一連の経緯を巡っては、「慰安婦被害者が休むことができない場所」に休養施設をつくったとの批判が出ている。12年3月、明声教会の寄付で麻浦区延南洞に慰安婦被害者の宿泊施設が設けられたが、そことも遠く離れていた。麻浦区から現地までの距離は104キロメートルあり、車で2時間かかる。論争がエスカレートすると、正義記憶連帯は「敷地300坪以上、建物40坪以上」という用地選定基準に沿ったとした上で、「(安城の)候補地は自然に親しめる空間で、バス停から徒歩5分の距離にあり、アクセスが容易だ」と説明した。しかし、現地に向かうには安城市内から50分間隔で運転されるバスに乗る必要があり、バス停から462メートルは坂を登らなければならない。正義記憶連帯が根拠として挙げた「用地選定基準」も理解が得られていない。これまで安城の施設に滞在した慰安婦被害者女性は1人もいない。
(3)一時差し押さえも、相場以上で契約
挺対協は地場建設業者のK氏と13年9月12日に売買契約を結んだ。その直後の10月8日、国民健康保険公団は住宅のうち建物部分を差し押さえたが、3日後に解除した。そのせいか、実際に挺対協に所有権の移転登記が行われたのは10月16日のことだった。国民健康保険公団による差し押さえは、保険料の滞納などK氏の財政状況に問題が生じていたことを示す状況証拠だ。専門家は「家を急いで売却しなければならない事情が所有者にあったことを示しているが、売り手の要求通りに価格が決まったことは理解できない」とした上で、「価格が水増しされた契約書が作成され、実際の取引価格との差額を何者かが受け取った可能性がある」と指摘した。正義記憶連帯は「差し押さえの事実は契約当時に確認した登記簿謄本にも記載されていなかった」と主張した。