放電とは、電極間にかかる電位差によって、その間に存在する気体(空気等)が絶縁破壊され、電子を放出して電流が流れる現象です。これには、雷のような火花放電、コロナ放電、アーク放電、グロー放電があります。また、コンデンサや電池においては、蓄積された電荷を失う現象です。放電は電極間の気体で発生するもので、低圧の気体中ではより低い電位差で発生します。
1. 火花放電(フラッシオーバ)
電極間に高電圧が加わると、気体分子が高電圧によって加速された電子と衝突して電離し、生成された正イオンが負極に衝突する際に起こる二次電子放出により、負極より電子が電極間の空間に供給され、火花が観察される現象で、不連続な過渡的現象となります。この瞬間前をコロナ放電といいます。
図1に示すように、避雷器(LA)は、雷過電圧や開閉過電圧を放電により制限し、送配電系統に設置される機器や線路を保護し、かつ続流を短時間のうちに遮断して、系統の正常な状態を乱すことなく原状に自復する機能を持つ装置です。その特性は、主に放電開始電圧と制限電圧で規定されています。制限電圧とは、放電しているときの避雷器の両端電圧です。放電電圧とは、避雷器が放電を開始する電圧です。
図2は、架空地線を簡単に表したものです。フラッシオーバ(火花放電)とは、直撃雷や誘導雷などの異常電圧により、送電線から鉄塔にがいしを通じて放電する現象のことで、逆フラッシオーバとは、鉄塔や架空地線の直撃雷や誘導雷により進入した異常電圧により、鉄塔から送電線にがいしを通じて放電する現象のことです。
2. コロナ放電
尖った電極の周りに不均一な電界が生じることにより起こる持続的な放電で、流れる電流は小さく、数〔μA〕程度です。火花放電になる前の状態で、図3の電気集じん器などに応用されています。
電気集じん器は、電極に高電圧をかけ、ガス中の粒子をコロナ放電で放電電極から放出される負イオンによって帯電させ、分離・除去します。
また、送電線においても雨天時などにはしばしば発生し、チリチリとした音やモヤが発生します。送配電線路や変電機器等にコロナ障害が発生するもので、気圧が高くなるほどコロナ臨界電圧は上昇します。気温や絶対導体表面にコロナが発生する最小の電圧はコロナ臨界電圧と呼ばれています。
その値は、標準の気象条件(気温20〔℃〕)、気圧1 013〔hPa〕、絶対湿度11〔〕)では、導体表面での電位の傾きが波高値で約30〔kV/cm〕に相当します。
コロナが発生すると、電力損失が発生するだけでなく、導体の腐食や電線の振動などを生じるおそれもあります。コロナ電流には高周波成分が含まれるため、コロナの発生は可聴雑音や電波障害の原因にもなり、電線間隔が大きくなるほど、また、導体の等価半径が大きくなるほどコロナ臨界電圧は高くなります。このため、相導体の多導体化はコロナ障害対策として有効となります。
3. アーク放電
負極からの電子放出により、負極が加熱され、熱電子放出による熱陰極アークと、負極表面に存在する非常に強い電界により直接電子が放出される電界アークがあります。照明ランプやアーク溶接に利用されています。蛍光灯では、低気圧水銀蒸気中における熱陰極アークが利用されています。
図4の遮断器は一般的に、電流遮断時にアークが発生するので、ガス遮断器では圧縮ガス(六ふっ化硫黄、SF6)を吹き付けることで、アークを早く消弧させることができます。
4. グロー放電
低圧気体中の持続的な放電現象で、電極間の荷電粒子供給が正イオンの負極への衝突の際に起こる二次電子放出を起こし、その電子が負極・正極間を移動することにより気体分子が電離し、大きな電流になります。電流が増加するとアーク放電になります。放電管に封入したガスの種類によって、いろいろな色に発光します。
図5の蛍光ランプの始動方式の一つである予熱始動方式は、電流安定用のチョークコイルと点灯管より構成されています。点灯管には管内にバイメタルスイッチとアルゴンを封入した放電管式のものが広く利用されてきています。点灯管は蛍光ランプのフィラメントを通してランプと並列に接続されていて、点灯回路に電源を投入すると、点灯管内でグロー放電が起こり、放電による熱によってスイッチが閉じ、蛍光ランプのフィラメントを予熱します。
スイッチが閉じて放電が停止すると、スイッチが冷却し開こうとします。このとき、チョークコイルのインダクタンスの作用によってスパイク電圧が発生し、これによってランプが点灯します。この方式は、ランプ点灯中はスイッチが動作せず、フィラメントの電力損がないという特徴を持ちますが、電源投入から点灯するまでに多少の時間を要すること、電源電圧や周囲温度が低下すると始動し難いという欠点があります。