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人権・校閲

こちら人権情報局

「障害」の表記は・・・

(特に注記のない場合、新聞記事の日付などは東京本社最終版です〉
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■「障害」「障碍」「障がい」

 政府は6月10日の閣議で2011年版「障害者白書」を決定しました。この中に、「障害」という書き方についての調査結果があります(「『障害』の表記、変更不要が43% 障害者白書」日経新聞電子版6月10日、「22%が『障害』表記変更を 11年版白書」東京新聞電子版6月10日=共同通信)。調査は2010年4月に行われ、成人の男女9000人から回答を得たものです(アンケートの概要アンケートの詳細〈この文書の後半〉)。

 「障害」の「害」の字はイメージが悪く障害者差別につながるので表記を改めるべきだとの意見について、「そう思う」が21.9%、「そうは思わない」が43.0%、「どちらともいえない」が35.1%でした。

 回答者のうち障害がある人は464人ですが、そのなかでこの質問に「そう思う」と答えた人は22.4%、「そうは思わない」は44.6%、「どちらともいえない」は33.0%となっています。

教育・福祉・就労の充実を」 名張で県知的障がい者福祉大会 /三重県拡大「障がい」を使う例も増えている=三重県名張市南町の名張産業振興センターアスピア
 全体のなかで、「そう思う」と答えた人に、どのような表記にするべきかを聞いたところでは、「障がい」40.9%、「障碍」7.8%、「その他」33.8%という結果でした。自治体や障害者団体などが「障がい」を使うことも多くなっており、「障がい」が一般的にもなじみのあるものになりつつあるのかもしれません。

 朝日新聞の過去の記事を見てみると、「障がい」の表記は、1989年12月7日「論壇」の筆者の肩書きとして「『障がい』児の進路を考える会会員」が使われたのが初めてのようです。その後、90年代は計10件ほど、2000年代に入って徐々に増え、05年には約80件、10年には360件余りになります。朝日新聞は地の文では原則として「障害」を使っているので、多くは障害者団体や自治体の組織名、催し物の名前として登場しています。自治体が公式に表記を改めた例としては、埼玉県志木市が市の規則や文書など全てで「障がい者」を使うことにしたというのが最初にニュースになっています(2001年4月3日)。

 

 「障害」をどのように書くのがよいのかについては、いろいろな考え方があります。
 「害のある人と誤解されかねない。名は体を表しますから」と「障碍」を推すのは、兵庫県芦屋市の豊田徳治郎さん(朝日新聞2009年12月3日夕刊「『碍』の字で社会は変わる ニッポン人脈記・漢字の森深く7」)。「害悪」などに使われる「害」より、「さまたげ」の意味の「碍」がよいという意見です。しかし、2010年11月に改定された常用漢字表に、「碍」は採用されませんでした。

 社会環境や政策的不備で起きている不自由さこそが「障害」なのであり、言葉を言い換えるよりも「害」を取り除く具体的な施策こそが大事だという声もあります(「障害を『障がい』とする意味は 東海聴覚障害者連盟相談役・後藤勝美」朝日新聞2009年1月23日)。

 上の調査で、「チャレンジド」と改めるべきかという質問には「そう思わない」が67.0%、「そう思う」は10.2%でした。「チャレンジド」は、障害者に対して「挑戦」を強いるような印象もありますが、この言葉を提唱している竹中ナミさん(社会福祉法人「プロップ・ステーション」理事長)は、「あえて『チャレンジド』と呼ぶのは『障害者、障がい者』という言葉には『その人に何かを期待する』イメージが全くないからです」「支えられる側の人がどんどん支える側になって初めて、本当に必要なセーフティーネットのための財政的な裏づけもできる」と話しています(「ハンディある人も支える側に」朝日新聞2010年7月9日)。「障害者というネガティブな言葉で呼ばれなくなり、チャレンジドという自覚を持ったことで、前向きに生きられるようになった人をたくさん見てきました」(「障害はマイナスじゃない 時代を駆ける・竹中ナミ1」毎日新聞2011年2月8日)とも。

 では、どんな表記がよいと思われているのでしょうか。「あなたの考えに最も合っている表記はどれですか」という質問に対し、「障害者」27.5%(障害がある人では28.2%)、「障がい者」19.6%(同17.2%)、「障碍者」2.4%(同2.2%)、「障害のある人」21.6%(同20.7%)、「チャレンジド」3.4%(同3.7%)、「これら以外の表記」11.9%(同13.6%)、「分からない」13.5%(同14.4%)という結果でした。

 言葉が社会に与える影響は大きなものがあります。時には言葉の力が大きく物事を動かすのも確かです。ただ、「害」の字が悪い意味だから障害者が差別されるのか、表記を変えれば差別がなくなるのか、といえば、そう簡単ではないでしょう。「害」の字に傷つく人の気持ちを尊重することは大切ですが、「碍」も本来はあまり良い意味で使われていたわけではありません(参考:「『障害』の表記に関する検討結果について」=障がい者制度改革推進会議資料、文化審議会第41回国語分科会漢字小委員会議事録)。「障害」をやめて「障がい」や「障碍」を使うようにしたとしても、根本にある差別の問題が解決しないと、言い換えた言葉にまた悪いイメージがまとわりついてしまうことにもなりかねません。単に言葉の問題としてではなく、障害のある人もない人も生きやすい社会をつくっていく努力が必要ではないかと思います。

