さぴあ職場見聞録
鉄道は通勤・通学、旅行、輸送などの身近な手段です。わたしたちがふだんよく利用する駅や列車では、運転士や車掌、駅職員が働く姿を目にしますが、鉄道会社にはこのほかにもさまざまな仕事に携わる人たちがいて、安全な運行を支えています。今回は、そんな鉄道会社のなかでも、特急レッドアロー号で知られる西武鉄道を訪ね、広報部の栗山悟さんに、西武鉄道が手掛けている事業や鉄道会社の仕事について伺いました。
安全かつ時間どおりに運行するのが使命
列車や駅をより快適にする取り組みも
西武鉄道の最新車両である40000系の特長は、座席の配置を変えられることです。ふだんは座席を窓と並行に配置していますが、有料座席指定列車として運行するときは、座席を2席ずつ前向きにしたり、向かい合わせに配置したりすることもできます。また、一部の車両には、ベビーカーや車いすの利用者が安心して快適に過ごせる「パートナーゾーン」を新設。おむつ交換シートがあるトイレや空気清浄器も設置されています。こうした工夫により、40000系は鉄道車両として初めて、キッズデザイン賞の内閣総理大臣賞を受賞しました。(なお、運転士が車両基地のホームがない場所から電車に乗るときは、左の写真のように運転席のドア下にあるステップを上ります)
沿線の町や観光地を魅力的に
西武鉄道株式会社
広報部
栗山 悟さん
西武鉄道の路線は、池袋駅と西武新宿駅を起点とし、東京都の西部と埼玉県の南西部に広がっています。池袋駅と吾野駅を結ぶ「池袋線」、西武新宿駅と本川越駅を結ぶ「新宿線」が2大路線で、さらに吾野駅と西武秩父駅を結ぶ「西武秩父線」、小平駅と拝島駅を結ぶ「拝島線」、練馬駅と豊島園駅を結ぶ「豊島線」、東村山駅と国分寺駅を結ぶ「国分寺線」などが枝のように伸びています。さらに、東京メトロ有楽町線と副都心線への乗り入れも行っています。
列車の種別はいくつかあり、中・長距離を利用する乗客のためには、「快速急行」「急行」「快速」「準急」など、一部の駅を通過する優等列車を設けています。また、優等列車の通過駅を利用する乗客が、各駅停車へスムーズに乗り継ぎができるよう、ダイヤを工夫しています。
池袋駅と西武秩父駅、および西武新宿駅と本川越駅の間には、座席指定の「特急レッドアロー号」が走っています。最近は、「座って快適に乗車したい」というニーズが増えているため、西武鉄道では特急を増発したほか、最新型車両の40000系を使用した「S−TRAIN」「拝島ライナー」といった有料の座席指定列車も導入しました。
一般的に、鉄道会社では列車の運行だけでなく、沿線に住む人々が快適に暮らせるための町づくりや、魅力的な観光スポットの開発など、幅広い事業をグループ会社と協力して行っています。西武鉄道の場合、沿線に秩父という人気の観光地があり、昨年4月には西武秩父駅前に温泉施設をオープンさせました。また、現在は所沢駅の駅ビル建設も進めています。
チームワークで安全を守る
安全運転で出発進行。乗客の大切な命を預かっているだけに、安全かつ時刻通りに運行することが鉄道会社の使命です
鉄道会社では、列車を運転する「運転士」、列車のドアの開閉や停車駅の案内などをする「車掌」、各駅でホームの安全確認や案内をする「駅係員」などが働いています。技術職としては、鉄道に欠かせない電力・信号設備などを管理する「電気係員」、車両の点検や新しい車両の開発をする「車両係員」、快適な線路や駅づくりをめざす「工務、建設係員」、司令所で列車が安全に運行できるよう司令を出す「運転司令員」などが活躍しています。
どの職種の仕事も積極性をもち、職場の仲間同士で協力し合うことが大切です。列車を安全かつ正確に運行するには、チームワークが不可欠だからです。
●安全・安心な電車の運行
車両基地では、車両係員が車両に異常がないか、安全で正確に動くかなどを1両1両点検し、故障や不具合があれば修理しています。また、車両係員は運転免許を取得して駅まで列車を運転することもあります
●町づくり事業
鉄道会社では、沿線の町の魅力を向上させるためのさまざまな事業に取り組んでいます。その一つとして西武鉄道では連続立体交差化という事業を進めています。これは交通渋滞や踏切事故の原因になる踏切を取り除き、線路を高架化または地下化して、線路があった土地を店舗などに活用するというものです。同時に、線路を複々線化して、列車の本数を増やし、輸送力をアップ。池袋線では、練馬高野台〜大泉学園までの区間の高架化が2015年に完了しました。上の写真は高架化後の石神井公園駅(池袋線)です。また、今年3月2日には、所沢駅東口駅ビル「グランエミオ所沢」をオープンさせました(下の写真)。さらに、2020年代半ばの開業をめざし、所沢駅西口方面にある所沢車両工場跡地の開発計画も進めています
●観光事業
沿線の観光地を魅力的にするのも、鉄道会社の大切な仕事です。西武鉄道ではグループ会社の西武レクリエーションと協力し、西武秩父駅前温泉「祭の湯」を2017年4月にオープンしました。また、休日を中心に、おいしい食事を楽しみながら旅ができる観光列車も走らせています。その名も西武 旅するレストラン「52席の至福」。4000系車両の内外装に秩父の四季や渓谷などの自然を表現した4両編成の観光電車です
- 第19回/鉄道会社:
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