大島 大輔記者(朝日新聞社会部)
日本の子どもの学力が落ちたという話は本当なの?
今月、別々の国際機関が調べた世界的な学力調査の結果があいついで公表された。ふたつとも、日本はむかしのように世界のトップとはいえなくなったという結果がしめされたんだ。
ぼくは一生懸命勉強しているつもりなんだけど、どうして下がっちゃったのかなあ。
日本は何番だったの?
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読解力をのばすため、文部科学省は「朝の読書」活動に力を入れるとしています。写真は、本をかりにきた子どもたちでにぎわう山形県鶴岡市の朝暘第一小の図書館 |
読解力、理科…
ふたつの調査で順位ダウン
――まず公表されたのは、経済協力開発機構(OECD=経済の進んだ国の経済政策を調整する国際機関)の調査結果だ。41の国と地域の15歳、計約27万6千人が参加した。日本では高校1年生4700人がテストを受けたんだ。特に目立ったのは、数学の応用力(リテラシー)が3年前の前回調査の1位から6位に、読解力が8位から14位に下がったこと。
OECDの調査 |
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太字はG7(先進7カ国)
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ケン 読解力って、文章を読む力のこと?
――それが一番大事だけど、それだけでもないんだ。OECDのテストは、学んだことをふだんの生活の中にどれだけ生かすことができているかをはかる目的がある。文章のほかにも、グラフや表を見ながら、それをきちんと理解したうえで、自分の考えを表現できないと正解にならないんだ。
ジャン ずいぶんむずしそうね。
――でも、きみたちが生きている21世紀は変化がはげしい時代だから、知識を生活の中に生かしていく適応能力が国際的にももとめられている。だからこういうテストが始まったんだ。14位という結果は国際的にほぼ平均的で、トップクラスではないんだ。
ポン 残念。
――日本の子の読解力の平均点は前回にくらべて24点下がり、前回も参加した国の中ではもっとも大幅な低下だった。得点の高い層は前回なみだったけれど、低い層の落ちこみが大きかったんだよ。
IEAの調査 |
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太字はG7(先進7カ国)
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ジャン 学力の格差が広がったといわれているけど。
――そうだね。読解力をのばしていくためには、もっと本を読まないといけないという意見が多い。日本の子どもは本を読む時間がとても少ないという調査結果も出ている。学校では「朝の読書」の活動を積極的にやることになったよ。
「ゆとり教育が原因」説も
少ない「勉強が楽しい」子
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ケン さっき、ふたつの調査結果といったよね。もうひとつは?
――国際教育到達度評価学会(IEA)という組織の学力調査の結果もしめされたよ。小学四年生は25の国と地域の中で、算数が3位。これは前回の1995年とかわらなかったけれど、理科は2位から3位に下がった。中学2年生は、46の国と地域の中で、数学は前回(99年)と同じ5位で、理科は4位から6位に下がった。
ジャン こちらの調査からはどんなことがいえるの?
――この学会の調査は、学校で勉強している内容の中でも、基礎的な学力が身についているかを見るテストなんだ。順位が下がったことも心配だけど、小学生の理科と、中学生の数学で前回よりも平均得点がぐっと下がっている。前回と同じ問題だけをくらべても、どれも正解の割合が上がっていないんだ。
ポン いったい何が原因なんだろう。
――「ゆとり教育」といわれるように、授業時間や教科の内容をへらしたからだという専門家もいる。だけど、なぜ学力が落ちたのか、その理由がこれだというのはなかなかむずかしいね。ただ、日本の子どもについて特徴的だったのは、「勉強が楽しい」と思う子の割合が世界的にみてとても少ないんだ。勉強に意欲的に取り組もうという気持ちがなければ、なかなかよい成績にむすびつかないかもしれないね。
(2004年12月18日)
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