長崎市に停泊するイタリア籍クルーズ船「コスタアトランチカ」の乗員に新型コロナウイルス感染が拡大している問題で、長崎県は25日、全乗員623人の検査を終え、計148人の感染を確認したと発表した。既に陽性が判明した91人に加え、同日新たに57人の感染を確認。今後、感染者を医療機関で受け入れる場合に備え、国と対応策を協議する。
県によると、クルーズ船の乗員は船内の個室で待機しているが、20日に感染が初めて確認された乗員とその濃厚接触者らを除き、感染者と陰性者の部屋が隣り合うなど区域が分けられていない。
だが、現地入りしている厚生労働省クラスター対策班の鈴木基医師は25日に長崎市が公開した動画で「乗員は全員、個室隔離されている。これ以上感染が広がることはない」と指摘。「3月末ごろに船内で感染が発生し、比較的短期間で広がったと推測される」と話した。
クルーズ船を巡っては、22日に外国籍の男性1人が市内の感染症指定医療機関に入院、重症と診断された。ほかの感染者のうち、1人に38度台の発熱の症状があるが、重症者はいないという。
一方、県の中田勝己福祉保健部長は記者会見で、最近の研究成果に基づき「今後、最大で感染者の約2割に当たる30人が入院する可能性がある」との見方を示し、感染者の症状が悪化した場合の受け入れ態勢整備に力を入れるとした。
運航会社「コスタクルーズ」の日本支社によると、乗客はおらず、乗員の国籍はアジアを中心に30カ国以上で、通訳の日本人1人が含まれている。同支社は24日、国土交通省や厚労省と協議した結果、陰性の乗員を早期に帰国させることが決まったと発表した。〔共同〕