■ビートたけしは時代の主人公に
漫才ブームのトップランナーは当初、B&Bだったが、関西出身の芸人がひしめく中、漫才ブームを制したのは、浅草で修業したビートたけし、ビートきよしのツービートだった。
たけし スポーツをやれば心が晴れるなんていう奴もいるけど、嘘ですよ。金属バット殺人事件なんて、スポーツやってるから、お父さんとお母さんの頭をジャストミートしたんですから。
きよし ジャストミート?
たけし 野球を知らなかったらチップで済んでたろ。
きよし もういいよ!
「老人をいじめるようなブラックジョーク、“赤信号、みんなで渡れば怖くない”などの交通標語パロディによるネタは“毒ガス漫才”と呼ばれるようになります。世間に斜めに斬り込んでいくスタイルで、若者から絶大な人気を獲得し、ビートたけしは時代の主人公になりました」(西条氏)
茶の間を爆笑させた標語ネタは、「狭い日本 急いでいけば早く着く」「指紋拭く 心のゆとりが身を守る」と、どれも放送コードギリギリ。特に老人には、
たけし 来年は法律が変わって80歳以上は死刑になりますからね。
など、容赦なし。また、朴訥な感じの相方・きよしを茶化すネタも定番だった。
たけし こいつは田舎もんですからね。大変ですよ。山形出身でね。
きよし そう。山形なの。
たけし 東京に来て初めて人を見たんですからね。
きよし そんなわけない!
たけし 飛行機が飛んでたら、みんな家から出てきて拝んじゃって。
きよし 拝むか!
たけし どんな飛行機でも「B-29だ!」って、
きよし よしなさい!
たけし この間はパスポートの写真に、七五三の写真貼っちゃって。
きよし 嘘つけ!
たけし「NAME」のところを「なめ」って読んで、舐めちゃって。何も出てこないから、「スカ」だって。
きよし バカ!
たけし 性別のところに「大好き」って書いちゃったんですからね。
きよし 書かないよ!
「ツービートは、先代が作り上げたフリがあってオチがある漫才を壊したんです。楽屋でも俺らは博打をやっていたけど、たけしは本を読んでいて一人だけ異質な存在でした。短い期間で漫才をやめたのも、彼の頭の良さだと思いますね」(おぼん師匠)
西条氏は、漫才ブームが終焉すると“個”の時代に移行し、現在のバラエティ番組の基本形ができあがったと指摘する。「明治維新でいえば、漫才ブームの漫才師たちは維新の志士たち。萩本欽一や、ドリフターズ、三波伸介といった、それまでお茶の間を席巻していた幕府を根底から崩し、新しい時代を作った。江戸時代から明治へと時代が移ったような転換期だったわけです。現在のお笑い文化は、“漫才ブームの革命”から始まったと言えるでしょう」
おぼん師匠も、漫才ブームがあったから今の自分があると述懐する。「あの頃に知ってもらえたから、今でも舞台でお客さんを笑わせることができているんだと思います。最近は『水曜日のダウンタウン』(TBS)に出たことで“仲が悪いコンビ”として一層ウケるようになったけどね(笑)。新型コロナの流行が落ち着いたら、ぜひ東洋館に、おぼんこぼんの漫才を観に来てください!」
日本中が、心から笑えるようになる日が待ち遠しい。
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