■本

「差別語・不快語」(小林健治著、にんげん出版)
 豊富な実例を通して、差別問題への理解を深めるのに役立つ。マニュアル的な言い換えを排し、差別の実態と言葉が持つ差別性を理解したうえで、代替する表現を探ることは、新たな言語の創造を伴う文化的営みであると説いている。

■イベント

「人権アートプロジェクト」ポスター展=6月20日~7月1日
 東京・汐留の電通本社ビル1階特設ギャラリー。電通と女子美術大学、武蔵野美術大学、東京芸術大学、多摩美術大学が共同で作ったポスターを展示する。電通の人権スローガンと美術大学の学生が考えたビジュアルデザインの組み合わせ。

■アラカルト

全国初、女性理事長就任へ 高知信用金庫(6/10大阪本社版)
 高知信用金庫(高知市)は、山本正男理事長(81)が会長に就き、後任に山崎久留美理事(52)が昇格する人事を内定した。全国信用金庫協会(東京)によると、全国の信金で、女性が理事長に就くのは初めてという。20日に正式に決める。 山崎氏は1977年に高知信金に入り、窓口業務の機械化などに手腕を発揮した。2005年から常勤理事を務めている。理事長就任にあたって「事業者や個人のお客様の『幸せの品質向上』を追求していく」とコメントした。

【北海道】ハンセン病問題、子どもに啓発提言(6/9)
 国の隔離政策が道内でどのように進められたかを調べる「道ハンセン病問題を検証する会議」が報告書をまとめ、8日、高橋はるみ知事に提出した。元患者やその家族が長年、差別や偏見に苦しんだ実態を盛り込んだほか、問題を風化させないために子どもへの啓発に取り組むよう提言した。検証会議は元患者からの要望で、昨年4月に発足。元患者や弁護士、支援団体のメンバーが道内出身の元患者らから聞き取り調査するとともに、当時の資料や新聞記事などを分析した。

【群馬】前橋でシングルマザー支援講座 19日、働き方を伝授(6/4)
 「シングルマザーのための」と銘打った「職場コミュニケーションセミナー」が19日、群馬県前橋市新前橋町の県社会福祉総合センターで開かれる。県母子寡婦福祉協議会の主催。子育てとの両立で働くが思い通りにならず、収入も多くないひとり親を支援する狙い。

木曜サロン好評 障害者団体・天文台が協力 三鷹「星と風のカフェ」 /東京都拡大2日のサロンでは、東大生のサークル「CAST」のメンバーが実験を交え活動を紹介した=三鷹市
【多摩】木曜サロン好評 三鷹「星と風のカフェ」(6/9)
 市民が帰宅の足を止めてふらりと立ち寄り、天文や科学をテーマに語り合う。そんなサロンが毎週木曜の夜、三鷹市で開かれている。障害者団体が市の委託で運営する「星と風のカフェ」(下連雀3丁目)と国立天文台(大沢2丁目)が協力して3年前に始まったユニークな取り組みだ。

【神奈川】虐待通報、医療機関から倍増 横浜市「連携が機能」(6/9)
 神奈川県横浜市児童相談所に連絡があった2010年度の新規の虐待把握件数は626件で、前年より94件減った。このうち医療機関から通報が端緒となったものは43件。前年度の20件と比べて2倍以上に増えた。市が発表した。市によると、626件の情報源は、警察が最も多く126件(前年140件)、次いで学校の121件(同134件)だった。

【愛知】スペシャル五輪、夏こそ金 愛知・小牧の岡元さん出場(6/14)
 ギリシャのアテネで25日に開幕する知的発達障害者のスポーツの祭典「スペシャルオリンピックス(SO)夏季世界大会」に、愛知県小牧市光ケ丘の岡元彩子(あやこ)さん(26)が、冬季のスキーに続き、ボウリングで出場する。愛知から夏の世界大会に出るのは初めて。冬夏の連続出場は、52人の日本選手のうち2人しかいない。

【愛知】障害児の夢 寄付に託す(6/2)
 自前で障害者施設を建てようと、バザーなどの活動で15年間資金作りに取り組んできた尾張旭市の団体が、積み立てた120万円を市と近郊の計8施設に15万円ずつ寄付している。様々な事情で計画はあきらめ、一区切りをつけることに。寄付を受けた施設は「活動の意味は大きい。大切に使いたい」としている。

【三重】「被災で要援護」申請続々 伊賀市(6/13)
 東海・東南海・南海地震などの大規模災害や台風被害に備えるため、伊賀市が避難時に支援が必要とみられる人(要援護者)のリストアップを進めている。東日本大震災の影響もあり、リストへの登録希望者は、5月初めの呼びかけ開始からわずか1カ月で1万人近くになった。台風シーズン前の8月下旬には関係者にリストを配る。

