講談社月刊少年マガジン編集部は、同誌で連載する原作河島正さん、作画あだちとか さんによる人気マンガ『アライブ 最終進化的少年』のアニメ化を中止すると雑誌公式サイトにて明らかにした。
2008年6月に月刊少年マガジン誌上、『アライブ 最終進化的少年』単行本にてアニメ化を告知していた。現代の狂気を描くSFのアニメならではの映像化が期待されていた。
月刊少年マガジン編集部は今回の中止の理由について、アニメーション制作を担当する予定であったアニメ製作会社ゴンゾが、2009年6月に上場廃止となったことを挙げている。これを不測の事態とし、これに伴い2009年より制作が停止になっていたことを明らかにした。その後もアニメ化に向けた努力を続けたが実現に至らず、今回の発表になった。
ゴンゾの制作で発表されたアニメ化作品では、2005年12月に発表され2006年末に中止が発表された冲方丁さんの小説『マルドゥック・スクランブル』がある。(同作は2010年に全く別のアニメ化企画により現在製作中) また、2006年5月に発表された劇場映画『ペギー・スー 蜃気楼へ飛ぶ』の製作も事実上中止になっている。
こうしたアニメ企画の製作発表後の中止は、ゴンゾに限らず意外に多い。一方で、製作発表後の中止は混乱を招くことが多いだけ、アニメ関連企業は新作の製作発表時期について慎重なることが多い理由ともなっている。
一方で、製作中止となっても、それを発表を正式にしないケースも少なくない。また、正式発表がされても、中止の理由は諸般の事情とされることが多く、今回の月刊少年マガジン編集部による中止発表と説明はやや異例でもある。
しかし、中止の理由が明かされたことで、現在のアニメ業界を取り巻く厳しい環境の一端も垣間見えた。今回はゴンゾの上場廃止による不測の事態としているが、実は近年、進行中の新作アニメ企画の中止や延期が相次いでいると見られるからだ。
例えば、アニメ企画会社の創通は直近の決算報告書の中でスポンサーのコンテンツ投資意欲の減退により製作委員会の組成が困難になるケースが増えていることを明らかにしている。同様にティーワイーオーはアニメーション事業でテレビアニメ番組が延期・失注があったとし、IGポートでもテレビ作品の発注元の事情による企画中止に言及している。
決算を公開しない非上場企業でも同様の状況は起きていると見られる。製作発表に至る前の段階で製作中止になっている作品はかなりの数に上っている可能性が高い。『アライブ 最終進化的少年』の製作中止発表は、こうした現在の厳しいアニメ業界の氷山の一角と言えるかもしれない。
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