2016年秋に、Apple「iPhone 7」シリーズがヘッドホン出力端子を廃止して以降、Bluetooth方式のワイヤレスヘッドホン&イヤホンが急激に普及している。実際、ここ1~2年で過去の数倍に匹敵する新製品が各社から登場。いまやヘッドホン&イヤホンの主流といえる製品になりつつある。
そのなかでも、高い人気を誇っているのが完全ワイヤレスイヤホンと呼ばれる、左右別体のイヤホンだ。「トゥルーワイヤレスイヤホン」や「フルワイヤレスイヤホン」、「耳栓型イヤホン」、「左右分離型イヤホン」など、いろいろな呼ばれ方をしているこちらのタイプ。一般的なBluetoothイヤホンがプレーヤーとはワイヤレスながら左右本体がケーブルでつながっているのに対して、完全ワイヤレスイヤホンは左右間もワイヤレス接続となっており、ケーブルがいっさい使用されていない。その名のとおり、“完全”“完璧”なワイヤレスイヤホンとなっているのだ。その代表例といえるのがアップルのAirPodsで、こちらが発売されて以降、大きく注目を集めるようになり、現在はさまざまなメーカー/ブランドから数多くの製品がラインアップされている。
ヘッドホン出力端子が廃止されたiPhone 7/iPhone 7 Plusの登場で、Bluetooth方式のワイヤレスヘッドホン&イヤホンが急速に拡大している(写真はiPhone 7 PlusとAirPods)
このように、いま最大の注目株といえる完全ワイヤレスイヤホンだが、まだ登場したばかり、新しいタイプの製品だけに、メリットデメリットがハッキリしている。購入の際には、それをしっかりと見極めなければならない。本特集では、完全ワイヤレスイヤホン選びの4つのポイントをわかりやすく解説するとともに、注目製品の一気レビューをお届けする。レビューでは、音質をメインとしつつも、接続時の手間などユーザビリティも含めてご紹介させていただくので、自分にとってのベストワンを選び出す参考にしていただけたらと思う。
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特集の冒頭でも述べたとおり、完全ワイヤレスイヤホンの最大のメリットは、ケーブルがいっさいないため、屋外でとても扱いやすい製品になっているということだ。一般的なBluetoothイヤホンは左右間をケーブルで接続しているため、移動時何かに引っかかったり収納時に絡まったり、時には断線など、有線イヤホンと同じトラブルが発生する可能性がある。もちろん、ケーブルの長さは圧倒的に短いし、ネットバンドを採用するなどの工夫によってケーブルにまつわるトラブルは格段に少ないが、わずかながら可能性は残る。また、これは気分の問題だが、左右がつながっているのがうっとうしく感じるユーザーもいるだろう。対して完全ワイヤレスイヤホンは、左右が独立していて、ケーブルにまつわるトラブルやストレスから完全に解放される。これだけでも充分な魅力といえる。
これは同時に、完全ワイヤレスイヤホンのデメリットともなっている。それは、落としやすくなくしやすいことだ。実際、通勤時などに完全ワイヤレスイヤホンが耳からこぼれ落ちてしまう人に少なからず遭遇する。筆者も、電車とホームのすき間に落ちてしまい絶望的な顔をしている人に会ったことがある。それも、ひとりやふたりではない。
完全ワイヤレスイヤホンは、本体内ですべての構成が完結しなければならないため、有線タイプのイヤホンに対して本体が大きくなりがちで、どうしても落ちやすい傾向があるのだ。そのため、女性など耳穴の小さい人などは頻繁に耳からこぼれ落ちやすく、なくしたり壊したりする可能性が高くなってしまう。また、本体が小さいことから、自宅などの室内でも思っている以上に見つかりにくいという思わぬ落とし穴もある。そういった事態への対策として、メーカーは本体の形状を最適化したり、収納用のケースを付属したりとさまざまな工夫を行っている。とはいえ、やはり重要なのは実際の装着感だ。自分の耳にちゃんとフィットしているか、実際に製品に触れる機会があるなら確認しておいたほうがいいだろう。
ちなみに、イヤホン本体の紛失への対策として、一部メーカーの製品には片方紛失/故障時の有償サービスが付いているモデルもあったりする。いざというときに大変ありがたいので、製品選びの際のチェック項目として加えておくものいいだろう。
完全ワイヤレスイヤホンは製品によって大きさや形状もさまざま。耳の形状や耳穴の大きさも人によって大きく異なるので、実際に装着して自分の耳にフィットするモデルを選ぶのが鉄則だ
もうひとつ、完全ワイヤレスイヤホンのデメリットとしてあげられるのが接続状況だ。プレーヤーと左右本体の2箇所をワイヤレスで接続するうえ、左右の間にある人間そのものが電波を通しづらい傾向があるため、音切れが発生しやすい。各社ともアンテナの形状を工夫したり、左右間の接続方式を工夫したりと、さまざまな方法で音切れの回避を行っているが、有線のように完璧な安定接続は不可能であるため、多少の音切れは容認せざるを得ない。
それよりも、音切れの頻度や復帰のスムーズさを気にしたいところだ。左右のイヤホン間をつなぐ通信にNFMI方式を採用したタイプは復帰がスムーズな傾向があったり、米クアルコム製の最新チップ「QCC3026」などを搭載したモデルは接続の安定性が高くなっているなどさまざまな話があるが、最大のポイントは本体内蔵アンテナのデザインだったりするので、ワイヤレス技術にすぐれたメーカーが安心だったりもする。こればかりは、実際に試してみないと分からないのが歯痒いところだ。なので、技術スペックはあくまでも参考程度に踏まえておいた方がよいだろう。
