21 1月 英語学習の鬼門、冠詞 a/an の使い方をマスターしよう!
英語を学ぶ上で、日本人がもっともつまずくのは、冠詞の正しい用い方です。TOEICで満点をとる人ですら、かなり間違えてしまうのがこの部分です。冠詞は最後の最後まで残る鬼門と言っても良いでしょう。
そこで今日は、どうやったらこの冠詞の間違いを減らせるのか、名詞の捉え方から考え直してみることにしました。まず、どんなときに複数形を用いるのか、次に、不定冠詞 a/an の使い方について考えてみましょう。
名詞の基本は複数形だ!
まずは、一般的な名詞の使い方です。例えば、「僕はりんご好きだ」と言いたいとしましょう。
ここで表現したいのは「特定のりんごが好きだ」ということではなく、「僕はリンゴというカテゴリの果物が’好きなのだ」という文脈です。
「僕はリンゴが好きだ」は次の4通りの言い方が可能ですが、それぞれどうニュアンスが異なるのか順番に見ていきましょう。
I like apple.I like an apple.
I like the apple.
I like apples.
まず最初の “I like apple.”は、このapple が何を指しているのかよくわからない奇妙な文章です。
例えば、iPhone やMacを作っている会社の ”Apple” が好きなら、”I like Apple.”でも一向に構いません。ですが、この文章では ”apple” が小文字になっていますから、固有の会社名であるAppleを指しているとは解釈できません。なので、何が言いたいのかよくわからない、未完成な印象を受けてしまいます。
2番目の “I like an apple.”も少し奇妙です。例えばお母さんにリンゴとオレンジを目の前に差し出されて “Would you like an apple or an orange?”(リンゴとオレンジどっちがいい?)と聞かれているのなら、“I like an apple.”という言い方が適切ですが、一般的に「りんごという果物が好き」と言いたいのなら、これでは意味が通じません。
3番目の “I like the apple.” だと、「僕はその(特定の)りんごが好き」というニュアンスになります。例えば、お店の試食コーナーでリンゴを一切れ食べて、思わず、“This is good! I like the apple. “ などというふうに、「特定のこれが好き!」という場合ならば、この言い方が適していますが、「一般的にリンゴという果物が好き」というニュアンスにはなりません。
正解は4番目の、りんごが複数形になっている、 “I like apples.” です。オレンジが好きなら“I like oranges.” ですし、「どうもビデオゲームは好きじゃない」などと言いたいなら、“I don’t like video games.”です。
これは典型的な間違いです
もう少し例文を見てみましょう。
My hobby is watching movies. 「私の趣味は映画を見ることです。」Rats are disgusting. (ネズミはキモい!)
Americans love playing baseball. (アメリカ人は野球をするのが好きだ。)
Do you have any questions ?(何か質問はありますか?)
日本語には基本的に複数形が存在しませんから、「一般的にりんごが好きなら、じゃあ冠詞はなしで “I like apple.” かな?」などと考えてしまいがちですが、ここで説明した通り、一般的な総称を指す場合には、複数形で言い表すものがごく普通なのです。
なお上の4つとも、実際に “My hobby is watching movie.”、“Rat is disgusting.” “American loves playing baseball.” “Do you have question?” と単数形、 無冠詞のまま使われているのに遭遇したことがあります。
一般的な好き嫌いを表現する際に、1番目のように“I like apple.” “I don’t like cat.” などような言ってしまう人、非常に多いです。TOEIC 800点以下ならほぼ全員と言ってもいいくらい、ほとんどの人が間違えるポイントなので、「一般的なことが言いたいときには複数形なのだ!」と思って覚えてしまうことをオススメします。
a/an は何をしてくれるのか?
