※諸般の事情により、メモ書きでの更新です※
※本日のネタは「からあげ速報」さんがすでに取り上げていますが……僕がそれを読んだ段階で、すでにこの記事を書き始めていたので、気にせず書き上げました、テヘペロ
「からあげ速報」さんの記事は↓。良い記事です、マジで
超一流経済評論家(笑)として知られる上念司さん
彼は自民党が野党だった時代に「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の発起人の1人をつとめたほど、政治的に極めて偏った人物です
人が政治的に偏向しているのは問題ないーーむしらそれでこそ大人だと僕は思っていますが、「偏向」それ自体を否定的にとらえている人ほど上念司さんを支持しているようで、どうにもわけがわかりません
まあ、それはともかくとして、今日は上念司さんがいかに信用の置けない人物であるか、というお話です
検察官定年延長法案とハッシュタグ・アクティヴィズム
2020年5月、自民党による検察官定年延長法案をめぐって、多くの市民がTwitter上で反対を表明しました
#検察庁法改正案に抗議します
といった具合に、#MeToo 運動と同じく、ハッシュタグをつかった抗議運動(ハッシュタグ・アクティヴィズム)は大いに盛り上がりました
多くの著名人たちもハッシュタグをつかって抗議に参加したこともあってか、数十万、数百万ともいわれる人々にこのプロテストが広がったのです
これに対し、安倍晋三応援団たる上念司さんは反発。「スパムをつかった偽りのトレンドだ。その証拠として、投稿の99%は削除されている!」とし、批判しました
「99%削除」の根拠こそ削除された
さて、上の画像でもわかるように、上念司さんが「99%削除」の根拠としているグラフこそ、すでに削除されています
彼が根拠としたのは、元システムエンジニアを名乗るアカウントのツイートです
では、元システムエンジニアさんは、なぜ削除したのか?
答えは簡単、自分の誤りに気づいたからです(リツイートの数の少なさにご注目)
自身の誤りに気づいた元システムエンジニアの方は、それを謝りに行ったのに上念司さんは無反応でした(5/12 19時)。気づかなかったのか、あるいは自説には不用だから切り捨てたのか
さて、元システムエンジニアの方を目覚めさせたのは何だったのか
それが東京大学准教授・鳥海不二夫さんによるこちらのnoteです。このnoteは多くのメディアでも取り上げられました
鳥海不二夫さんのnoteによれば、
"・「#検察庁法改正案に抗議します」タグをツイートした人にスパムやボットは多くない
・拡散に関わったユーザは588,065アカウント
・450万ツイート拡散されたが,その拡散の半分は一部のアカウント(全体の2%)によるもの
・リツイート数が10回以下のアカウントによる拡散数は100万ツイート
・「#検察庁法改正案に抗議」しない側の反応はあんまりない"
というのが結論なわけですね
上念司の「スパム説」動画の主張
上念司さんは、今回のハッシュタグ・アクティヴィズムを「スパムによってつくられたもの」だとする動画をいくつか公開しています
「Twitterで検察庁法案がトレンド入りしたカラクリを完全解説!といってもWEBマーケティングの定番テクニックですが、、、 上念司チャンネル ニュースの虎側」
0:19~
"トレンドはつくられたものです"
"トレンドがつくられたものであることを偽装するために、マスコミと芸能人の皆様はつかわれちゃったのかな"
上念司さんはここでトレンドのつくり方を解説しています
その方法として、
① ツイートの少ない深夜の時間帯に大量に同一ハッシュタグでツイート
② 単純なリツイートでは、Twitterのトレンドにのらない。しかし同一のハッシュタグをつかって「あ #検察庁法改正案に抗議します」「い #検察庁法改正案に抗議します」「う #検察庁法改正案に抗議します」といった具合にひとつのアカウントが連続で投稿すればトレンドはつくれる
③一度トレンド入りすれば、深夜にトレンドをつくりだした首謀者と結託したマスコミが朝になって騒ぎだす
……というのが、トレンド入りしたカラクリであり、今回のハッシュタグ・アクティヴィズムではこれがつかわれたと主張しているのです
……なんというか、ただただ単純に馬鹿ですね
上念司の主張に根拠無し。ただの妄想が垂れ流されていた!
