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巨大地震と火山

2012-09-17 12:09:25 | ウエーブニュース
大震災で噴火誘発の懸念 マグマ発泡か、数年は警戒必要
   2012年9月17日

 東日本大震災の発生後、火山噴火の誘発が懸念されている。マグニチュード(M)9・0の巨大地震で火山の直下が揺らされ、マグマの上昇が始まった可能性があるからだ。20世紀以降、巨大地震の後には周辺で必ず噴火が起きている。地震の数年後に噴火する場合もあり、専門家は警戒を呼び掛けている。(小野晋史)

 
M9以上例外なく

 「今後数年間は、日本のどこで噴火が起きても不思議ではない」。気象庁の火山噴火予知連絡会会長を務める藤井敏嗣東大名誉教授(マグマ学)は、こう指摘する。世界で20世紀以降に起きた計5回のM9以上の巨大地震では、その後、例外なく噴火が起きているからだ。

 藤井氏によると、昨年6月に起きた南米チリのプジェウエ火山の噴火は、2010年のチリ地震(M8・8)で誘発された。同火山の噴火は半世紀ぶりで、前回は1960年のチリ地震(M9・5)の2日後に起きていた。

 ロシアのカムチャツカ半島にあるベズイミアニ火山は1952年のカムチャツカ地震(M9・0)の3年後、千年ぶりに噴火し、現在も活発な活動が続いている。この地震では、ほかに3つの火山が3カ月以内に次々と噴火した。

 インドネシアでは2004年のスマトラ沖地震(M9・0)の4カ月~3年後、3火山が噴火。91年に20世紀最大の噴火が起きたフィリピンのピナトゥボ火山も活断層による前年のフィリピン地震(M7・7)が引き金だった。

 
富士山に影響か

 東日本大震災後、日本でも火山で地震活動が活発化した。気象庁によると、浅間山(群馬・長野)、箱根山(神奈川)など北海道から鹿児島県までの20火山で地震が増加。いずれも噴火の兆候はなく、大半は既に平常レベルに戻ったが、富士山では今も活発な地震活動が続いている。

 富士山は東海・東南海・南海地震が連動した1707年の宝永地震(M8・6)の49日後、約200年ぶりに大噴火した。その後、300年以上も静穏期が続いており、次の噴火に向けてマグマが蓄積されている可能性が高い。

 藤井氏は「大震災の地震は何らかの影響を与えたはずで、富士山の噴火はあり得る」と話す。大震災の4日後、富士山直下で静岡県東部地震(M6・4)が発生した際は、噴火につながるのではと身構えたという。

 震源に近い東北地方も要注意だ。大震災と同じ日本海溝沿いの巨大地震だった869年の貞観(じょうがん)地震(M8・4)では、2年後に鳥海山(秋田・山形)が噴火。半世紀後の915年に起きた十和田(青森・秋田)の大噴火も、貞観地震に促された可能性が指摘されている。

 国内では戦後、宝永級の大規模な噴火は起きていない。内閣府は大震災で噴火が誘発される可能性も視野に今年8月、大規模噴火における防災対策の検討会を設置。今年度中に報告書をまとめ、国の防災基本計画に反映させる。

 
長期にわたる備え

 世界のM9以上の巨大地震は、いずれも海溝で起きている。海洋プレート(岩板)が陸側プレートの下に沈み込む場所だ。マグマの材料となる水が地中深くに運ばれるため周辺には多くの火山がある。

 巨大地震はなぜ噴火を誘発するのか。その仕組みはよく分かっていないが、藤井氏は揺れによるマグマの発泡が有力な原因とみている。サイダーの瓶を振ると、飲み口から泡が噴き出すイメージだ。

 地震が起きると、火山の下にあるマグマや周囲の岩石が地震波で揺れる。マグマだまりの直径が地震波の波長より長い数百メートル規模だった場合、高熱で軟らかいマグマと、冷たく硬い周囲の岩石は異なった揺れ方をする。

 この結果、両者を安定させていた力のバランスが崩れ、マグマに掛かっていた圧力が低下。それまでマグマに溶け込んでいた二酸化炭素や水が気化して泡立つようになる。気体は液体より軽いため、発泡した分だけマグマは軽くなって上昇を開始。上昇するとさらに圧力が下がって発泡して軽くなり、この繰り返しで噴火に至るシナリオだ。

 マグマだまりが浅い場所にあり、水が過剰に溶け込んでいる過飽和状態だとすぐに噴火するが、藤井氏は「マグマだまりが深い場所にあれば、数年後に噴火してもおかしくない」と警鐘を鳴らす。大震災から1年半が経過しても油断は禁物で、長期にわたる備えが必要だ。

 (産経新聞テキスト朝刊)
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