新型コロナウイルスの感染者が増え続ける中、感染者に対する誹謗(ひぼう)中傷や差別が深刻化している。新型コロナウイルスに親子で感染した仙台市在住の50代の会社員男性が産経新聞の取材に応じ、感染した当時の状況や、同じく感染した長男に対するネット上での誹謗中傷の実態について語った。(塔野岡剛)
男性によると、仙台大(宮城県柴田町)に通う20代の長男は3月26日、就職活動のために東京都内を訪れた。27日に仙台に戻り、部活動に参加したが、帰宅後に38度の発熱が出た。
その後、かかりつけ医に「東京から帰った後に発熱した」と伝えると、「CT検査を行う設備がない」と受診を断られ、新型コロナコールセンターに相談。保健所から連絡を受けて発熱外来を受診した。肺のCT検査などを行ったが「薬を飲んで熱が下がれば風邪」との診断を受けた。その後、31日にいったん熱が下がった。
父親である男性に症状が出たのは31日のことだ。38度の発熱などの症状が現れただけでなく、耳に水が入ったような違和感があったため、耳鼻科を受診。そこで風邪薬と解熱剤を処方された。4月2日には熱が下がったものの、4日に再び発熱、軽いせきやのどの痛みもあった。改めて受診した発熱外来でも「息子さんの風邪がうつったのではないか」と診断された。
風邪と診断されてから3日後の7日夜、男性はせきが激しくなり、同コールセンターに相談した。
「頻繁ではないが、出始めると止まらなくなった。(新型コロナウイルスによる肺炎で)志村けんさんが亡くなったという報道もあったので、恐怖を感じた。強い頭痛もあり、意識がぼーっとする感じがあった」と男性は当時を振り返る。
8日に保健所から連絡を受け症状を説明。PCR検査を受けた結果、陽性が判明し、10日に感染症指定医療機関へ入院した。
医師はその日のうちに「アビガンの服用に同意してもらえますか」と男性に尋ねた。渡された説明書には、新型コロナ患者の症状が改善されたとの記載があった。男性はこの日、アビガン8錠を服用。その後は退院まで朝夜4錠ずつ服用した。13日から症状は徐々に収まり、22日に退院することができた。
男性は「(感染後の)せきは胃や腹の底からこみ上げてくるような激しさがあった。経験したことがないようなせきだった。呼吸困難で死んでしまうかもしれないと思い、遺書を書くことも頭に浮かんだ」と語った。
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