言うまでもなく「◯◯すればトレンドづくりが可能」ということと、「トレンドをつくった首謀者は◯◯した」ということは、まったく別の話です
これについて「法案が通れば政権は悪用が可能」と「政権が悪用するために法案を通したい」の関係性を同一視する人もいるかもしれませんが……あなたがもし本当にそう思うなら、時制を考えてください。刃物を持って町を歩いていた人が、人殺しをしたとは限りません。しかし、刃物を持って町に出ようとする人は、人殺しをする可能性があります
では、上念司さんの主張について、ひとつひとつ見ていきましょう
①深夜にトレンド入り?
①については、特に問題がないですね。トレンド狙いで深夜にハッシュタグ・アクティヴィズムをはじめることは、なんら悪いことではありません
……が、しかし。そもそも「#検察庁法改正案に抗議します」が盛り上がったのは深夜ではありません
各種の報道にもあるように、最初のツイートはこちら。2020年5月8日19時40分です
「ねとらぼ」さんによると、記事の拡散状態は以下のとおり
"「1人でTwitterデモ」という言葉とともに作られたこのハッシュタグは、当初はそれほど急速に拡散されたわけではなく、8日当日時点では関連ツイート数は約500件程度でした"
"それが、翌9日の16時頃から徐々にツイート数が伸び始め、夜22時頃には1時間あたりのツイート数が10万件を突破"
「ねとらぼ」さんの記事には、どの時間帯にツイートが広まったのかグラフにも示されており、それを見ても「深夜に盛り上がった!つくられたトレンドだ!」などと言えないことは明らかです
上念司さんは、なにをもってトレンド入りを深夜だと言ったのでしょうか? 妄想でしょうか?
②文章部分を一文字変えただけの同一#を投稿するアカウントがいた?
たしかにそういったアカウントがいるにはいました
それは、上念さんも動画で言及(1:50~)した、こちらの人が指摘しているアカウントのとおりです
ですが、「からあげ速報」さんの記事でも指摘するように、その数は極めて少数
また、前述した鳥海不二夫さんのnoteや「ねとらぼ」さんの追加記事(https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/22436/)を見ても、こうしたアカウントが少なかったことはおわかりいただけるかと思います
まさか上念司さんは、ひとつふたつの事例を見て、それが全体だと思ってしまったのでしょうか?
これは1人のお金持ちがパーっと消費する様を見て、「なんという好景気だ!」と主張するのと同じことです
こうまで無茶苦茶なデータの取り扱いを見せつけられてしまうと、上念司さんの経済の話も信用できなくなってきますね
③首謀者とマスコミが連携?
2:30~
"(深夜にスパムによってトレンドにのった)次の日の朝に、おおっこれがトレンドになってるってことで、ニュースになるわけですよ"
"今回はですね、なぜか待ち構えていたようにニュースにしています"
そこで上念司さんが槍玉にあげたのは、
「#検察庁法改正案に抗議します 投稿470万件」東京新聞(5/11朝刊)
「「#検察庁法改正案に抗議します」投稿広がる 380万超に」NHK(5/10 16:11)
「検察庁法改正案に抗議します…著名人ら投稿」日テレ(5/11 0:53)
「検察庁法改正に抗議ツイート 野党、著名人ら380万超」日経(5/10 21:31)
記事の投稿日時にご注目ください
……ま、待ち構えていたように?
先ほどの「ねとらぼ」さんから、もう一度引用しましょう
"「1人でTwitterデモ」という言葉とともに作られたこのハッシュタグは、当初はそれほど急速に拡散されたわけではなく、8日当日時点では関連ツイート数は約500件程度でした"
"翌9日の16時頃から徐々にツイート数が伸び始め、夜22時頃には1時間あたりのツイート数が10万件を突破"
マスコミが待ち構えていたなら、遅くとも9日の夜ーー最悪10日の朝にはマスメディアが記事にしているはずです
しかし上念司さんが槍玉に上げた記事は、早いもので5月10日の夕方。実際のところ「著名人」参加によってニュースバリューが出たからマスコミが食い付きはじめたのではないでしょうか?