上位モデルを中心にNFMI採用モデルが増えている。接続性を重視するなら、NFMI対応かどうかを必ずチェックしておこう
ちなみに、米クアルコム製の最新チップ「QCC3026」などは、「Snapdragon 845」搭載スマートフォンとの組み合わせで「TrueWireless Stereo Plus」を利用可能になるため、接続性と音質面で大きなアドバンテージが見込まれているが、しばらくは環境的に実現の見込みがない(現在発売中の「QCC3026」搭載完全ワイヤレスイヤホンはファームウェアアップデートなどを行わなければならない可能性が高い)ため、しばらくは選択のポイントに入れなくてもよさそうだ。
「TrueWireless Stereo Plus」は、完全ワイヤレスイヤホン向けに開発されたクアルコムの最新技術。左右のイヤホンそれぞれに信号を送ることで、従来よりも途切れにくくなっている
次に重要なポイントとなるのが、バッテリーの持続時間だ。本体サイズがコンパクトな完全ワイヤレスイヤホンは、大きなバッテリーを搭載することができず、再生時間は一般的なBluetoothイヤホンに対してかなり短くなってしまっている。現在発売されている製品を見てみると、3時間前後のバッテリー駆動時間をうたっているモデルが多い。そのため、収納ケースがそのまま充電ケースとなっていて、トータルで10時間以上の使用できるよう工夫されているが、それでも“聴きたいときにバッテリー切れで聴けない”可能性があるのも確かだ。
それをできるかぎり回避するため、製品選びの際はケースに“急速充電”機能がある製品を有力候補としよう。15分で1時間ほどの使用が可能な急速充電対応の製品を購入していれば、聴きたいときに聴けない事態をうまく回避することも可能になるからだ。
専用充電ケースに急速充電機能を備えたモデルも登場しつつある。写真はJaybirdの完全ワイヤレスイヤホン「Jaybird RUN」。急速充電機能を備えており、5分の充電で約1時間の音楽再生が可能だ
最後に、音質についても是非チェックして欲しいところだ。最新のBluetoothイヤホン・ヘッドホンは、上位モデルを中心にaptX HDやLDACなど、ハイレゾ相当の音質を伝送することが可能なコーデックが普及してきている。Bluetoothの「便利だけど音が悪い」というイメージがいままさに払拭されつつあるのだが、サイズや消費電力の都合か、完全ワイヤレスイヤホンではSBCやAACなどスタンダードなコーデックのみの対応となっている製品がほとんどで、一部、aptX対応のモデルが出始めた程度だ。
また、本体内にアンテナやバッテリーを搭載しなければならないスペース的な制限によって、音質的にも不利な状況となっている。とはいえ、各社がさまざまな工夫を凝らしており、ここ1年で音質はかなりのクオリティアップを果たしている。そういった視点でも、最新モデルのほうが有利なのは確かだ。
ゼンハイザー初の完全ワイヤレスイヤホン、「MOMENTUM True Wireless」のアップデートモデル。とはいっても、単純な進化版ではなく、新たにアクティブノイズキャンセリング機能が搭載された高機能モデルとなっている。
そのノイズキャンセリング機能については、静粛性を高めると同時に、音色傾向の変化や音質低下を最低限に抑え込むことで、より音楽に集中できる“ミュージックファースト”なポリシーによって作りあげられているという。実際、「MOMENTUM True Wireless 2」のノイズキャンセリング効果はとても自然な印象だ。
マイクはフィードフォワードのみの2マイク方式で、そこから拾った音をデジタル処理してノイズキャンセリングを行っている。また、マイクの収納位置に関しては、イヤホン本体にあけた9つの小さな穴を通してあけ、その内部にレイアウトするなど、独特の作り込みがなされているほか、マイク自身の性能にもこだわっているという。このあたりは、プロフェッショナル向けマイクメーカーでもあるゼンハイザーならではのこだわりか。その結果として、全体的に自然なバランスで環境音が押さえ込まれたノイズキャンセリングを実現している。これはいい。
同時に、装着感がよくなっているのもうれしいポイントだ。新モデルでは、外観デザインこそ初代とほぼ変わらないものの、よく見ると人体(耳)と接触する部分が最大部分は2mmほど小さくなっていて、ほぼ円形だったものがオーバル形状に変化。このわずかな違いによって、格段にフィット感が向上しており、快適な装着感を得られるようになっている。実際、筆者も初代はなんとかギリギリOKな装着感だったが、新モデルではまったく問題なし。女性ユーザーでも、よほど耳の小さい人でもないかぎり不満を持つことはないだろう。
また、接続安定性についてもこだわっていて、接続安定性の高さに定評のある米クアルコム製SoCを採用したほか、アンテナは受信性能の高いLDS(レーザーによる直接構造化を行う)をチョイス。特にアンテナは、デザインや配置はもちろんのこと、素材に銅や金を採用するなど徹底した最適化を行い、接続安定性を高めているという。今回、悪環境でのテストは行えなかったが、比較的良好な環境の住宅地とはいえ、10m離れていても音の途切れはまったくといっていいほど発生しなかった。十分な接続安定性といえるだろう。
