デジタルローンチから不動の取引関係を構築
企業のマーケティング戦略策定やWebサイト構築、システム開発を手がけている株式会社ルートコミュニケーションズ。1996年という、日本におけるインターネットの黎明期に創業した同社は、以来、一貫して当該業務に携わってきている。
主要クライアントには、ナイキジャパン、ディーゼルジャパン、コーチ・ジャパン、ユニクロなどの世界的ブランドが顔を揃える。しかも100%、直取引だ。特にナイキジャパンとは、2000年に日本で初めてローンチしたWebサイトの構築を手がけて以来、不動の取引関係が継続している。
「商品だけでなく、マーケティングにもイノベーティブな取り組みに力を入れているナイキさんには本当によく育ててもらい、その存在は当社の背骨になっていると言っても過言ではありません。当社も、多くのものをお返しできたと思っています。それで長い間、深いリレーションが構築できていると自負しています」と代表取締役の寺嶋徹氏は胸を張る。
「大手広告代理店の人から自動車メーカーや化粧品会社のサイトを、外資系コンピュータ会社の人から自社のコーポレートサイトの構築を依頼してもらいました。おかげで事業は順調に立ち上げることができましたね」と寺嶋氏は述懐する。
そして、1999年にナイキジャパンと運命的な出合いを果たす。以来、同社はナイキジャパンのすべてのサイトの構築・運用をはじめ、プロモーションイベントの企画などを手掛けてきた。
「業界では、『ルートといえばナイキ』といわれるほど、代名詞的な仕事になっています。この事例が当社の看板にもなって、著名なブランドの仕事が増えていきました」(寺嶋氏)。
ナイキは今、「NIKE+」というウェアラブルコンピューティング製品をリリースしている。同社もそのプロモーションに深く関わっているが、この新領域に寺嶋氏自身、大きな可能性を感じている。
「ウェアラブルデバイスの登場で、革新的なプロモーションの可能性が開けてきました。当社はもっぱらデジタルコミュニケーションを手がけてきましたが、今後は、ベンチャーらしくこうしたイノベーティブな動きにもいち早くキャッチアップして、新しい領域を取り込んでいきたいと思っています」。
誰よりも「相手を理解する」思いの強さが強みの源泉
著名ブランドと深いリレーションを構築し、そのWebサイト構築などのマーケティング業務を長期間手がけ続けているルートコミュニケーションズ。このことを可能ならしめている“強み”について、寺嶋氏は次のように言う。
「一言でいえば、“クライアント理解力”だと思います。当社は、インサイダーとしてクライアントに入り込み、最上流の段階からマーケティング戦略構築に加わって、最終的にはWebサイトなどの形で納品します。その実際の構築・制作というアウトプットの業務プロセスよりも、インプットに時間を割き、クライアントについて徹底的に理解することをモットーにしているのです」。
例えば、あるブランドに関わるメンバーが休日にショッピングをしていて、そのブランドのショップの前を通りかかった時。オフタイムとはいえ、必ず店内に入ってチェックをせずにはいられない。
「後日、クライアントにその時の感想やチェックした内容について話すだけで、関係の深まり方は変わるのです。こうした我々の“思いの深さ・強さ”が当社の強みの源泉ではないかと思っています」。
クライアントを誰よりも理解し、深い関係を築いてきた。デジタルな世界とは言え、アナログな関係性を重視している。
木や緑に溢れる、広くてスタイリッシュなオフィス
同社の社員は2014年5月現在、18名。
「採用面接には1時間たっぷりかけてお互いの理解を深め、当社に合う人を選考していることもあり、みんな仲が良いですね」と寺嶋氏は目を細める。同社に合う人材とは、「自分がやりたいことをやって満足するというより、自分がやったことで相手が喜ぶことに満足する」タイプだ。人付き合いが苦ではなく、よく気がつき、人に奉仕することが好きなタイプといえる。
「自社Webサービスを企画・開発するIT企業に集うエンジニアやクリエイターには、やりたいことに満足するタイプが多いと思います。そういう人は高度なスキルに自信があるでしょう。しかし、当社はどれだけスキルが高くても、現在いるメンバーやクライアントと合いそうもない人は採用しません」と寺嶋氏は断言する。
もちろん、世界的なブランドのサイト構築を手がける上で、スタイリッシュな表現力であったり、ぼう大なアクセスに対応するサーバー構築技術などの高度なスキルは問われる。「しかし、人間性のほうが優先順位ははるかに高い」と寺嶋氏は強調する。
メンバー相互の理解を深めるために、週1回、お菓子を食べながらメンバーがテーマ自由で1時間話す「ルートカフェ」というアクティビティも行っている。
人材育成の面では、主体性を尊重しセミナー受講や書籍購入を申請制にしている。「却下した記憶はない」と寺嶋氏。
そんな同社で働く大きな魅力は、なんといってもオフィス環境だろう。六本木と乃木坂の中間点、新国立美術館に隣接するというロケーションで、界隈には緑が多く、大都会の真ん中とは思えないほど静かだ。そんな環境にあって、メゾネット式の3フロアで約400㎡という非常に広いスペースを確保している。
オフィス内の各所には、東日本大震災で被災した宮城県石巻市で、復興を目指す地域のものづくりの場として生まれた「石巻工房」による温かみのある木彫家具や、100基以上の植物が置かれ、スタイリッシュな雰囲気だ。
「木や緑があると、とても落ち着きますよね。私自身、大学で水質浄化を専攻したほど自然環境に思い入れがあるので、オフィス環境にもこだわっています。イチゴも育てていますよ(笑)」(寺嶋氏)。
上階には開放的なテラスや広々としたミーティングスペースがあり、よくBBQをして楽しんでいるという。
寺嶋氏が目指すのは、大言壮語的な未来ではなく、メンバーの一人ひとりが“幸せ”である会社であり続けることだ。
「人として最大の幸せって、結局のところ、人から必要とされることではないかと思うんです。メンバー同士でも、クライアントからでも。そのために必要な、人としての魅力を備えた人が集まる会社であり続けたいですね」と結んだ。
会議室は上階にあり、BBQもよく行っている。