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2020.04.18 07:00  NEWSポストセブン

大林宣彦監督が故郷・尾道の映画館支配人に語っていた銀幕愛

 上記の3作品や遺作となった『海辺の映画館─キネマの玉手箱』も含めて、幼少期から抱き続けた“反戦”というメッセージを、臆することなく映画に注ぎ込んだ大林監督。小野寺氏はその明確なスタンスを、「はっきりとものを言わず、流されがちな日本人にとって、変化のためのロールモデルとなるもの」と称えた。小野寺氏が続ける。

「『HOUSE ハウス』の時点で戦争が要素になっており、『ねらわれた学園』のようなアイドル映画でもファシズムへの恐怖が描かれていましたので、反戦のテーマは昔から変わらず存在していました。ですが晩年、大林監督は日本が徐々に戦争へと近づきつつあることにショックを受けていたようです。ストレートに反戦を訴えてこなかったという自責の思いが、『野のなななのか』や『花筐/HANAGATAMI』のような力強い反戦映画を撮ることにつながっているのでしょう。これらの作品を見れば、監督が本気で戦争を止めようとしていることがわかるはずです」

 大林監督の命日である4月10日に劇場公開予定だった『海辺の映画館—キネマの玉手箱』は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて公開延期となった。メインのロケ地である尾道で同映画の撮影風景を見つめた河本氏は、「これが最後になるのでは、と思っていました」と寂しさを口にしながらも、「世界広しといえど、こんな作品を撮れるのは大林監督だけでしょう。まさに映画作家としての集大成だと感じ、胸が熱くなりました」と試写を目にした感想を語っている。

 終息の兆しが見えないコロナ禍や、日々報じられる政治の無策によって、重苦しい空気に包まれた日本。大林監督が遺した作品に、人々の現状追認的な姿勢を変えるヒントが隠されているかもしれない。

◆取材・文/曹宇鉉(HEW)

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