このほかにも、イヤホン本体で約7時間、専用ケースからの充電も含めると28時間ものロングライフを実現。さらに、IPX4の防滴性能やGoogleアシスタント/Apple Siriへの対応など、さらなる利便性向上も追求されている。専用アプリ「Smart Control」も用意され、イコライジングだけでなく、タッチ操作のカスタムができたり、将来的にはファームウェアのアップデートにも対応しているという。まさに“全部のせ”の高機能、高性能モデルといえる存在だ。
そのサウンドは、ゼンハイザーならではのポリシーが感じられる、ニュートラルな音色と抑揚のはっきりした抑揚的な表現をあわせ持つキャラクターが特徴。しかも、クオリティ面では初代よりもさらに高まってくれている。基本的には、ボーカルやメイン楽器にフォーカスしたバランスで、距離感の近いボーカルが、抑揚に満ちたドラマティックな歌声を聴かせてくれる。息づかいの様子も普段より強めに伝わり、シンガーの存在がとてもリアルに感じられる。おかげで、YURiKA「鏡面の波 Orchestra Ver.」などは、普段よりも実体感のある歌声を楽しませてくれた。アコースティック楽器も得意で、チェロはやわらかく広がる低域が付帯する、心地よい響きを感じる。また、ヴァイオリンは普段よりほんのちょっと落ち着いた、重層的な音色が印象的だった。
いっぽう、低域は広がり感や聴き心地のよさが特徴。自然な広がり感を持つため、フロアタムの音色などは印象的に響きを聴かせる。それでいて、打音のキレはしっかり保たれている。ゼンハイザーの音に対するこだわりが十分伝わる、絶妙なチューニングといえるだろう。
イヤホン重量(片耳):6g
再生時間:最大7時間
充電方法:専用ケース(内蔵バッテリーで3回のフル充電が可能)
対応コーデック:SBC/AAC/aptX
カラーバリエーション:ブラック/ホワイト
アクティブノイズキャンセリング機能を搭載した、Technicsブランド初の完全ワイヤレスイヤホン。音質はもとより、ノイズキャンセリング機能や接続安定性の高さ、アプリによるカスタマイズが可能な点など、音質はもちろんのこと、機能性にもこだわっているのが特徴だ。
まず、機能面で最大の注目といえるのが、アクティブノイズキャンセリング機能だろう。「EAH-AZ70W」には、デジタル制御を採用するフィードフォワード方式(イヤホン外側のマイク配置)と、アナログ制御のフィードバック方式(イヤホン内側のマイク配置)を組み合わせた独自の「デュアルハイブリッドノイズキャンセリング」が採用されている。これは、どちらもデジタル方式を採用すると音質的なデメリットを生じてしまうことから、これを回避すべくフィードバックにアナログ制御のものをチョイスしたという。これによって、音質に与える影響を最小限に留めつつ、自然なノイズキャンセリング機能を実現しているという。
実際に試してみると、強烈な効きというよりも、自然な効き、といったイメージで、その分音色が自然に感じられる。なかなか好印象な音作りに感じた。ただし、アクティブノイズキャンセリング機能をオンオフすると、ほんの少し音楽の表現が変わる。オフにしているときのきめ細やかな表現に対して、オンにするとやや客観的な、ダイナミックレンジの幅を少しばかり狭めたかのような表現になる。確かに、ノイズキャンセリング機能オンが必要な環境だと、こちらのバランスの方が聞き取りやすいかもしれない。
もうひとつ、接続安定性に関する工夫にも注目だ。「EAH-AZ70W」では、イヤホン本体が左右それぞれ直接スマートフォンと接続する「左右独立受信方式」を採用し、人体(頭)を間に挟むことでどうしても不利になりがちな接続安定性を解消しているという。また、TWS Plusのような対応スマートフォンが限られた規格ではなく、大半のスマートフォンでこの接続が可能だという転もメーカーはアピールする。また、タッチセンサー配線などもアンテナ回路に利用した「タッチセンサーアンテナ」を新開発するなど、ワイヤレス関連にパナソニック製コードレス電話で培った技術を投入しているという。
実際、iPod touchに「EAH-AZ70W」を接続して屋外テストを行ってみたところ、見通しのよい場所であれば30m近く離れても音切れすることなく音楽再生が楽しめた。接続テストを行った場所が住宅街のため、どちらかといえば良好な環境ではあるが、なかなかに優秀な結果といえる。
なお、ノイズキャンセリング用に加え、会話用としても左右1ペアのMEMSマイク(Micro Electro Mechanical Systems)を搭載。風切り音を低減する「ラビリンス構造」と、送話の音声とそれ以外の音を区別しノイズを低減する「ビームフォーミング技術」とを組み合わせることで、明瞭な音声での通話が可能となっている。こちらもなかなかにうれしい気づかいだ。
ほかにも、専用アプリではノイズキャンセリングの効果を100段階で調整可能なほか、イヤホン単体で約6.5時間(NC ON/AAC時)~約7.5時間(NC OFF/AAC時)の連続再生(充電ケースとあわせて約19.5時間~約22.5時間)、IPX4の防滴機能など、最新モデルならではの隅々まで配慮されたユーザビリティを持ち合わせている。こと機能面に関しては、完成度の高い製品だ。
音質にこだわり、10mm口径のグラフェンコートPEEK振動板採用ドライバーを搭載したという「EAH-AZ70W」の音はというと、ひとことで表現するならばバランス派。いちばん得意とするのはアコースティック楽器だが、JポップやJロックもイケる、懐の深さが特徴となっている。特に女性ボーカルは、細かいニュアンスがしっかりと伝わるため、実体感の高いリアルな歌声が楽しめる。また、ピアノも高域側の倍音成分がしっかり整っているため、伸びやかな響きだ。
