「ルートの中は正(またはゼロ)でなければならない。」とよく言われます。
しかし、複素数(虚数)の計算ではルートの中が負になることがあります。
どういうことでしょうか?
ルートの中は負の数でもよいのではないでしょうか?
かならず、正にしなくてはならないのでしょうか?
ルートの中は正またはゼロ
「ルートの中は正(またはゼロ)でなければならない。」は、もう少し詳しく正確に言うと
「計算する時には、ルートの中は正(またはゼロ)でなければならない。」ということです。
下の例でこの理由がすぐにわかると思います。
これは間違った計算の例です。
なぜ間違っているのかというと、ルートの中が負であるにもかかわらず下記の公式を使っているからです。
a−−√b√=ab−−√ この公式は、a≧0,b≧0の時に使います。
ちなみに、先ほどの例の正しい答えは、
ですので、
となります。
ルートの中が負であっても意味はある
実は計算上の問題はありますが、ルートの中が負であっても、数としての意味はあります。
たとえば、
となる数を意味しています。
ここで注意があります。
というのは、2乗すると
ただ、その一つを
と表すことができます。
ルートの中が負の場合には、複数の候補の中のどれか一つを表しているのです。
ルートの中が正の場合は、このような不特定さの曖昧さはありません。
なぜなら、ルートの中が正の場合は、正の
例えば、
つまり、
3乗根の場合も同じです。
例えば、3乗して27になる数は3つあります。
具体的には、
の3つです。このなかで、正の実数は、3だけです(のこりの二つは正の実数どころか実数ですらない)から、
ルートの中が正の場合は、必ずあるひとつの正の実数を表しているのです。
繰り返しになりますが、ルートの中が負の場合はこのように一つに特定できません。
さきほどの例に似せた例をあげますと、
例えば、3乗して-27になる数は3つあります。
具体的には、
の3つです。このなかに、正の実数はありません(負の実数はあります)。
ですから、
のどれか一つを表しているというのが普通の定義です。
ただ、3乗根の場合はルートの意味を拡大解釈しただ一つの負の実数を対応させる場合もあります。
一般に奇数乗根の場合は、ルートの中が負である場合、ただ一つの負の実数に対応できます。
それは
このように、奇数乗根に限ればルート意味を拡大して定義することも可能です。
しかし、このように意味解釈を拡大してもあまりうれしいことはありません。
偶数の場合はルートの中が正、奇数の場合は、正または負でもよい。
このような場合分けによる定義は使いかってがよくないのです。
奇数乗根の場合は、最初から-1をルートの外に出し、
の一つだけ公式を認めておけば、ルートの中を正に統一できます。
ルートの中を正にする、この絞り込みが効いた定義の方がいろいろと計算するうえでも有利です。
4乗根の例も考えてみます。
例えば、
そのような数は4つありますが、この中に正の実数は一つもありません(すべて複素数になります)。
したがって、
また、ルートの中が負(あるいは複素数)を許してしまうと、分数や実数のべき乗根へと話を広げていく時にも困難を生じます。
一般に、2乗根(平方根)を除いた偶数乗根の計算は、かなりやっかいです。
ルートの中が負でも使える公式
ルート計算の公式をみると、ルートの公式はルートの中が正であることが前提になっています。
その公式へ橋渡しする公式が下記の公式です。
平方根の場合は、虚数単位を
i とすると
−A−−−√=A−−√i
A≥0 かつn が奇数の場合
−A−−−√n=−A−−√n
上記の二つの公式を駆使して、ルートの中を正にすると各種のルートの公式が使えるようになります。
唯一ルートの中が負でもさらには複素数でも使える公式があります。
(A−−√n)n=A ただし、nは0でない整数。
この公式だけは、
A が負でも複素数でも使えます。
これは公式というよりルートの定義式そのものとも言えます。
まとめ
- ルートの中が正にする目的は正しく計算するため(公式を使うため)。
- ルートの中が負であっても、数としての意味はあるが、計算公式はほぼ使えない。
- ルートの中が負であっても、ルートの中を正に変換すれば、計算をすすめることができる。
- ルートの中が正である時には、それはある一つの正の実数を表しているが、負の場合は、一つの数を表しているとは限らない。これが、ルートの中が正でないと計算がうまくいかない原因となっている。
余談
実は、ルートの中が正である理由をないがしろにしても、実際の計算ではそう困りません。
そのようなことを気にしなくても、ほとんどは正しい答えがでてきます。
しかし、この事がわかっていないと、3次方程式の解の公式の意味は正確に捉えられないはずです。
3次方程式の解の公式では2つの3乗根がでてきますが、その三乗根の中は一般に複素数です(正の実数とは限りません)。
このことが、3次の解の公式が今一つ実用的にならない一つの理由となっています(3乗根が3通りの複素数を表しているため)。
すこし話がそれますが、3次方程式の解の公式は、
の形をしています。
したがって、
解の公式では、この9通りのなかから、3通りだけを選別する重要な工程があります。
9つの候補から、3つに絞り込んでこそ、解の公式のできあがりです。
過去にネットで3次の解の公式を説明しているサイトがありました。そのサイトの管理者は、教師を引退した賢威のある方のようでしたが、ルートの中が複素数であることをあまり気にせずに計算しているようでしたので、その事について指摘したことがあります。ただ、私の説明の仕方が悪かったのか、私の指摘は理解してもらえてなかったようでした(サイトアラシの扱いにされてるようでした)。
ここで私が言いたい事は、決してそのサイトや製作者を批判することではありません。
ルートの中が正でない場合には、2次の場合はともかく、かなりの注意を要するのですが、これを伝えるのが結構難しく、私の文章の拙さもあるのですが、専門知識を持っている数学教師に対してでさえも、うまく伝わらなかったということです。
ルートの中が一般の複素数の場合はもちろん、負の実数であっても、3乗根を含む高次のルート計算はそう単純ではありません。
しかし、ルートの中が正であれば、高次であってもうまく計算できます。
ルートの中が文字式など変数になっている場合には、必ず、そのルートの中が正になっているか確認しながら計算する必要があります。
ルートの中が正でない場合に、あたかもルートの中が正であるかのような計算式として数式を見ててしまうと、正しく数式を認識できていないことになります。
この場合、例えば3次方程式の解の公式が表している正しい数の意味を取り逃してしまいます。