まあ、もしかすると、もっと早くに記事を出したマスコミもあったのかもしれません(僕は確認できませんでしたが)
ですが、そうだとすると、なぜ上念司さんはその記事を槍玉にあげなかったのでしょうか?
億に1の可能性で、そんな記事が見つかったとしても「なぜ上念司さんはその記事を槍玉にあげなかったのか」という疑問が消えないことは言うまでもありません
と、ここまで、①深夜にトレンド入り?、②文章部分を一文字変えただけの同一#を投稿するアカウントがいた?、③首謀者とマスコミが連携?、を検証してきましたが……
上念司さん、アウトー!
いやはや、まさか安倍晋三さんを首相に返り咲かせた原動力のひとつである「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の発起人が、ここまでヒドイとは思いませんでしたね
これは安倍晋三さんが首相に押し上げられた根拠の一部が、そもそも怪しくなってきます(あくまで極々一部ですよ!)
出た! 「99%削除」説の根拠!!
動画の続きを確認してみましょう
3:58~
"これ(スパム行為)、やりすぎるとどうなるか? 当然ね、Twitter社に検知されます。なにが起こるのかというと、BANされます"
"で、BANされたっていう証拠も出てますね"
はい、ここで前述した元システムエンジニアの方のツイートが画面に写し出されます
が、先ほども見たように、これは誤りです
……というか
自分で調べたわけでもない、裏付けを取ったわけでもない、どこの馬の骨とも知れない元システムエンジニアさんの言葉を信じて「これが真実だ!」と拡散してしまう人って……
ぶっちゃけ、作り話の代名詞と言われる「マックの女子高生」をそのまま信じるのと同レベルですよね
(「マックの女子高生」は、マクドナルドで女子高生が◯◯な会話をしていた! という伝聞ツイート群のこと。初期化には「女子高生がこんな馬鹿なことを言っていた」という女性蔑視なものでしたが、次第に◯◯は流行している! という文脈で使われるようになりました。伝聞ゆえに、エビデンスにならないことは明らかであり、現在ではかなりの部分が投稿者の創作と目されています)
上念司さんは、この「マックの女子高生」レベルの話を信じて、ずいぶんとイキッた発言をしてしまいます
5:55~
"BANされたということをもって、これをエビデンスとしてですね、今回のこれ、トレンドは、スタートはつくられたものだというふうに思います。思うというか、認定していいと思います、スタートはね"
"最初そうやってつくることによって、そっから波及されるものをマスコミはマッチポンプで報道して、報道を聞いた人が集まって、ってこういう感じですね"
7:55~
"これ(元システムエンジニアさんがつくったグラフ)を見ると、9割方(中略)工作員さんのツイートだった"
BANされたことがエビデンスだってー
これが許されるなら、「マックの女子高生」もエビデンスになるよねー
マスコミのマッチポンプだってー
もしそうなら、もっと早くに記事になってたよねー
…………馬鹿じゃねーの?