ノイズキャンセリング機能のオンオフで多少なり音色の変化はあるものの、どちらも中域重視のバランスにブレはないので、どちらも良好な聴き心地となっている。初めてリリースした完全ワイヤレスイヤホンとは思えない、優秀な製品だ。
イヤホン重量(片耳):7g
再生時間:最大6.5時間(ノイズキャンセリングON、AAC接続時)
充電方法:専用ケース(内蔵バッテリーで2回のフル充電が可能)
対応コーデック:SBC/AAC
カラーバリエーション:ブラック/シルバー
Technicsブランドを含めると3モデルが同時発表されたパナソニック製の完全ワイヤレスイヤホンだが、その中でもこの「RZ-S30W」は末妹に位置するモデルで、唯一アクティブノイズキャンセリング機能が搭載されていないスタンダードモデルとなっている。そのため、コストの面で手頃さを感じる製品となっているが、いちばんのウリは価格ではなく、装着感であることが注目ポイントでもある。
ドライバーは、3モデル中最小口径となる6mmのダイナミック型ドライバーを採用。さらに、ハウジング形状に工夫を凝らすことでかなり小柄なイヤホン本体にまとめられており、女性でも違和感なく装着できるようになっている。確かに、他社製品を含めて装着感のよさはかなりのもの。筆者は耳穴サイズこそMで大丈夫なものの、使用中にこぼれ落ちやすい傾向があるのだが、「RZ-S30W」については、重量の軽さも手伝ってか、ピッタリとフィットし、試聴中にこぼれ落ちてしまうようなことはいっさいなかった。
また、ノイズキャンセリング機能が搭載されないかわりに連続再生時間が長くなっていて、イヤホン単体では約7.5時間(AAC)、充電ケースを合わせると約30時間(AAC)の使用が可能となっている。また、IPX4の防滴機能も用意。イヤーピースは、女性ユーザーを意識してか、他の2モデルとは異なるXSサイズを付属(XS~Lの4サイズ)。細やかな気配りが行き届いた、魅力的なパッケージにまとめ上げられている。
いっぽう、上位モデルの「RZ-S50W」同様、左右それぞれにイヤホン本体が直接スマートフォンと接続する「左右独立受信方式」を採用したり、タッチセンサー配線などもアンテナ回路に利用した「タッチセンサーアンテナ」を搭載するなど、接続安定性や通話用マイクの明瞭さなどが、上位モデルと変わりない点もうれしいところだ。
さて、肝心の音はというと、3モデルの中ではいちばん聴き心地のよい、ポップで明るい印象のサウンドが楽しめた。音色傾向的にはニュートラルといえる範疇に位置するが、キレのよさから、とても軽快な歌声&演奏に聴こえるのだ。女性ボーカルはしっとりした落ち着きのある歌声だし、ピアノの演奏も軽やか。長時間でも聴きやすいサウンドだ。
ちなみに、上位モデル「RZ-S50W」はもう少し彫りの深い、抑揚に富んだサウンドとなっている。ドライバー口径の恩恵か、ワイドレンジさ、解像感の高さもこちらの方が有利。しかしながら、明るく楽しい「RZ-S30W」のサウンドを聴いていると、これはこれで魅力のある表現だと思える。「RZ-S30W」の音や装着感がとても魅力的なため、「RZ-S50W」とどちらを選ぶかは思っているほどには悩まないかもしれない。逆に、「RZ-S50W」はTechnicsブランドの「EAH-AZ70W」とどちらにするか悩む人が多くなりそうだ。
イヤホン重量(片耳):4g
再生時間:最大7.5時間(AAC接続時)
充電方法:専用ケース(内蔵バッテリーで3回のフル充電が可能)
対応コーデック:SBC/AAC
カラーバリエーション:グリーン/ブラック/ホワイト
数多ある完全ワイヤレスイヤホンの中でも、圧倒的な人気でナンバーワンのシェアを保ち続けているアップル「AirPods」に、新バリエーションが登場。それがこの「AirPods Pro」だ。
「AirPods Pro」は、従来の「AirPods」の上位に位置するモデルで、イヤホン本体のデザインやノイズキャンセリング機能など、デザインや機能性を大きく変更したのが特徴となっている。また、操作にコツがいるマルチタップシステムも感圧センサーに変更され、一段とわかりやすく扱いやすい操作方法となった。要するに、ユーザーから要望があがっていたさまざまなポイントに改良を施し、より高機能でより扱いやすい製品へと進化しているのが「AirPods Pro」の特徴といえる。加えて、カナル型イヤホンとなったことによりホールド感も格段に向上し、IPX4レベルの耐汗防滴性能と合わせて、フィットネスやランニング等のスポーツユースにも活用できるようになった。まさに、うれしい改良が施された使い勝手のよい製品といえる。
特に、カナル型イヤホンとなってくれたのは大いに歓迎したい。耳掛け型だったこれまでの「AirPods」は、筆者はもちろん、利用者の多くが“使用中に耳からポロリとこぼれ落ちてしまう”ことがあり、紛失が深刻なレベルでの問題となっていた。また、音漏れに関してもかなりの音量となっていて、正直、混雑時の電車内などでは周囲の迷惑を考えると使いづらかった。日本人および日本の都会の環境には適合しにくい部分があったのだが、カナル型イヤホンとなった「AirPods Pro」は、装着感や音漏れの面でもかなりの良好さを持ち合わせるようになっている。
