欧州各国がロックダウンの解除を段階的に進めている。連日の陽気も手伝い、街には明るい雰囲気が戻りつつある。
その中で、緊張感が一向に緩まない場所がある。介護施設だ。施設内で感染が拡大し、最も大きな被害が出ている。依然として新型コロナで多くの入居者が感染、死亡しており、親族らが訪問できない状況だ。そこで、本誌では欧州各国の介護施設における死者数のデータを集計した。
欧州で新型コロナによる死者が最も多いのが英国だ。イングランドやスコットランドなどのデータを集計すると、英国の介護施設では5月10日までに1万1687人が新型コロナで死亡している。これは英国の死者総数の37%に当たるが、介護施設から病院に移った高齢者も含めると介護施設で感染して死亡した人はさらに多いと見られている。3月中旬からの8週間で、英国では介護施設で毎年の平均に比べ2万2000人以上も多くの入居者が死亡している。
英国では4月中旬から病院での新型コロナによる死者数が減っていたにもかかわらず、5月上旬まで新型コロナの死者数の減少幅が小さかった。それは、介護施設の死者数が大きく減らなかったからだ。介護関係者が緊急事態を叫び続けているが、政府の動きは鈍い。
英国だけではない。欧州では介護施設の被害が特に深刻だ。下記の表を見ていただきたい。フランスでは公衆衛生局が病院および介護施設での死亡者数の合計を毎日発表しており、18日時点で介護施設の死者数は1万4363人と全体の51%に達する。
国名 | 新型コロナウイルスによる総死者数 | 介護施設における新型コロナウイルス関連の死者数 | 新型コロナウイルスによる死者数のうち介護施設居住者の割合 | 最新データの日付 | 出所 |
---|---|---|---|---|---|
フランス | 28,239 | 14,363 (うち3713人は病院で死亡) |
50.86% | 5月18日 | 公衆衛生局 |
スペイン | 27,709 | 18,413 | 66.45% | 5月18日 | スペイン放送協会 |
英国 | 31,855 | 11,687 | 36.70% | 5月10日 | 国家統計局など |
ドイツ | 7,935 | 2,980 | 37.56% | 5月18日 | ロベルト・コッホ研究所 |
スウェーデン | 2,075 | 948 | 45.60% | 4月28日 | 保健福祉庁 |
イタリア | ― | 2,724 | ― | 4月14日 | 国立衛生研究所 |
ドイツではロベルト・コッホ研究所が情報を収集しており、18日時点で介護施設や障害者施設を含む福祉施設の死者数は、2980人と全体の38%を占めた。スペインではスペイン放送協会の報道によると、介護施設での死者数は1万8413人と66%にも達する。イタリアは正確な統計データが少ないが、介護施設で多くの死者が出たと報じられている。
それぞれ前提条件やデータの収集方法が違うため、横並びの比較は難しいが、欧州の複数の国では新型コロナ感染による死者総数のうち、半数近くを介護施設の入居者が占めている。
コメント1件
ぱーばー
介護施設へ武漢肺炎が広がったら凄惨なことになるのは予想していた通りだが、ここでもなぜ日本はヒドイことにならなかったのかが疑問。介護スタッフの防疫習慣がケタ違いに高水準だったのだろうか。普段から風邪予防は、しっかりルール化・習慣化していると感
じたけど。...続きを読むコメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細
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