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 学校で部活動に取り組んできた多くの高校生や中学生は、心沈む思いだろう。

 コロナ禍の影響で、夏の全国高校総体と全中大会が中止となり、高校野球の選手権大会の開催見送りも発表された。

 スポーツだけではない。吹奏楽コンクールや合唱のNHKコンなども取りやめに。高校の全国総合文化祭は会場に集う方式を断念し、ネットでの作品発表や動画配信を検討している。

 仲間とともに力と技を磨き、互いに高め合いながら成果を披露する。その晴れ舞台が失われてしまったことの落胆、やるせなさは察するにあまりある。

 多くの県で緊急事態宣言が解除され学校も再開したが、警戒を怠ることはできない。地域でのすべての大会で十分な安全対策を講じ、さらに多くの人が移動・集合する全国規模のイベントを開くのは容易なことではない。相次ぐ中止や変更は感染症対策の難しさを映し出す。

 学校や現場の指導者は、生徒たちの心身のケアに細心の注意を払ってもらいたい。すでに様々な形でメッセージを伝え、体調の変化などにも目配りしているだろうが、思わぬ時に喪失感が形になって表れることも考えられる。特に「最後の大会」にかけていた最上級生には、丁寧なフォローが求められる。

 総文祭のようなネットを使った交流は時代に即したアイデアだし、都道府県レベルで独自に大会の開催を探る動きもある。学校の体育館やグラウンドで開くささやかなものであっても、仲間と時間を共有した証しを残すことができれば、一つの区切りになるのではないか。

 その際もウイルス対策は欠かせない。部活はいわゆる三つの「密」を生み出す場面が多い。個々の競技や活動の内容に即した指針づくりが必要だ。

 部活での実績は、大学や高校で進学希望者を評価する材料としても活用されてきた。

 文部科学省は先日、全国の大学と教育委員会に対し、多くの大会や行事の中止によって生徒に不利益が及ぶことがないよう通知を出した。これを踏まえて、一人ひとりの努力の過程や成長を、多面的・総合的に判断する選抜方法を考えて欲しい。企業や団体の採用活動に関しても同じことがいえる。

 改めて言うまでもなく、部活は、仲間をつくり、スポーツや文化を将来にわたって楽しむ土壌を育む。今回の休校期間中には、ネットを使ったミーティングや個別練習などの新しい手法を試す例も出てきた。

 この試練を、学年を超えて部活の意義を再確認し、日々の活動や部の運営方法を深化させる機会にしてはどうだろう。

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