とはいえ、「AirPods Pro」のノズル部分はそれほど長くなく、緩くはめ込むカタチとなっていて、サイズをしっかり合わせないと外れやすい。筆者は普段MかMSサイズのイヤーピースを使用しているのだが、「AirPods Pro」ではLサイズでピッタリだった。一般的なカナル型イヤホンとはホールドされる位置が異なっているので、同梱されているS/M/Lイヤーピースのうち、どのサイズがベストか、しっかりと試して欲しい。ちなみに、「AirPods Pro」にはうれしいことにイヤーピースの装着状態テストも用意されている(設定アプリの「Bluetooth」をタップして接続中の「○○ 's AirPods Pro」の横の「i」をタップするとAirPods Proの設定画面が表示されるのでその中の「イヤーチップ装着状態テスト」をタップ)ので、こちらを使ってフィット感を確認して欲しい。
「AirPods Pro」のイヤーピースは、楕円形の独自デザインが採用されていて、台座部分も一体化されており、イヤホン本体から簡単に外れないようになっている。イヤホンを外した際に耳からこぼれ落ちたり耳穴に残ったりしない点は大歓迎だが、その代わりにサイズ交換がかなりしづらい。実際、サイズ交換のため何回か試してみたが、シリコン部分を破ってしまわないか、かなりヒヤヒヤした。皆さんも、交換の際には十分注意して欲しい。
さて、音漏れに関してはもうひとつ、構造だけではなく新機能のノイズキャンセリングシステムもある程度の効果を発揮してくれている。「AirPods Pro」のノイズキャンセリング機能は、かなり強力なもので、環境騒音の中心である低域はもちろん、中域など人の声のあたりも含め、全体的に強く効かせている傾向にある。そのため、静粛性が高く、音楽の音量を自然と抑えるようになるため、音漏れが圧倒的に減ってくれるのだ。さすがに、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車では厳しいだろうが、多少混んでるくらいであれば大丈夫だろう。また、ノイズキャンセリング機能は外部音取り込みモードも用意されていて、こちらに変更すると外部の音がしっかりと届いてくれる。しかも、とても周囲の音がとても自然に感じられるので、徒歩などの移動中には積極的に活用したくなる。製品によっては、この外音取り込みモードがかなり不自然な音になるため、あまり活用したい気持ちにはならないのだが、「AirPods Pro」では普段から利用したくなる質の高さがある。このあたりも「AirPods Pro」ならではのアドバンテージといえるだろう。
もうひとつ、専用ケースは「AirPods」に比べて横幅が広がり、多少大きくなった印象があるが、持ち運びの点で特に不満はない。ただし、イヤホン本体の取り出しには多少コツが必要で、手前にくるりと回すようにして取り出すため、慣れるまではポロリと落としてしまう場合がある。取り出しの際には、十分注意して欲しい。
さて、肝心のサウンドはというと、基本的にはジェントルなサウンドキャラクターといえるもの。荒々しさをまったく感じさせない、ていねいな抑揚表現によって、落ち着きのある、聴き心地のよいサウンドを楽しませてくれる。男性ボーカルも女性ボーカルも、どちらかというとしっとりとした印象の朗々とした歌声て、聴き心地のよさはなかなかのもの。解像感はそれほど高くはないが、あまり気にならない良質な表現を持ち合わせている。その代わりに、ややパワー感に欠ける傾向はあるが、ハードロックばかり聴く人でもないかぎりは、それほど気にならないだろう。Jポップとの相性もまずまず良好なので、サウンドキャラクターを不満に思う人はそれほどいないだろう。
アップの初のノイズキャンセリング機能搭載カナル型イヤホン「AirPods Pro」は、なかなかに完成度の高い、充実した内容を持つ製品といえる。
イヤホン重量(片耳):約5.4g(片耳)
再生時間:最大4.5時間(アクティブノイズキャンセリングと外部音取り込みモードをオフにした場合は最大5時間)
充電方法:専用ケース(内蔵バッテリーで24時間以上の再生が可能)
対応コーデック:SBC、AAC
カラーバリエーション:ホワイト
軽量コンパクトなイヤホン本体と(連用ケースからの充電を含めて)約20時間のロングライフ、コストパフォーマンスの高い価格設定などにより、高い人気を博した「Soundcore Liberty Air」の最新モデル。先代に対して、機能性やデザイン、音質面など、さまざまな面からグレードアップされたモデルに進化したのが特徴となっている。
ここではまず、「Soundcore Liberty Air」シリーズの変遷について軽く触れておきたい。実はこの「Soundcore Liberty Air 2」、シリーズとしては第2世代ながら3rdモデルにあたる製品となる。というのも、初代「Soundcore Liberty Air」には、1stモデルとマイナーアップデートした2ndモデル、2つのバリエーションがあるからだ。この2つは、外観はそれほど変化なかったものの、バッテリー持続時間など機能性についてかなりのバージョンアップを果たしている。そしてシリーズ第2世代にして3rdモデルとなる「Soundcore Liberty Air 2」では、機能性のさらなる向上に加え、ダイヤモンドコーティング振動板採用のドライバーを新採用するなど、音質にも注力した様子がうかがえる。
