差別の対象だった芸能人に
対する「3つの思い込み」
では、なぜこうなってしまうのか。
「もともと芸能人は差別の対象だったからだ」という歴史的な分析もあるだろうが、個人的には以下のような、芸能人に対する3つの「思い込み」が大きな影響を与えているのではないかと考えている。
(1)芸能人はファンを喜ばしてさえいればいい
(2)人気芸能人ほど「中立」であるべし
(3)芸能人は国のために率先して協力すべき
まず(1)に関しては、今回の芸能人批判でも多く見られた主張なので、「その通り!」と頷いている方も多いのではないか。餅屋は餅で、芸能人は芸能を頑張ってファンを喜ばしていりゃ十分だ、というのである。
だが、実はこういう考え方は世界的にみるとかなりユニークだ。海外では、芸能人である前に1人の人間なので、自分自身の幸せを追求する自由もあれば、政治的主張をする自由も認められている。だから、成功した芸能人ほど、環境運動や政治運動などに積極的に関わっていくのだ。
しかし、日本の芸能人はそういう「自由」を追い求めると、「自分勝手」「ファンへの裏切り」としてボコボコに吊し上げられかねない。その象徴が日本の「アイドル」だ。
ご存じのように、日本のアイドルは「恋愛禁止」だ。男性アイドルでも人気絶頂のうちは交際・結婚はご法度。50近いオジサンで、成人しようかという娘がいるにもかかわらず、「アイドル」ということになると、「ファンが傷つくのでテレビなどでは家族のトークはNG」という、ワケのわからない謎ルールまで存在している。