いや、上念司さん自体は、馬鹿を騙すのがお仕事だから、邪悪だとは思えど、馬鹿とは思わないんですよ
ただし、上念司さんに乗せられた人たちって……
その他の「スパム」説の動画
上念司さんが、今回のハッシュタグ・アクティヴィズムを「スパム」扱いしたのは、この動画だけではありません
「検察庁法案のハッシュタグがまたトレンドに上がったので、この騒動の本当の目的とバズらせる技の詳細を解説します 上念司チャンネル ニュースの虎側」(5/11)
鳥海不二夫さんのnoteを「トレンド入りする前とトレンド入りした後をごっちゃにしている」と批判(1:54~、3:00~)
その上で、
3:48~
"これがもしですよ、本当にその、450万人もの、全然関係無い人が、この問題に頭きてツイートしましたーっていうのがね、本当だったら、Twitter社がBANするわけがないですよね"
4:12~
"スパム認定されてBANされたって時点で、もう終わってるはずなんですよ。それをいくら数字むし返して、いろんなね、違うところに光あてようと、これはもう工作なんです。申し訳ないんですけど"
4:56~
"もちろんいいですよ、最初つくりトレンドで、ほんとに皆がついてきて、ほんとになっちゃったっつーんなら、いいですよ。これは本物です。たぶん、このいろいろ数字分析している人は、「最初はつくったかもしれないけど、これトレンドなってますから」と言いたいかも知れないんですけど、なってないんですよ。なぜならTwitterにBANされてるから(笑)"
5:13~
"もし本当だったら、TwitterもBANしないので。99%くらいBANされてる時点で、もう終わりです、はい。この議論終了なんです。いくら後づけで、こう、数字やってもですね、駄目なんですよね、はい。"
はい、BANされていませんでしたね(笑)
そもそも、なぜどこの馬の骨とも知れない元システムエンジニアのツイートを100%信用して、なぜ鳥海不二夫さんのnoteを信用しないのか理解不能です
こういうのを「選択的懐疑主義」(自分に都合の悪い情報にだけ懐疑主義を発揮する)といい、歴史修正主義でもよく使われる手法なので、この手口を知らなかった人は覚えておくといいですよ
上念司さんは、こうも言っています
7:48~
"(トレンドに)上がったってことと、(トレンドを)維持したっての、まったく別なんで。維持できなかった時点で、もうアウトなんで、ええ。そこはですね、どのような数字こねくりまわして言い訳しても、これは駄目なんです!流行ってなかったの、駄目なんです "
「維持できなかった」の根拠が、元システムエンジニアさんの誤認ツイートな時点で、どんな言い訳しても、これは駄目なんです!
「ハッシュドビーフは食べてないけど、ハッシュタグのトレンド操作について吉田渚さんでも分かるようにもう少し解説します 上念司チャンネル ニュースの虎側」(5/14)
この動画の悪質なところは、鳥海不二夫さんのnoteを「トレンド入り前とトレンド入り後をごっちゃにしている」とイチャモンをつけながら、自説にとって都合の良い部分を恣意的に引用しているところです
一方、99%削除説もまだ捨てていないようで……
4:40~
"やってた工作が100アカウントくらいで、そこに(工作に釣られた)本当のやつが一万人・数万人単位で来ちゃったんで、だから(報道された)数百万の2%ですよ。2%の工作がバレちゃったんです。それでBANされちゃったという"
だから、BANされたなんて事実、ないですからー
おわりに
2020年5月19日午前7時30分の段階で、
「Twitterで検察庁法案がトレンド入りしたカラクリを完全解説!といってもWEBマーケティングの定番テクニックですが、、、 上念司チャンネル ニュースの虎側」の再生回数は30万回
「検察庁法案のハッシュタグがまたトレンドに上がったので、この騒動の本当の目的とバズらせる技の詳細を解説します 上念司チャンネル ニュースの虎側」の再生回数は20万回
「ハッシュドビーフは食べてないけど、ハッシュタグのトレンド操作について吉田渚さんでも分かるようにもう少し解説します 上念司チャンネル ニュースの虎側」の再生回数は4.9万回
3つ合わせて55万再生!
YouTubeの報酬がどのように決まるのかは知りませんが、上念司さんにとっても、かなりおいしい稼ぎになったのではないでしょうか
しかも、その動画の主張を支える「エビデンス」とやらは、「マックの女子高生」レベルのTwitterの書き込みでしかなかったわけです
いやー、おいしい、おいしい。労することなく、本当はエビデンスもなにもない、ネット情報のテキトーな切り貼りでお金儲けできるなんて、おいしすぎでしょー
恐ろしいのは、このようなデータの取り扱いをする人物が、経済評論家として数多くの著作をものにしていることです。それだけ著作を出せているということは、それだけ売れていることの証でもあります
もし少なくない数の経営者が上念司さんの影響を受けているとすれば……日本経済の将来は暗いと言わざるをえないでしょう
……メモ書きのつもりが、わりと文章量多くなりましたね