それでは、まずは「Soundcore Liberty Air 2」の、機能面の特徴について紹介していこう。イヤホン本体の連続再生時間は約7時間。これは、1stモデルの約5時間からは大きく向上したもので、十分以上のスペックといえる。実はこの数値、2ndモデルとほぼ同じだったりするのだが、「Soundcore Liberty Air 2」では新たにクイック充電にも対応。10分の充電で2時間の再生が行えるようになっている。また、専用ケースのほうもトータル約28時間というのも変わりないが、専用ケースがかなり小型化されたこと、ワイヤレス充電にも対応したことなど、利便性はかなり向上している。
このほか、イヤホン本体はIPX5の防水性能を持ち合わせていて、スポーツユースも可能。また、専用アプリも用意されていて、こちらを使って音の聴き取りやすさを測定し、サウンドバランスを自動的にカスタマイズする「HearID機能」も搭載。ユーザーにベストなサウンドを作り上げることができることに加えて、22種類のイコライザー設定がプリセットされていて、好みの音色傾向にカスタマイズすることも可能だ。
さて、肝心のサウンドはというと、ダイヤモンドコーティングならでは、といった印象のスピーディーな表現が特徴的だ。カリッとした中高域とパワフルな低域が合わさった、いわゆるドンシャリ傾向のサウンドキャラクターだが、ある程度の解像感が確保され、音数も多いため、勢い一辺倒ではない確かな表現力を持ち合わせている。ボーカルは男性も女性もクールで力のこもった歌い方だが、これはこれで気持ちいい。どうしても高域にクセの強い音がのってくるので、ピアノの音が音階によっては鋭過ぎる嫌いもあるが、これは借用したサンプル機が新品同様だったからなのかもしれない。もう少し聴き込んで、様子を見る必要がありそうだ。
先代に比べてデザインも上質なものとなり、使い勝手も向上。そして、音色傾向は好みが分かれるかもしれないが、音質的には悪くない。バランスのよい製品といえるだろう。
イヤホン重量(片耳):-
再生時間:最大7時間
充電方法:専用ケース(内蔵バッテリーで3回のフル充電が可能)
対応コーデック:SBC/AAC/aptX
カラーバリエーション:ブラック/ホワイト
最近は完全ワイヤレスのラインアップ拡充にも力を注いでいるJVCから、いくつかの新製品が登場した。そのひとつ「HA-A10T」は、エントリークラスに位置するハイ・コストパフォーマンスモデルだ。
完全ワイヤレスとしてはとてもオーソドックスなデザインのイヤホン本体は、比較的コンパクトなサイズにまとめ上げられていて装着感もよく、ハウジング側に配置されているプッシュボタンもシンプルで操作しやすい。楽曲操作に加え、2クリックで音量調整(左が小、右が大)ができるのも嬉しい。また、専用ケースは今となってはやや大柄な部類になってしまうのかもしれないが、決して邪魔にならないサイズをキープしているし、何よりもイヤホン本体が取り出しやすくてありがたい。そのほか、連続再生時間は約4時間と必要十分なレベルはキープされ、15分の充電で約1時間の連続再生が可能なクイック充電にも対応している。防水性能も、IPX5が確保されている。
そして、この製品の最大の特長といえば、そのサウンドクオリティだろう。ダイレクト感の高い、メリハリに富んだサウンドを聴かせてくれるのだが、その質感が、価格帯を大きく上まわる良質さを持ち合わせているのだ。実際に聴いてみると、ボーカルは声の特徴をしっかり届けてくれるし、ギターはエッジの効いた演奏を楽しませてくれる。とても距離感の近い音なので、普段よりも音楽にのめり込んで聴くことができる。エントリーユーザーだけのものにしておくにはもったいない、Jポップやロックを楽しむためのサブ機として手元に置いておきたくなる、聴き応えのあるサウンドだ。
イヤホン重量(片耳):約5.2g
再生時間:最大4時間
充電方法:専用ケース(内蔵バッテリーで2.5回のフル充電が可能)
対応コーデック:SBC
カラーバリエーション:インディゴブルー、ブラック、ミスティグレイ、ダスティピンク
ノイズキャンセリングをはじめ、多彩な機能が搭載されたソニーの完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000X」がモデルチェンジ。「WF-1000XM3」へと生まれ変わった。
新モデルの特徴をひとことで表すならば、それはズバリ、コンセプトの完璧な実現、といったイメージだろうか。先代「WF-1000X」は、完全ワイヤレスイヤホンとして世界初となったデジタル・ノイズキャンセリング機能の搭載や、フラッグシップモデルらしい上質なサウンドで大いに人気を得ることとなったが、ソニーとしては初めて手がける完全ワイヤレスイヤホンだということもあってか、接続安定性や装着感などで、ユーザーから不満の声が上がることもままあった。そういった部分をすべてしらみつぶしに解消していき、フラッグシップモデルに相応しい“理想の”完全ワイヤレスイヤホンを作り出そうとした様子が、新モデル「WF-1000XM3」の随所からうかがえるのだ。
たとえば、イヤホン本体のデザインは、ハウジング部のオーバル形状など基本的なスタイルこそキープコンセプトであるものの、まったくの新造形となっているし、さらに耳側、ノズルまわりの形状はまったく異なるデザインへと変わっている。これによって、先代に対して格別となる、高い装着感を実現していることを確認できた。また、内部に目を移しても、Bluetoothチップセットを新規に開発するなど、徹底した改良が行われている。名前は“M3”だが、完全新作といっていいほどのブラッシュアップが行われているのは確かだ。
