの国はフリーランスで何かを作っている末端の個人より、その作品のマネタイズを担当する会社の社員のほうが優遇される(あるいは「より高い社会的地位を保証される」)社会なので、大手出版社の編集者というのは「准文化人」くらいな枠組みに編入されるのだね。》2020年5月17日午前9:32
《「メディアはメッセージだ」と、マクルーハンだかがフカした(←オレは読んでない)お話が、「水道管は水より偉いんだぞ」てな話に変換されて、勘違いした編集者だのディレクターだのプロデューサーだのが肩で風を切って歩くようになったのが1970~90年代のメディア業界の空気だったわけで……》2020年5月17日午前9:51
《で、21世紀にはいると業界がまるごと沈没しはじめたんでメディアもメッセージもひとっからげにおわらいぐさになっています。現場からは以上です。》2020年5月17午前9:52
コメント47件
あ
本文に全く関係ないのですが、「ライター」という表現で、昔読んだ音楽雑誌か何かで「最近原稿の質が落ちたのは書いてる人間の肩書きが音楽評論家から音楽ライターになったからだ」というのを読んだのを思い出しました。まあ「音楽評論家」で蔵建てたのは自分
が知ってる範囲では渋谷陽一大貫憲章伊藤政則の3人しかいないですが確かに最近の音楽関連コラムって内容スカスカか自己陶酔してる気色悪いものしかない記憶が。
...続きを読む尤も、小田嶋センセイは評論家ってスタンスにはなってほしくないなあ。勿論そんな気は毛頭ないでしょうが笑
山川草木
黒川氏が自ら危険牌を切ったのではという小田嶋さんの見立てについては、私も同様な感想をもった。
辞めるに辞められない状況にあったのではないかと思うし、この先、安倍と同じ舟に乗っていてあまりいいことがあるとも思えない。
周囲の流れを読んで
うまくそれに乗ることでキャリアを重ねてきた結果として今の黒川氏があり、本人としては麻雀をやるようなつもりでやっていたら最後に振り込んだみたいな感じか。
...続きを読むさて、このあと安倍側がどうやってここを切り抜けるかが問題。どちらに転ぶのか注目だ。
箕輪氏の件については、出版界の置かれた状況がよくわかった。
新聞・テレビの体たらくは黒川氏の件で改めて浮き彫りにったが、出版界も相当ひどそうだ。
出版不況の中、因習まみれの出版界を刷新すべき旗頭的な存在が箕輪氏ということか。
ネットやITの周辺でマネーを巡って魑魅魍魎が集合している図は想像がつく。出版をマネタイズしようとしているわけか。
70~80年代にしてもすでに作家より編集者、クリエイターよりはプロデューサーという状況にはなっていたろう。
おそらく「モノ」から「マネーや情報」へと価値が移る流れの中の出来事だったのだろう。
それが21世紀となった今も、古臭い人間的欲望の基本は変わらず、紙媒体がネットに置き換えられただけということか。
本来は創作分野でもっと本質的な変化が起こらなければいけないのだろう。
テクノロジー面でいうなら、出版界がやろうとしていることはすでに
グーグルやアマゾンがもっとエレガントに幅広く徹底的に行っている。
人間のでる幕はなくなっているともいえるが、それは古くさい因習的な人間が駆逐されるという意味ではむしろよかったのかもしれない。
問題は、その上にたって、我々がどんな芸術的な営みを行い、創作環境を作っていくかということだろう。
あ
このコメントは投稿者本人によって削除されました
あ
賭け麻雀と聞いてふと石田純一氏の義父(元ライオンズ東尾氏)と元巨人の柴田氏を思い出したのは自分だけでしょう。
特に不祥事発覚後の自宅インタビュー時にトランプ柄のセーターを着てた柴田氏が懐かしいです。
ぞんざい人
>体力が戻ったら、あらためて取り組んでみたい。
↑そうしてください。
今回の記事の題材は残念に思った。
体調よくないのに無理しているんでしょうか・・・、お大事に。
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