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【社説】

GDPマイナス 官民で負の連鎖断て

 今年一~三月期の国内総生産(GDP)が年率3・4%減となった。コロナ禍以降初の数値であり、四~六月期はさらなる悪化が確実な情勢だ。官民一体となり負の連鎖を断ち切る時がきている。

 今回の結果は年初から政府の緊急事態宣言前までの経済状況を反映している。悪化した最大の要因はGDPの約六割を占める個人消費の落ち込みだ。自粛ムードは二月から始まっており、予想通りの結果といえる。

 心配なのは宣言後の実態を表す四~六月期で、経済活動の自粛が一気に加速した時期だ。年率20%以上の歴史的なマイナス成長を覚悟する必要もあるだろう。

 先週、アパレル大手レナウンが極度の売り上げ不振により経営破綻した。コロナ禍の影響が中小だけでなく大企業にも及びつつあることを裏付けた形だ。

 政府は追加対策となる第二次補正予算案を検討している。経済成長の悪化を受け、補正の中に規模の大小を問わず企業の急激な経営悪化を防ぐための施策を確実に盛り込むべきだ。

 具体的には政府系金融機関を通じた事実上の政府保証による融資枠の大胆な拡充策を直ちに実現すべきだ。同時に、金融機能強化法の改正などによる金融機関への支援強化も実行してほしい。すでに貸し渋りは各地で起きている。貸し手側の経営不安を取り除き、資金がスムーズに流れる環境を早急に再整備する必要がある。

 こうした産業界全体への公的な支援を実施する際、必要なのは政府による国民への丁寧な説明だ。膨大な内部留保を保有する大企業や、かつて公的資金注入で危機を脱した銀行への支援には必ず強い批判が起きる。

 大企業の危機は中小へと波及する可能性が極めて高く、金融機関の経営不安は国内全体の資金不足に直結する。この現実を、安倍晋三首相が自らの言葉で説明しなければ国民は納得しないはずだ。

 トヨタ自動車の豊田章男社長は十二日の会見で「技術と技能を有した人材を守り抜いてきた企業が日本にはたくさんある。そういう企業を応援できる社会が今こそ必要だ」と述べた。コロナ禍が続いても働く人々の尊厳を最優先で守る姿勢を示した発言だ。

 先行きが見えない不安の中で今求められるのは、実績に裏付けられた経営者の揺るぎない決意だ。国の支援に頼るだけでなく、とりわけ大企業には産業を裾野ごと救う知恵と気概を求めたい。 

 

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