ちなみに、2代目なのに何故“3”なのか疑問に思ったのだが、その旨をたずねてみると、ノイズキャンセリング機能搭載ヘッドホン「WH-1000XM3」のイヤホン版という位置付けとなっているため、この名前を採用したようだ。正直、M3をマーク3と捉えると多少の違和感をもつが、ソニーとしてはマーク3の略と明言している訳ではなく、世代で製品名末尾をそろえるのは製品特徴として分かりやすい面もあるので、これはこれで分かりやすいかも、とも思えた。
いっぽう、機能面でも先代モデルに対しての進化がいくつも見られる。デジタル・ノイズキャンセリング機能は、新たにヘッドホンの外側と内側に配置した2つのマイクを配置した「デュアルノイズセンサーテクノロジー」を完全ワイヤレスイヤホンとして初めて採用。さらに、ヘッドホン「WH-1000XM3」用のノイズキャンセリングプロセッサー「QN1」を省電力/小型化した「QN1e」を新たに搭載することで、ノイズキャンセリング機能の精度も高めている。さらに、ノイズキャンセリング機能のオンオフに加え、「アンビエントサウンド(外音取り込み)モード」も、イヤホン本体のタッチパッドから操作できるようになった。もちろん、スマートフォン用アプリからの操作も引き続き行えるようになっていて、こちらは外音取り込みレベルを22段階で調整可能なほか、ボイスフォーカスをONにすることで外のノイズを低減しつつ人やアナウンス音のみを聞きやすくすることもできる。また、ペアリングしているスマートフォンの加速度センサーを読んで、止まっている時/歩いている時/走っている時/乗り物に乗っている時の4パターンを検出して、あらかじめ設定したノイズキャンセリング&外音取り込みのモードを自動で切り替えてくる「アダプティブサウンドコントロール」も健在。使い勝手については、大いに満足のいくレベルだ。
なお、付属の専用ケースは先代に比べると多少コンパクトになった印象だが、他社製品の最新状況を踏まえると、大柄と感じてしまうサイズかもしれない。とはいえ、NFC機能が付属してくれているのはとても便利だし、約3回分のフル充電が行えることを考えると、許容できる範囲かもしれない。ちなみに、バッテリー持続時間は、イヤホン本体で約6時間、ケースからの充電もあわせると最大24時間使い続けることができるようになっている。充分な数値といえるだろう。
さて、実際の使い勝手はというと、装着感についてはなかなかのもの。ホールド感がしっかりしていて、耳からポロリとこぼれ落ちることはまずない。先代では、安定した装着が適わなかった筆者としてはありがたいかぎり。また、接続安定性に関しても、特に気になるほどではなかった。ヘッドホンイベント会場という、かなり劣悪な環境でも試してみたが、他社製品に比べると優秀といえる接続安定性を示してくれた。もちろん、相当な悪環境だったので接続が切れることは何回もあったが、クアルコム社製「QCC3026」搭載モデルなど接続安定性をアピールする製品と同等か、それ以上のクオリティは持ち合わせていたように思う。
肝心のサウンドはというと、SBC、AACコーデックのみの対応とは思えないほど、質感のよい表現を持ち合わせている。ピアノはタッチのニュアンスがしっかりと伝わってくることに加えて、倍音がしっかりと乗っているので、のびのびとした演奏に感じられる。ボーカルも迫力のある、メリハリのよい歌声を聴かせてくれる。アコースティック楽器が得意だった先代に比べると、オールラウンダータイプにシフトしたというべきか。ボーカルの押し出し感や、ドラムやベースのグルーヴ感の高さなど、メリハリのしっかりしたサウンドとなっている。幅広いジャンルの音楽が楽しめるようになったのは嬉しいかぎり。これでSBC/AACコーデックのみの対応というのはもったいない、もしLDAC対応であればさらに良質なサウンドが楽しめただろうと、少々残念な気持ちにはなっている。とはいえ、「WH-1000XM3」の音質、機能性は一級品といえるもの。上級クラス完全ワイヤレスイヤホンのリファレンスといえる、とても優秀な製品だ。
イヤホン重量(片耳):約8.5g
再生時間:最大6時間(NC ON)/最大8時間(NC OFF)
充電方法:専用ケース(内蔵バッテリーで3回のフル充電が可能)
対応コーデック:SBC/AAC
カラーバリエーション:ブラック/プラチナシルバー
オーディオ機器やホームシアター機器はもちろん、楽器から音楽制作機器まで、幅広いサウンド関連機器を手がけるヤマハから、初の完全ワイヤレスイヤホンが登場した。先日、「TW-E7A」「TW-E5A」「TW-E3A」という3モデルが同時発表されたが、いずれもユーザーのライフスタイルに寄り添うことをコンセプトとした「Empower Lifestyle」シリーズでの展開となる。また、3製品のうち「TW-E7A」のみノイズキャンセリング機能を持ち合わせている。今回は、3製品の中から先んじて発売されたエントリーモデル「TW-E3A」をピックアップして紹介していこう。
ヤマハ製完全ワイヤレスイヤホンの特徴といえば、AVアンプ開発で培った技術を応用したという独自機能「リスニングケア」を搭載することだろう。これは、「耳の安全を守る」ことに配慮した設計で、音量によって異なる聴こえ方を解析し、ボリュームごとに最適な帯域バランスになるよう補正してくれるというもの。実際には、専用再生アプリ「Headphones Controller」と連動し、設定された音量に合わせてイヤホン本体内のイコライジング機能(低域/中低域/中域/高域の4バンド)を自動調整。小ボリュームでも、迫力を損なわないサウンドを作り上げてくれるのだという。当然、エントリーモデル「TW-E3A」にもこの機能は搭載されている。
