中国の国会にあたる、全人代(全国人民代表大会)。

開幕を22日に控え、21日に行われた関連会議に、習近平国家主席ら最高指導部のメンバーが姿を見せた。

会場となる首都・北京は、厳戒ムードに包まれている。

中国国内から3,000人近い代表が出席する全人代は、その年の政策などを決める最も重要な政治日程の1つ。

2020年は、新型コロナウイルスの影響で、およそ2カ月半遅れの開幕となる。

感染予防のため、開幕式など、会場での取材人数も大幅に絞られた。

会場内の取材に先立ち、取材班が向かったのは、指定されたホテル。

その入り口にあるテーブルに置かれていたのは、PCR検査のキットだった。

中に入る記者1人ひとりに、検査キットが手渡された。

のどから検体を採取するのは、防護服姿の医療従事者。

支局スタッフは、結果が判明するまで、ホテルの部屋で待機することが求められた。

その間、ホテルからは、温かい食事が提供された。

検査結果に問題はなく、会場内での取材はOKとなった。

国内線の運航も、順次緩和され、経済活動が活発化しつつある、中国。

しかし、一方で、農民工と呼ばれる地方からの出稼ぎ労働者の生活は、深刻な状況にあるという。

農民工が集まる北京市近郊の街を訪れると、日雇い労働者の人たちが、雇い主が来るのを待っていた。

しかし、雇い主が、なかなか現れないため、何日も待つケースもあるという。

農民工「(毎日仕事はありますか?)ない」、「1週間、仕事がない人もいれば、仕事が半月ない人も当たり前になった」、「当然コロナと関係ある」、「多くの工場が再開できず、多くの人がぶらぶらしている」

汚れたままのマスクをした男性たち。

農民工と呼ばれる出稼ぎ労働者。

新型コロナウイルスによる操業停止などの影響で、仕事が激減。

たとえ仕事にありつけても、支払われる日給は、日本円で、およそ3,000円。
生活するのがやっとの額。

農民工「仕事が見つからない、5日間も見つからない。残った金はこれしかない。あと2日、仕事が見つからなければ飢えてしまう」

スマホに表示された残高は、88元。

日本円で、およそ1,300円が、男性の全財産。

電子マネーでの支払いが日常化している中国。

都市部では、スマホがないと、生活ができないという。

彼ら、出稼ぎ中の農民工たちは、どのような暮らしをしているだろうか。

遼寧省から来たという男性(39)が案内してくれたのは、車。

遼寧省から出稼ぎに来た男性「ここだ。こんなところに3人で暮らしている」

使い古しの布団に鍋。

そして、瓶が置かれた車内。

放置された車の中での生活は、数カ月に及んでいるという。

感染対策として、当局は、アパートなどが立つ住宅地への出入りを厳格に制限。

彼らは、それにより閉め出されたという。

寝床は、車だけではない。

粗末な布団で建てられたバラック。

中にあったのは、布団と枕だけ。

人1人がやっと横になれるスペース。

こうしたところに寝泊まりしながら、日雇いの仕事を探すという過酷な現実。

接触を避けるため、その仕事探しにも影響が。

新型コロナウイルスの影響で、職業仲介業者の前には、QRコードがたくさん貼られるようになった。

今は、スマホを通じた求人が中心になっているという。

世界の感染者数が、ついに500万人を超える中、コロナをほぼ抑え込んだとアピールする中国。

21日午後から始まった関連会議では、新型コロナウイルスで命を落とした人々に黙とう。

一方で、中国政府は、社会の不安定化を招きかねない失業問題に神経をとがらせており、22日からの全人代では、経済と雇用の立て直しに向けた具体策が大きな焦点となる。

農民工の男性「われわれの希望は、全人代で政策をよくしてほしいところだ」