外国人が日本語を学ぶときによくある質問に「なぜ数量を数えるときに、鉛筆だったら1本、2本、書籍だったら1冊、2冊、動物だったら1匹、2匹などといちいち言い分けて数えるのか? 全部1個、2個でいいじゃないか?」というものがあります。
僕ら日本人が不定冠詞 a/an に抱く感覚もこれとよく似ています。わざわざ “This is a pen.” や ”I am a boy.” などと言わなくても、そもそも boy, pen などが単数形である以上、単数であることは自明なわけで、なぜいちいち a あるいは an などをつけなければならないのか、意味がわかりません。
しかし、不定冠詞 a/an にはれっきとした意味があります。a あるいは an という言葉がまず発せられることで、そのあとに続く名詞が次のような4つの属性を持つことがハッキリとわかるのです。
- 数えられるもの
- 対象はひとつ
- どれでもよい・選り好みしない
- 代替が他にもある
例えば、ちょっとペンが必要になったとします。そしてとりあえずどんなペンでもいいから友達から借りたいとしましょう。そしたら “Can I borrow a pen?” と言えばよいわけです。
で、尋ねられた友達は、“a” を聞いた瞬間にあなたが求めているのは、1)数えられるもの、2)一つだけ必要、3)特定のペンではなく、ペンでありさえすればなんでも良い、4)ペンは他にもある、という4つの情報を得ることができるのです。順番に考えて見ましょう。
1)a/an は数えられる名詞にしかつかない
英語を学ぶ上で、日本人がもっともつまずくのは、冠詞の正しい用い方です。TOEICで満点をとる人ですら、かなり間違えてしまうのがこの部分です。冠詞は最後の最後まで残る鬼門と言っても良いでしょう。
日本人に不可解なものに、数えられる名詞、数えられない名詞、という分類があります。これについての詳しい解説はまた別の記事に譲りますが、まずはとりあえず、数えられる名詞というのは、切ったり割ったりすると性質が損なわれたり、変わってしまうものだと考えてください。
例えば、table をノコギリで半分に切ってしまったら、もはやテーブルとして機能しません。犬を半分に切ったら肉片になってしまい、dogという生き物としての性質は保てません。また、猫を2匹合体させることはできません。
できたとして、それはもはや猫という生き物ではなくなってしまうでしょう。このように切って割ったり合体させると性質が変わってしまうものは、数えられる名詞です。
数えられない名詞は、この逆です。water, beer, butter などは、どれも数えられない名詞です。data, information なども同様です。水もビールもバターも情報も、割っても切っても合体させても、それぞれ水であること、ビールであること、バターであること、情報であることに変わりはありません。こういうものは数えられない名詞です。
なぜ数えられる名詞の前にわざわざ a または an がつくのか、それは、日本人が細長い物体を数える際に1本、2本と「本」という助数詞をつけるのと同じような感覚です。なくてもわかるだろう、ではなく、それがあるからこそ、違いが鮮明になるのです。
2)指し示しているのは一つだけ
またこの a/an が先に来ることで、「ここで指しているものは一つなんだ!」ということが鮮明に浮き立ちます。これもまた自明な情報な気がしますが、冠詞がない単数形は、また別の意味を表すので、冠詞があるのとないのとでは大違いなのです。この辺りについては、また別の記事で解説しましょう。
3)a/anは「one of many』
さらに a/an がつくことでわかること、それは対象物が「複数あるうちの一つ」、つまり「one of many」であることです。例えば自己紹介の時に、“Hi, I am Hisako. I am a wife of Tomoki.” と言ったとしましょう。
Hi, I am Hisako. まではなんの問題ありません。しかし “I am a wife of Tomoki.” と言った瞬間に、「Tomokiには妻がたくさんいて、私はそのうちの一人である」と言った、実に奇妙な印象を与えてしまうのです。
「私が彼の妻よ」というような、ほかには存在がありえない場合には“ I am the wife of Tomoki.” (私がトモキの妻です) “He is the CEO of our company.”(彼が我々の会社のCEOです。)などと言ったように、定冠詞 the を使う方が適切です。
また、別のケースを考えてみましょう。例えば、自己紹介で自分の職業を説明したいとしましょう。そうしたら “I am an engineer.” とか “I am a banker.” などというふうにa/anを用いるのが一般的です。なぜかというと世の中にはengineer も banker もたくさんいて、自分はそのうちの1人だからです。
“Japan is a member of the United Nations.”「日本は国連の一員である」であれば、これはつまり、国連加盟国はたくさんあって、日本はそのうちの一つ、というようなニュアンスを出せるわけです。
4)a/an はどれでもよい“Any one of them”
また、a/anを使いたいときというのは、どれでもいいから一つ、という場合です。例えば、I need a pen. と言ったら、とにかくどれでもいいからペンが一本必要なわけです。つまり ”I need a pen.”というのは、“I need any one pen.” と言っているのと同じことです。
“There is a car on the street.”という文章だったら、とりあえずそこで強調したいのは「車が一台ある」という事実だけで、それ以外の属性、例えば色とか形とか年式とか所有者などといった情報は、無視しているのです。それが青いトラックでも、白いセダンでも、赤い新車でもそんなことはどうでもいいのです。
あるいは「昔々、おじいさんとおばあさんが住んでいました」という文章だったら、“Long, long ago there lived an old man and an old woman.” となるわけですが、ここで重要なのは、「おじいさんとおばあさんが住んでいた」ということであって、この時点ではそれ以外の属性、例えばおじいさんとおばあさんの暮らしぶり、年齢、子供の有無などは別に伝えたい情報ではないのです。このように不定冠詞を用いることで、不要な情報を伝えない、強調させないこともできるわけです。
さて、今回はここまでとします。今日はまず複数形と不定冠詞 a/anについて解説しました。複数形を使うにせよ、冠詞を用いるにせよ、それぞれ異なったニュアンスを持ちうるということがおわかりいただけたでしょうか?
そしてこの辺りを間違っていると、なんだか「てにおは」が間違った日本語を聞いているときのような、奇妙な印象を受けてしまうのです。正しい冠詞の使い方は本当に難しいポイントですが、ここが整って来ると非常にこなれて聞こえてきますので、ぜひ習得してみてください。