@chablis777
シャブリ

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・(田中)古山裕一先生はおりんしゃあとでしょうか?
(裕一)はい? 何でしょう?
・(田中)失礼します!・(戸が開く音)
・(足音)
はい… はい。
うん? な… 何?
えっ? 何 何 何? 何…?
おお おお… うん? うん? うん?
私は 早稲田大学 応援部 5代目団長田中 隆ち言います!
へっ?この度は 我が応援部の新しか応援歌 作曲ば お引き受け頂きありがとうございま

す!
お お…? えっ 何の話?
僭越ながら エールば 送らせて頂きます!エ… エール?
おい!(一同)はい!
あの…。(一同)失礼します!あっ あの…。
何で? いや あの…。
フレ~!あの ちょっと…。
フレ~!声が…。
こ や ま~!
声が大きいです。それ~ はい!
(一同)フレ フレ 古山!フレ フレ 古山!声が…。
音? 音… ちょっと 何? これ。
すいません…通してもらってもいいですか?
よ~し 景気づけに いつもの いくばい!(一同)はい!
えっ?(一同)わ~っしょい わ~っしょい!
下ろして~!(一同)わ~っしょい!
♪~
♪「泣いて 生まれて 響く命」
♪「きっと嬉しくて 笑っているんだ」
♪「僕らはきっと 出逢うでしょう」
♪「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を 超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで 響くはエール」
♪「朝も昼も夜もずっと そこにある」
♪「暗闇にほら響け 一番星」
♪「愛する人よ 親愛なる友よ」
♪「星影に響くはエール」
痛い痛い 痛い痛い…。(音)ここ?
いや もっと上 上 上…。ここ?
あっ! もっと下 下…。ここ!
あ~ 痛い痛い! 痛い痛い…。(笑い声)
病院 行った方がいいかもね。
(田中)先生が やめろ言うたけん。浮いてる時に やんなくてもいいでしょ?
ああ…。 申し訳なかです!
おい! 罰として 腕立て100回ばい!(一同)はい!
いいから…。1!
あ~ もう いいから…。2!
やめて~!はい! あっ… やめ!
(一同)はい!
いろいろ あの… 混乱してっから…整理して話して。
事の始まりは 明治36年。
早稲田大学の野球部が慶應義塾大学に挑戦状を出したことから始まりました。
一時は両校の応援が盛り上がり過ぎて中止になるも東京六大学野球の創設をきっかけに復

活。
早慶戦は ラジオの普及に伴って空前の人気を呼び国民的関心事となりました。
♪~
(村田)これで慶應に 11連敗だ!
(小熊)ああ~! なんたる惨劇!
我が校始まって以来の屈辱だ!チクショー!
♪「慶應」
実は この連敗は慶應義塾の新しい応援歌「若き血」が歌われだした頃から始まったのです


当時 応援歌は 勝敗を左右するほどに大きな力を持っていたのです。
俺らにも 新しか応援歌が必要ばい。
今までん お行儀よか歌やなか。
心沸き立つ歌が必要ったい!
(一同)オ~!
詞は学生たちから公募しました。
(村田)貼ってこい!はい! 行くぞ!(一同)はい!
当時 早稲田の教授であった詩人 西條八十に選考を頼みました。
そ~れ かっ飛ばせ!かっ飛ばせ!
30の詞の中から 西條八十が選んだのは高等師範部3年生 住 治男の詞でした。
(八十)一字も直す必要がない。 いい詞だ。
それは その後 歌い継がれることになる「紺碧の空」でした。
おお~!(田中)すばらしか~!
これこそ 我々が求めとった歌ばい!
(拍手と歓声)
団長 団長! 曲は どうしましょう?
詞の募集に時間をかけ過ぎて秋の早慶戦まで 2週間しかありません。
あいた~…。事務局に相談しましょうか?
いや! また大御所の先生になる。
もっと若か…血潮の たぎっとう者がよか!
見込みがあるのですね!さすが団長です!
(拍手)団長… 団長~!
ん~! なか!
(一同)団長…。
いや 誰か… そげんやつ知らんね?
誰か知らないのか?いや~…。
(田中)佐藤 言い。
(潔子)う~ん もうちょっと言い方とか…。
♪~
何 あれ?さあ?
キャ~!♪~(久志の歌声)
♪~
失礼します!(悲鳴)
失礼します!失礼します!失礼します!
早稲田大学 応援部 5代目団長田中 隆ち言います。
先に連絡ば すべきやったとですが居ても立ってもおられんで押しかけてしまった失礼 おわ