このほか、クアルコム社製SoC「QCC3026」を搭載し、高い接続安定性を提供するほか、TWS Plus(TrueWireless Stereo Plus/左右独立通信技術)にも対応。連続再生時間も約2時間の充電で6時間使用することができ、専用ケースからの3回分の充電も合わせると、最大24時間の音楽再生が可能となっている。コーデックも、SBCやAACに加えてaptXに対応する。このほか、ボタン操作によるSiri/Googleアシスタントなどボイスアシスタント機能の起動に対応していたり、IPX5相当の生活防水を有していたりと、充実した内容を誇っている。特に、「QCC3026」SoCを搭載しながらも1万円前後の価格帯を想定しているのは、なかなかに意欲的な価格設定といえる。
さて、実際の製品を手にしてみると、イヤホン本体は、最新モデルの中ではほんの少し奥行きが厚めのような気がする。これは、耳穴側に滑り止め用のシリコンカバーが付属しているためなのかもしれない。実際に装着してみると、片側6.3gという比較的軽量さとも相まってか、さほど違和感はなかった。ちなみに、専用ケースの方は持ち運びしやすい小型のタイプで、かつイヤホン本体が取り出しやすい(ハウジング部分の飛び出しが大きくつかみやすい)ため、好感が持てた。また、ハウジング部の操作ボタンは“カバーされた押しボタン式”といった印象のもので、やや硬めではあるものの、着実な操作が行えた。
さて、肝心のサウンドはというと(アプリを利用し「リスニングケア」をオンにしてウォークマンNW-ZX507で試聴)、低音はボリューミーで、高域もエッジのある煌びやかなキャラクターを持ち合わせている。ただし、重低音というよりは、クセのないモニター系統のサウンドをベースにややメリハリを強調したといったイメージ。それなのに、あまり聴き疲れしない不思議なキャラクターとなっている。これぞ「リスニングケア」ならではの恩恵なのだろう。また、音量を下げても結構ディテールが見える質のよいサウンドを聴かせてくれる。確かに、解像度を求めてついつい音量をアップさせてしまう、ということはなさそうだ。楽曲も、Jポップからクラシックまで得手不得手がなく、とても扱いやすい。ファーストモデルとは思えない、完成度の高い製品だ。
イヤホン重量(片耳):6.3g
再生時間:最大6時間
充電方法:専用ケース(内蔵バッテリーで3回のフル充電が可能)
対応コーデック:SBC/AAC/aptX
カラーバリエーション:ブラック/ホワイト/スモーキーブルー/スモーキーピンク
ソニー「h.ear」シリーズの完全ワイヤレスイヤホンとして誕生したのがこの「h.ear in 3 WF-H800」だ。
製品の特徴をひとことで表すならば、アクティブノイズキャンセリング機能“以外”全部入り、といった内容となっている。具体的には、圧縮音源の高音域を補完する「DSEE HX」、音声アシスタント機能(GoogleアシスタントやAmazon Alexaなどに対応)、装着検出機能による音楽再生のオンオフ、左または右だけの片側使用、左右同時伝送方式による高い接続安定性、アプリによるイコライザー調整など、最新モデルとしての多機能さを持ち合わせている。
また、バッテリーライフに関しては、イヤホン本体で最長8時間、専用ケースからは1回分の充電が行えるので、合計16時間程の使用が可能となっている。本体は十分以上だが、専用ケースはもう少しバッテリー容量が大きいとありがたかった。とはいえ、通勤などで頻繁に活用しても困ることのない、使い勝手のよさは十分に確保されている。
いっぽうで、デザインやカラーバリエーションなども「WF-H800」の魅力のひとつといえる。丸みを帯びたデザインは男女問わず幅広い層に好まれそうだし、片側約7.6g、かつ耳の3点で支える「エルゴノミック・トライホールド・ストラクチャー」デザインは、快適な装着感をもたらしてくれる。コントロールボタンも本体の上側に配置され、操作しやすい。人によっては“可愛らしすぎる”という意見が出てきそうだが、ことスタイルに関しては、まとまりのよさ、機能性ともに弱点のない巧みな造りといえるだろう。
専用アプリ「Headphones Connect」もなかなかに便利だ。5バンド式のイコライザー機能は、8種類のプリセットが用意されるほか、好みの設定にカスタマイズすることも可能。また、「DSEE HX」のオンオフ、接続タイプ(音質優先or接続優先)の切り替え、さらにはイヤホン本体ボタンのカスタマイズなど、幅広い機能性を持ち合わせている。メニュー表示も分かりやすく、なかなかに良好な使い勝手といえる。
なお、5色用意されているカラーバリエーションは、ウォークマンA100シリーズとの色調を合わせたものとなっている。とはいえ、全体的にポップなイマドキの色調が採用されているので、単体でも魅力的なカラーコーディネイトだと思う。
さて、肝心の音質はというと、中域の表現を重視した、バランスのよいサウンドにまとめ上げられているのが特徴だ。音色は刺激的過ぎず、曲によってはややライトな印象になるものの、その分音色表現の多彩な、最新のトレンドに近いサウンドが楽しめる。また、表現がていねいで、ボーカルの定位も近いため、表情豊かな歌声が楽しめるのもいい。聴いていてとても楽しい、良質なサウンドだ。
イヤホン重量(片耳):7.6g
再生時間:最大8時間
充電方法:専用ケース(内蔵バッテリーで1回のフル充電が可能)
対応コーデック:SBC/AAC
カラーバリエーション:レッド/ブラック/アッシュグリーン/オレンジ/ブルー