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 熱中症への警戒が必要な季節になった。今年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた外出自粛や休業要請の影響で、生活のリズムを乱し、運動不足になっている人が多い。いっそうの体調管理が求められる。

 夏本番前のこの時期は、汗をかいて体を順応させる暑熱順化と呼ばれる機能が十分でなく、脱水症状を起こしやすい。加えて、マスクをつけていると体内に熱がこもりやすく、また、着脱が面倒なため水分補給を怠ってしまいがちだ。

 脱水は免疫力の低下につながり、ウイルス感染リスクも上げる。とりわけ体力の衰えている高齢者は、給水や冷房の適切な使用を心がけることが大切だ。

 総務省消防庁によると、昨年5~9月に熱中症で救急搬送された人は約7万1千人で、「災害級」とされる暑さになった一昨年は9万5千人にのぼった。毎年、数百人から1千人超が亡くなっている。

 コロナ禍で救急医療の現場も平時と異なり、院内感染が起きて受け入れを制限したところもあった。収束しないまま熱中症患者が相次げば、通常なら助かる命も危うくなりかねない。

 全国の医師らでつくる「教えて!『かくれ脱水』委員会」は医療現場への負荷を小さくするため、「熱中症の搬送者ゼロ」を緊急提言した。軽い運動や睡眠、バランスのとれた食事などを心がけ、自己治癒力を働かせようと呼びかけている。

 倦怠(けんたい)感や発熱などを伴う熱中症はコロナウイルス感染症の症状と似ていて、すぐに見分けるのは難しいという。手当てがされないままPCR検査の結果を待ち、容体を悪化させるようなことがないようにしたい。

 予防に欠かせないのが正しい知識と気象状況の把握だ。

 気象庁は、最高気温が35度以上になると予想される場合、高温注意情報を発表する。この夏は環境省の「暑さ指数」をもとに、特に危険な日に地域を指定して警戒アラートを出す。関東甲信地方で試行するが、伝達方法を工夫し、市民の反応も見ながら、とるべき行動をイメージできるようにしてほしい。

 教育現場では多くの地域で夏休み期間の短縮が予想される。専門家は、冷房をつけていても30分に1回程度は換気をするよう促す。感染症と熱中症の予防をどう両立させるか、国で関係者の意見を集約し、留意点を早期に周知すべきだ。

 家にいれば安心というわけでもない。熱中症で搬送される人の4割は住居内での発症だ。引き続き感染拡大への警戒から在宅時間が長くなりそうな今年、情報をしっかり収集・活用し、自分と家族の健康を守りたい。

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