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【コラム 撃戦記】

ついに閉鎖する道場もでてきた ボクシングも空手も踏ん張ってくれ格闘家たち【山崎照朝コラム】

2020年4月14日 13時15分

空手形女子で金メダルが期待される清水希容

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 緊急事態宣言で繁華街がすっかり様変わりした。外出自粛でたまったストレスを和らげてくれるアスリートのSNSが好評だが、その中でスーパーテクニックに思わず「おっ!」と見入ってしまう動画を見つけた。

 空手形女子で金メダルが期待される清水希容(ミキハウス)である。後屈立ちでの手刀受け。平然と演じているが、上体はブレることがない。そして前ケリを“ビシッ”と決める。世界トップアスリートの技がお茶の間を魅了してくれる。

 そんな選手たちの生の演技はいつ見られるのだろう。新型コロナウイルスの終息は相変わらず不透明。道場もジムも閉鎖ではどうにもならんと、しびれを切らして他県に出向いて体を動かす者もいるようだが、ウイルスの拡散につながる可能性のある行為は慎まなければならない。

 新型コロナウイルスに伴う不況は、1929年に始まった世界恐慌以上になると見る向きもある。そうなれば財布のひもはかたくなるだろう。興行やイベントの中止で経営を圧迫されている格闘技界、中でもボクシング関係者の不安は大きい。

 あるジムの会長は防衛戦のメドも立たない状況に「静観と言われてもね…」とため息をつき、「ジムを脱会する者も多い。新規入会者も少ないし不景気なんです」と口にした。一獲千金にかけるボクサーにしても勤務時間に比較的融通が利く中小企業に勤めたり、アルバイトで生計を立てるケースが多く、景気の波をまともに食らいやすい。

 日本のプロボクシングは人気選手に支えられてきた。昭和初期に登場し、「拳聖」と呼ばれたピストン堀口の活躍で団体が確立し、52年の日本ボクシングコミッション(JBC)設立でさらにスポーツとして発展した。白井義男、ファイティング原田…井上尚弥、村田諒太。そんなボクシングはどうなるのか。

 東京五輪で正式種目になった空手界も深刻だ。伝統系は公共の施設や小・中学校の体育館を練習場にする団体が多く、剛柔流のある会長は「3月から影響が出てきた。学校閉鎖で練習できず休みにしている。当然、月謝はいただけない。振り込み会員には返却している」と話す。

 賃貸ビルへの入居が多いフルコンタクト系では家賃が重荷となり「運営していけない」と道場を閉めるところも出てきた。どこも青息吐息といった感じだ。もちろん夢を具現するための練習場所さえ思うように手配できない選手たちも苦しんでいる。

 月並みな言葉だが、いまは我慢するしかない。いつかはやってくるコロナ禍の終焉(しゅうえん)を祈り、強い精神力でできる限りのことをやっておこう。きっとその先に…。(格闘技評論家=第1回オープントーナメント全日本空手道選手権王者)

 

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