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 すべての新幹線で、車いすを置くスペースのある座席の予約申し込みが、JR各社のサイトからできるようになった。

 乗り降りする駅での駅員の手配を待ったあと、決められた窓口で切符を受け取る必要はあるが、これまでは電話か駅の窓口での申し込みが基本だった。

 車いす対応席は1編成に1~2席のため、仲間と一緒の移動は難しい。大型の車いすだと、通路にはみ出すこともある。

 車いすで登院する木村英子参院議員が昨年、こうした制約を国会で指摘した。国土交通省が当事者とJRが参加する検討会を開いて、議論していた。

 引き続き、手配を待つ時間の短縮や、ネットで購入までできるしくみを検討する。グループでも乗れるよう、より多くの対応席がある車両の導入も議論を進めるという。

 日本には、障害のある人が安心して暮らせるよう、社会の障壁を取り除く合理的配慮をうたう法律がある。「他の者との平等を基礎」と記した国連の障害者権利条約も批准した。この20年ほどで駅のエレベーターは珍しくなくなり、通路や扉の幅を広くした車両が走る。

 ただ、車いすの規格や大きさはさまざまで、複数の介助者が必要な人も、一人で移動できる人もいる。合理的配慮の解は一つではない。車いすを使う人はどんな障壁に直面し、何を望んでいるのか。JR各社は継続して課題やニーズを把握し、今後の対応につなげる基礎データを蓄積してもらいたい。

 新幹線に乗る人はさまざまだ。高齢社会になり、車いすや歩行器、つえに頼る人はもっと増えるだろう。

 ベビーカーも含め、どんな人も利用しやすいように、改善していくことが望まれる。外国語でのわかりやすい案内なども、考えねばならない。

 対応席が限られてきたのは、公共交通のバリアフリーに関する政府の基準に沿った結果だ。よりよい環境へ、国交省はさらなる基準の見直しをいとわないでほしい。

 障害の程度や年齢にかかわらず、だれもが使いやすいユニバーサルデザインが当たり前の社会へと、変われるか。実現には、設計段階から当事者の意見を採り入れるなど、いっそうの発想の転換が求められる。

 新型コロナウイルスの影響でいまは移動が制限されている。しかし再び自由に行き来できる日に向けて、一人でも多くの車いすの人が公共交通機関をためらわずに使える環境を、整えていく必要がある。

 まずは新幹線でこうした動きを積み重ね、社会全体へと広げていきたい。

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