びします。
(久志)幸太郎か!
これ 何?
応援歌か… 裕一さん やるかな~?
あいつ このままじゃ駄目になるよ。
何?
あっ… あっ あっ あっ…。
(田中)古山裕一先生はおりんしゃあとでしょうか?
・はい? 何でしょう?
(田中)失礼します!
待って 待って 待って… 待って!待って 待って!
ちょちょ… 止まって! 止まって!あっ!
というわけなの。久志が…。
本当は 裕一さんのちゃんと了承を得てから来てもらおうと思っとったんだけど。あ~ いやい

や…。
あの… 早稲田の応援歌とはこ… 光栄です。
おお…。ハハハハ…。
では お受け頂けるとですか?
いや あの… 今 いろいろあって自分の曲も作れずにいる状態であの… ごめんなさい。
そこば どげんかして!
(一同)お願いします!あっ…。
ど… どうしよう?
私は やるべきだと思う。
どうして?だって…。
早稲田の応援歌って結構 偉い人が作ってて小山田先生も名を連ねてる。
そ… そうなの!?第一応援歌です。
先生と同じ土俵に立つってことでしょう?
名誉なことじゃん!
し… 締め切りは?
10日後で お願いします!急ですね…。
秋の早慶戦が2週間後に迫っとうとです。
練習も… せんといかんけん。
何とぞ!おい。(佐藤)はい!
うん?
わ… 分かりました。あの… や や… やります。
やります…。うわ~!
先生~!
慶應の「若き血」ば 超えて下さい!
必ず!はい…。
とはいえ…裕一にも お仕事があるわけで。
ああっ あっ あっ… 廿日市さんは?
(杉山)こちらです。はい はい…。
♪~
(山藤)♪「丘を越えて 行こうよ」
♪「小春の空は 麗らかに澄みて」
♪「嬉しいこころ 湧くは胸の泉よ」
♪「讃えよ わが青春を」
♪「いざ聞け 遠く希望の鐘は鳴るよ」
(廿日市)いいよ これ! また当たるよ!
これ 売れちゃうよ!よかったですよね? これ。
いや~ 特に歌い出し!
♪「丘を越えて 行こうよ」廿日市さん… あの…。
何か 心が躍るよね… あっ!いたの? 何?
す… すいませんあの… か… 書けませんでした。
はあ!?す… すいません!
まあ いいよ。これが大ヒット間違いなしだから。
「酒は涙か溜息か」とは全く違う明るい曲ですね!
そう? どっちも分かりやすいよ。
君の作る曲より全然。ハハ…。
笑い事じゃないよ。じゃあ…。
お疲れさまでした。山藤君 よかったよ~!
すばらしい歌声だった!喉渇いたでしょ? 座って 座って。
ありがとうございます。廿日市さん あの じゃあ 僕…。
あっ 彼ね 木枯先生と同時に契約した古山よういち君。
あっ… ゆういちです。
(廿日市)まだヒット曲はおろか 一年で一枚も レコードを出してないんだよ。何か言ってや

ってよ。
山藤太郎です。 頑張って下さい。
あ… ありがとうございます。(山藤)ご卒業は どちらですか?
福島商業です。
彼はね 国際作曲コンクール…だったっけ?
それで 二等だったの。
勉強は どちらで?独学です。
(廿日市)アハハハ… 笑っちゃうよね独学だって。 ハハハハ…。
この山藤君はね 慶應義塾からの東京音楽学校 声楽科 エリートだ。
慶應から 東音ですか?はい。
どうしても 歌がやりたくて。
何で こんなことしてるんですか?
家庭の事情で お金が必要なんです。なので… 山藤太郎も偽名です。
あっ すいません…余計なこと聞いてしまいまして。
えっ ちょっと待って。今の質問 どういう意味?いや…。
ねえ… 「何で こんなことを」って。あっ いや…。
ちょっと 古山君?あっ いや…。返答によっちゃ 俺 怒るよ。
違う あの… 変な意味じゃなくて…。えっ? うん? うん?
(ドアが開く音)(木枯)廿日市さん。
は~い 先生 どうしました~?
(木枯)ごはん 食べ行きませんか?おなか すきました。
(廿日市)いいですね! じゃあ 銀座□瓦堂のオムライスなんて いかがでしょう?(木枯)

いいですね~。
かしこまりました~。ほら 山藤君も一緒に行くよ。 ほら。
あとで サロンにいて。う… うん。
失礼します。(小田)君。
新人?あっ はい。
君みたいな人 いっぱい見てきたよ。
己に こだわって才能を生かせない人。


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