【三重】要援護者台帳整備へ 地理情報システム活用(6/2)
 いなべ市は、市内の高齢者や障害者など要援護者約1500人についての情報をデータベース化し、地理情報システム(GIS)に連動した台帳を整備すると発表した。2日開会の市議会定例会に、整備費500万円を盛り込んだ一般会計補正予算案を提出する。

【三重】海外の若者とネット交流 障害者福祉施設(6/3)
 松阪市小阿坂町の障害者福祉施設「まつさかチャレンジドプレイス希望の園」(村林真哉園長)で2日、園生たちがポーランドとチリを結んだインターネットのテレビ電話を使って、異国の若者たちと交流した。異文化交流をめざす同市のグループ「アスク10パーソンズ」の代表で、三重大付属中学非常勤講師の小浜照重さん(54)=同市猟師町=らが企画した。

【大阪】スペシャルオリンピックス、大阪から5選手出場(6/11)
 ギリシャ・アテネで25日に開幕する知的障害者のスポーツの祭典「スペシャルオリンピックス夏季世界大会」に、大阪府内から5人の選手が出場することが決まった。12日に大阪市内で選手団の壮行会がある。 出場するのは水泳の北野浩佑(17)、陸上の山崎大樹(20)、バドミントンの竹中有花(28)、ボウリングの溝上絵理(16)、ゴルフの小滝一徳(24)の5選手。このほか、コーチ4人も参加する。

【愛媛】日常の美、切り取る 脳性まひの女性が愛媛・松山で個展(6/14)
 愛媛県西条市出身で、脳性まひの田坂暁子さん(58)が、松山市湊町4丁目の「アートギャラリー風」で、初めての個展を開いている。病院暮らしの田坂さんのはり絵、水彩画など約70点には、何げない日常の一瞬に潜む「美」が切り取られている。田坂さんは、脳に酸素が行き渡らず仮死状態で生まれ、脳性まひの1級障害者になった。ずっと寝たきり生活だ。 三十数年前。田坂さんは同じ病室にいた脳性まひの友人がはり絵をするのを見て、自分もやってみたいと思うようになった。今では1週間の半分、1日2時間ほど制作する。

(週刊まちぶら 第216号)はりまや町かいわい 高知 障害者アートの拠点/高知県拡大メガラプトル、アベリサウルス、シャントゥンゴサウルス……。尾崎憧汰郎さん(15)が図鑑を見て作った恐竜のフィギュア=高知市はりまや町3丁目のアートセンター画楽
【高知】障害者アート拠点「画楽」(6/7)
 JR高知駅からほど近くの江ノ口川沿いに「アートセンター画楽(がらく)」がある。障害のある人たちが集うアトリエだ。画用紙やキャンバスをのぞくと、そこに描かれるのは抽象的な図形、アンパンマン、太陽、バス、人の顔……。カラフルな原色があふれる部屋で、静まりかえるほど一心不乱に制作に打ち込んでいた。

【大分】障害者国際卓球で板井さん銀メダル(6/10)
 豪州で先月あった障害者の国際卓球選手権大会で、大分市の板井淳記さん(24)が個人戦、団体戦ともに銀メダルに輝いた。板井さんは、先天性脳性まひで、生まれつき両手両足が不自由。立ってプレーする中では最も障害の重い「クラス6」で競技する。

【宮崎】障害者と地域結ぶイベント、12年で幕 宮崎・小林(6/11)
 宮崎県小林市とえびの市、高原町の福祉施設を利用する障害児らが歌や踊り、太鼓演奏などを披露するイベント「ゆめの輪コミュニケーション」が12日、小林市文化会館で開かれる。障害のある人と地域の交流などを目的に1999年に始まり、今回で12回目だが、これでラストステージになる。 舞台は2部構成。1部では障害者が舞台に上がり、5施設に通う幼児から成人の計約200人が参加。2部では、地元で活動している舞踊団体や保育園児ら約100人が、地域芸能や手話合唱、ダンスなどを発表する。昨年は口蹄疫(こうていえき)の影響で中止を強いられた。

【宮崎】障害者が働く場 保育園内に(6/8)
 福祉作業所などを運営する宮崎県都城市のNPO法人「こころ」が、地元産の野菜や雑貨、海産物、菓子などを売る「wakuwakuショップこころ」を同市都原町に開店した。障害のある人たちの働ける場を立地したのは、住宅街にある保育園の園庭。地域との共生という夢も乗せて営業をスタートさせた。

【熊本】いじめ「ちょっとの気持ちでしないで」(6/7)
 14年前、高校生だった長男を同級生らの集団暴行で亡くし、現在は犯罪被害者の支援をしている兵庫県稲美町の高松由美子さん(56)が6日、熊本市立江原中学校で講演。約300人の生徒を前に「ちょっとこれぐらい、という気持ちでいじめをしないで」と訴えた。